第29話 新たな脅威
第六位階中位
女王を倒した瞬間、砂漠が白い光に包まれる。
気付くと、僕は夜の校庭に立っていた。
「……」
眼下にあるプレートは、ゆっくりと灰色に染まった後、これまたゆっくりと透けて行き、最後には完全に消滅した。
夢の星珠は既に僕と分離している。
今は僕のスカートの中を浮遊しており、特に色が落ちたとか濃くなったとか言う事は無い。
ただし、二度目の同調を経て分かったが、今の夢の星珠の残魔力量では同じ事が出来て後一回。
他のプレートに挑戦するのは少し難しいと言わざるを得ない。
「……帰ろう」
今此処でやれる事は無い。
◇
早めの昼食を取り、戻って来た。
さっきの様子だと、他の四つの迷宮も同レベルの敵が待ち構えている可能性は高い。
戦う為には、大海の宝珠と夢の星珠の魔力を補充したり、新たな魔導鎧や武器を入手、開発する必要があるだろう。
……魔導鎧は僕が装備しなくても十分な力を発揮出来る、仲間に装備させるのも良いだろう。
勿論、魔導鎧は人型で無くても良い。
近い内に作成しよう。
その他だと、生命の宝石や禁忌の聖杯も何かに使える筈だ。
さて、アンデット組を迎えに行こうか。
◇
配下を全て回収し、ウルル便に搭乗して王都地下に入った。
今のウルルの体格だと地下水路を駆ける事は出来無いので、地下では徒歩である。
精霊さん達に挨拶し、地底湖に入る。
数日振りに入った地底湖は——
——アンデットに占領されていた。
取り敢えずルーレンとアッセリアを呼び寄せると、やって来たのは美少女二人。
進化して元の姿を取り戻したらしい。
「アッセリア、只今帰還致しまし——」
「——遅かったのう、待ちくたびれたぞ」
敬礼して丁寧に話すアッセリアに対し、ルーレンは尊大な態度で言い放った。
「ちょっと立て込んでいてね」
少し話をしてから、アンデット組とアイテムを回収した。
王都を守る結晶は、見た感じ少し回復していたので、王都に危機が迫った時は弱いながらも結界を張ってくれるだろう。
次に向かうのは遺跡。
一日経過した遺跡がどうなっているのか見に行かないと。
◇
快速ウルル便で、およそ十数分掛けて到着した遺跡は、一部が森に成りかけていた。
そして、其処には妖精の他に、エルフらしき生物が複数。
エルフらしき連中は、身体や服がボロボロで、顔色も良くない。
怪我人もをかなりの数いる様で、妖精や動けるエルフ、僕の配下達が慌ただしく動いていた。
取り敢えず濃縮上級ポーションを全員にぶっ掛け、やって来たリェニとアルネアに話を聞く。
「——と、言う事だ」
「……成る程……」
二人から聞いた話を纏めると……。
森の奥深く、霧の森を抜けて山と山の間の森を越えた先に、エルフの一大氏族、ルテール氏族の里がある。
数日前、そのエルフの里に何者かの襲撃があり、里は瞬く間に火の海へ沈んだ。
勿論、里に何一つ防備が無かった訳では無い。
外敵を迷わせ、且つ外敵が何処にいるのかを感知する魔法の霧。
王都の防壁にも劣らない強力な結界。
精鋭達の監視の目。
それら全てを掻い潜った何者かが、里を焼き払い、次々とエルフを殺して回った。
今此処にいるエルフは、その襲撃の生き残りだ。
エルフ達は襲撃の直後、森を育む聖大樹を守る為に防衛戦を行なったが、敵の正体は依然と知れず。
隣にいた同胞が、突然心臓から血を吹いて倒れるのを見た者や、何も無い所から炎が立ち上がるのを見た者がいる。
結局分かったのは、敵が炎を使う事と、強者弱者問わず一撃で屠れる術を持っている事だけ。
襲撃から間も無くして、聖大樹は紅蓮の炎に包まれ、それを嘆く暇すら無く里を脱出。
エルフ達は、炎に沈む故郷を背に、妖精達へ助けを求める為森へ入ったらしい。
——だが、悲劇は終わらなかった。
森と共にあり、森と共に成長するエルフ達は、森の移動に掛けてはエキスパートと言って良い。
老人であろうと子供であろうと、必死に逃げる為の移動であれば妖精にも劣らないらしい。
そんなエルフ達が半日掛けて森を移動し、先導していた長老議会の老エルフ達が、怪我人の治療を兼ねて小休止を取ろうと決めた次の瞬間——
——老エルフの一人が心臓を貫かれて即死した。
一番先頭にいた、最も敵から遠い筈の者が、殺された。
その事実は、エルフ達にとってあまりにも衝撃的だった。
何せ、戦うには敵の姿が無く、全力で逃げても追い付かれる。
エルフ達は最早、統率の取れた動きが出来る筈もなく、散り散りになって逃げ出す事しか出来無かった。
そんな中で、エルフの英雄。生ける伝説である『エルミェージュ・ルテール』と『エイジュ・ルテール』の姉妹が、囮になって『見えざる者』を引き付け、年若い姫『エルミナ・ルテール』がバラバラに成りかけたエルフの民を纏め上げる事で、何とか逃げ果せたらしい。
リェニ達が妖精の里に戻ると、其処には傷付いたエルフ達と治療に走る同胞達の姿があった。
彼らから話を聞いたリェニ達は、急遽予定を変更。里を放棄し、妖精全員とエルフをリッド便に乗せて遺跡へ避難したのだとか。
簡潔に纏めると、やばい敵が森の中にいると言う事である。
敵がエルフだけを追っているなら遺跡に戦力を集めて迎え撃つ事が出来るが、もし無差別に襲い掛かっているとしたら、今1番危険なのは鉱山街だ。
迅速に対応する必要がある。
・鍛錬島の攻略 完




