第25話 vs.不浄の凶魔
第六位階中位
見えて来たのは、広大な砂漠だった。
地平まで広がる砂漠には、銀色の月が煌々と輝き大地を照らしている。
吹く風は冷たく、僅かに含まれるのは——不死者の気配。
僕がいる場所は、他よりも一際に高い砂山の上。
其処からは砂漠の全てを見渡す事が出来る。
僕の視線の先、遥か遠くにあるのは、一つの砂山……いや、砂のピラミッドか。
その頂上に影が一つ。
かなりの距離があるが、各種強化系スキルのおかげでそれが何なのか分かった。
——女だ。
「……ふむ、女王、か……」
ワンピース型のドレスの上に透ける衣を纏い、宝飾品を纏った美女。
富裕層特有のおしゃれな服装の下には、幾らかの包帯らしき物が巻かれている。
古の不死賢女王の幻影 LV?
不死者は両手を空へと掲げた。
その瞬間、砂漠中を闇属性の波が駆け抜ける。
それは言うなればソナーの様で。
何が起きるのかと身構えたのも束の間。
僕が立つ高台を除く、
広大な砂漠全てが——
——動き始めた。
見えた物は腕。
砂を掻き分け現れたのは、不死者の大群。
寒々しく輝く月の下、不浄との戦いが始まった。
◇
先ずは各種『銃形正六面体』で雑魚を撃ち減らす。
女王は高みの見物をするらしく、ピラミッドの頂上から此方を見下ろしたまま微動だにしない。
残念ながら、スナイプキューブの有効射程は2,000メートルなので、此処からでは攻撃する事が出来無い。
ガトリングキューブで此方へ向かって来るアンデットを迎撃し、弾幕を潜り抜けて来た強者にはスナイプキューブで引導を渡す。
ガンキューブは敵の進行が激しい所へガトリングキューブの援護をさせ、ミサイルキューブで無差別爆撃を繰り返す。
勿論、此方も女王と同じで一切動かずにだ。
魔物を生成するのと魔弾を数発撃つのとでは魔力の消費量が違う。
その上、ガトリングでも只々乱射している訳では無く、都度射角を変えて弱点を撃ち抜いているので、雑魚は最低でも3発で仕留めている。
スケルトンファイター LV15
マミー LV16
バイパースケルトン LV13
スカラベゴーレム LV17
ざっと見た感じ、雑魚魔物のレベル帯は最低でも10以上。
これらの上位種がおよそ20から30レベルで、その更に上位が30から50程。
そして——
リッチ・ロード LV114
エルダーリッチ LV178
エンシェントリッチ LV325
マミーロード LV120
カースサンド・ギガント LV117
ギガントバイパースケルトン LV189
アークドラゴンボーン LV343
——レベル100以上の強者達。
流石にレベル300代は多く無いが、それでも数十体。100レベル以上になると10,000体。サイズが小さい物も多い為多く見えないが、その敵の総数は軽く100万を超えている。
◇
《レベルが上がりました》
レベル100を超えるとガトリングでは大したダメージを与える事は出来無い。
四方八方から襲い来るリッチやマミーを狙撃し、飛来する魔法をウォーターカーテンで防ぐ。
ドラゴンやゴーレムなどの巨大な魔物は、マリンキューブで捕縛して、鞭を経由して雷を流し込み直接弱点を叩いて処理した。
流石に、大軍を相手にして微動だにせず、と言うのは少し無理があった。
敵の3割は潰したが、回収した魔石から大海の宝珠に魔力を移しても圧倒的に消費量の方が多い。
……十分な戦闘データも取れたし、そろそろアレを発動させてみようか。
「『水竜化』」
そう唱えた瞬間、
大海の宝珠に貯蓄されていた膨大な量の魔力が一気に減少し——
——僕は竜になった。
「Guraaaaaaaa‼︎‼︎」
咆哮はただの威嚇では無く、音に『福音』スキルの効果を乗せた浄化の咆哮。
周辺一帯の砂が巻き上がり、暴風が砂漠を駆け抜けた。
弱い魔物は浄化され、それより少し強い魔物は暴風に切り裂かれて消し飛んで行く。
これで総数の5割は殲滅しただろう。
代償として大海の宝珠の魔力を殆ど使ってしまったが、十分な対価である。
《レベルが上がりました》
レベルアップのお知らせを聞き流しつつ、マリンキューブを起動、魔力残量の全てを使い、砂漠の空に海を作った。
——轟音。
巨大な水の塊は、マリンキューブが魔力切れで停止した為に砂漠へと落下し始めた。
浄化の咆哮で砂漠がお椀型になっているので、水が抜けるには時間が掛かるだろう。
水竜化の持続時間は、消費した魔力の量に比例する。
水竜化が切れるまでにどれ程敵を削れるか、
此処が勝負の分水嶺だ。




