第2話 入手アイテムの確認
第六位階上位
エルミナ・ルテール ハイエルフ LV42
僕の前で土下座をしている少女が一人。
「お願いしますっ……! どうか……どうか我らの英雄をお救いくださいっ!!」
抜ける様に白い肌と若草の瞳を涙の雫で濡らしながら頭を下げる少女は、エルフの年若き姫、エルミナ姫殿下であらせられる。
彼女の言う我らの英雄とは、エルミェージュ・ルテールとエイジュ・ルテールの二人だろう。
……無茶な事を言ってくれる。
「さて……ね……受けても良いけど……」
「あ、ありがとうござい——」
涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔を上げ、パッと花開く様に笑んだエルミナ。
しかし、少し考えれば分かる話が幾つか。
先ず話を聞く限り、エイジュ・ルテールは爺様やザイエと同格の大賢者、森の大賢者だ。
そして、エルミェージュ・ルテールは七聖賢の一人、聖弓の使徒。
この二人が居ながら、ホームである里と聖大樹は成す術無く焼き落とされ、敵の能力は氷山の一角しか分かっていない。
つまり、敵の戦力は未知だが最低でも爺様以上。
僕だけでは厳しいと言わざるを得ない。
だからこそ、必要な事がある。
「——対価は必要だよね」
「っ……」
酷く驚いた様子のエルミナ。
必要な事、と言うか、身も蓋も無い事であるが、要するに……守る対象を無くしてしまえば戦力を一つにする事が出来る。
「……見ての通り、我々には払える物など何も——」
「——あるでしょう?」
「っ! そ、それは……」
苦悶の表情で此方を見上げるエルフの姫は、僕の意図する事を理解している様子だ。
要するに、エルフをテイムして本に登録すれば問題無かろうと言う事だ。
「ユキ、あまりエルミナを虐めないでやってくれ。対価は妖精が払おう」
「む、そう……まぁ良いか」
妖精族を戦力に取り入れる事が出来るのなら、それはそれで良い事だろう。
「じゃあ、これから妖精族は僕の配下だ」
「うむ、承った」
ルェルァとリェニをテイムし、リェニ配下の総勢1,028の妖精を味方に加えた。
妖精族全員でレギオンを組み、妖精族内で経験値が分配される様にする。
これで、妖精族は自由に行動出来る様になった。
憂いが少し減った所で、早速敵を探しに行こうか。
◇
向かった先は霧の森。
そこへアンデット組とワンワン軍団を放ち、接続で情報を共有する。
敵を探しつつ森の地図を作ってしまおうと言う魂胆だ。
待っている間は暇になるので、戦利品の確認でもしていようか。
「ウルル、伏せ。ネロはこっち」
二匹を僕の側に伏せさせ、ウルルの足に腰掛ける。
太陽が真上で燦々と輝く中、先ず最初に取り出したのは二つのピラミッド。
手のひらサイズのそれは、片方が太陽が描かれた金のピラミッド、もう片方は月が描かれた銀のピラミッド。
それらは内部に複雑な機構と魔法陣を備え、独特な魔力、名付けるなら太陽属性と太陰属性と言える魔力を生成していた。
天辺部分が蓋になっている様で、それを開けて中を覗き込んでみると、何やら宝石らしき物が入っていた。
ピラミッドの中はフラスコの様な形をしているので、どうやって入れたのか謎な大きさの宝石だ。
インベントリ経由で取り出す。
「ふむ、成る程」
太陽の欠片 品質A レア度6 耐久力A
備考:太陽の魔力が凝固した結晶。
月の欠片 品質A レア度6 耐久力A
備考:月の魔力が凝固した結晶。
どうやら、この二つのピラミッドはこれを生成する為のアイテムらしい。
インベントリに仕舞いっぱなしだと生成されないだろうから、今度鍛錬島の迷宮に設置しに行こう。
続いて、悠久の包帯。
これ、クエスト報酬画面では防具とあったんだけど……とりあえず装備してみる。
「『換装』……むむ」
気が付くと、僕は包帯でぐるぐる巻きにされていた。
包帯は自由に操作出来る様なので、メイド服の下に隠しておいた。
能力は、包帯で巻かれている部分がそこそこのスピードで再生すると言う物。
包帯は伸縮自在で正確に動いてくれるので、他人に巻き付けた後に切り離すとか、遠くにある物を取ってくるとか出来そうだ。
とりあえず装備しておく。
次、死の宝珠。
これは、例に習って宝珠系のアイテムだ。
内包する魔力量は、感覚的に氷獄の宝珠と大海の宝珠の中間程度。
二度に渡って極まった死の属性魔力を浴びたので、同じ魔力を複製する事は出来るが、量を用意するには無駄に精神力を消耗しそうである。
かと言って宝珠の中にある属性魔力を使って魔導鎧を拵えると、即座に起動する事が出来なくなってしまう。
強敵と戦う可能性がある以上、無駄な精神力の消耗は控えた方が良いだろう。
最後に、各種魔石などのドロップアイテム。
ワイズマン・リッチのピンポン玉サイズの黒い魔石。
エルダードラゴンボーンの水晶玉サイズの魔石。
不浄塊巨人の僕の身長よりも大きい魔石。
そして、古の不死賢女王の幻影が持っていたビー玉サイズの魔石。
これらの内、エルダードラゴンボーンと古の不死賢女王の魔石は魔力が減少しているだろうと思っていたが、特にそうでもない様子。
おそらく、迷宮の自動解体機能が起こした謎現象による物だろう。
以前ぐちゃぐちゃのゴキブリを解体した際に、完全な甲殻を入手出来たのと同じ原理だ。
自動回収されたドロップ品の中には他にも珍しげな装備があった。
コブラの形を模した金の冠、『蛇の金冠』。
羽衣の様な透ける布で作られた服、『雄大なるカラシリス』。
能力は、金冠の方が、蛇を使役したり、砂で蛇を作成する能力。
カラシリスは、強力な魔法耐性。
さて、アイテムの確認は終了だ。
次は……あれをしよう。




