第6話 致死の閃光
第六位階上位
エイジュ・ルテール LV?
昼下がりの森に響き渡る轟音。
場所は、霧の森を越え、流星山脈の間にある小さな谷を進んだ先の開けた森。
遠くに見えるのは巨大な樹木の魔物。
怒りの形相にも見える三つの凹凸を備え、僕の身長よりも太い、無数の枝や根を我武者羅に振り回して森を破壊している様は、さながら狂える森の主と言った様相である。
しかし良く見ると、樹木の魔物の額にある極小さな穴の先に、一人のエルフがいた。
エルミェージュに良く似た美しい容姿の彼女が、恐ろしい形相をした樹木の魔物の中にいる姿は、一見すると囚われの姫と言った所だ。
その実、彼女は、緑色の宝珠らしき物が付いた杖を握り、目を瞑って集中している様であった。
周囲に敵の気配は無く、魔覚であっても敵の存在を捉える事は出来ていない。
——しかし、いない訳では無い。
時折、巨大な枝が何の前触れも無く砕け散り、毒々しい緑のブレスが根を腐らせ、紅蓮の炎が噴き上がる。
攻撃の瞬間、ほんの一瞬だけ、魔覚にささやかな反応があるのだが、其処から存在を捉え切るには僕の地力が足りない。
見えざる敵が攻撃をするタイミングで、山の中腹辺りから敵目掛け、一条の閃光が駆け抜ける。
おそらくエルミェージュだろう。
しかし、その結果は芳しく無い様だ。
まぁ、敵を捉える方法が無い訳では無い。
距離も縮まって来たし、僕も攻撃に参加するとしようか。
「ウルル、ネロ、下がってて」
二人にそう伝えると、僕はインベントリからお手製の額当てを取り出し、装着した。
「『四角い大海』起動」
——森は海に沈む。
◇
消費した魔力、およそ1割。
量に換算すると、大海の宝珠の4割程度の魔力量だ。
規模はおおよそ、砂漠の異界半分程。
やはり大海と死神では属性魔力の変換効率が違い過ぎる様で、大海の宝珠で同じ事をしたら砂漠の8割は海にする事が出来ただろう。
残念ながら、大海の中に敵のシルエットは無い。
呼吸時の泡すら見えていないのだから、敵が持つ自らの存在を隠蔽する能力が如何に強力なのかが良く分かる。
物理的限界を越え、魂の領域を自在に操る敵の戦闘力は、おそらく……死神と同格。
死神の様に完璧な統率が出来ている訳では無い様なので、実際には死神に劣る程度だろう。
しかし、今の僕が正面からぶつかって勝てる敵では無い。
——だからこその死神である。
「『死神化』」
死神の星珠から膨大な黒い魔力が吹き出し、僕の体を覆い尽くす。
死神の星珠が夢の星珠と同じ様に、僕の魂と混じり合って行く。
実際には瞬きの一瞬、
しかしゆっくりと流れる時間の中、
鋭敏化されて行く僕の知覚は、
隠された強大な生者の気配を、
——捉えたっ……!
「ギュィィィイイッ!!」
響き渡る咆哮。
いつしか暗闇に染まった大海の中、口腔を大きく広げ、灼熱の炎を吐き出そうとしていたらしい竜帝に、致死の大鎌が突き刺さった。
実に星珠の8割の魔力。
並大抵の生物なら即死する一撃は——
「危ない所だった……」
——竜帝には届かない。
死神の、何の予兆も無い瞬間移動、それは確かに竜帝の虚を突いて、命を刈り取る大鎌は竜帝へ突き刺さった。
しかし、竜帝は即座に反応してみせ、尾と思わしき一撃を放って来た。
強力な竜属性を撒き散らしながら迫る尾は、余波だけでも大いにダメージを受けるであろう必殺の一撃。
それを大きく回避し、残り1割の魔力で追撃に移ろうとした所で、敵の気配が完全に消滅したのである。
「……」
意識を集中させ、周辺の気配を探るも、隠された生者の気配は無い。
攻撃に備え、いつでも回避、反撃出来る様に大鎌を握り——
《【大陸クエスト】『騒めく森の竜帝』をクリアしました》
【大陸クエスト】
『騒めく森の竜帝』
参加条件
・ボス『不可知竜帝』の討伐、撃退
・保護対象『エイジュ・ルテール』の保護
・追記:保護対象『エルミェージュ・ルテール』の保護
達成条件
・ボス『不可知竜帝』の討伐、撃退
・保護対象『エイジュ・ルテール』の保護
・追記:保護対象『エルミェージュ・ルテール』の保護
失敗条件
・保護対象の死亡
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント10P
・ロジックポイント20P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度89%ーー100%
貢献度89%ーー100%
・武器『名も無き聖杖』
・武器『森海の調べ』
・防具『樹海の歌姫』
・スキル結晶『察知』×3
・スキル結晶『探知』×3
・スキル結晶『魔力感知』×3
・理論結晶『魔導理論結晶・魔導生成・トレント』
・外装『魔導外装・鈴蘭の音色』
・外装『魔導外装・罪の荊棘』
エクストラ評価報酬
一気呵成
・スキルポイント2P
・ロジックポイント3P
《レベルが上がりました》
——……逃げたのか……。




