第9話 合成獣研究施設 三 囚われの妖精
※210万PV達成
第六位階中位
魔獣区画の処理を終え、次は亜人区画。
亜人区画の水槽には、最初のうちはゴブリンを使った研究がなされていた様で、様々な形のゴブリンが浮いていた。
そんな、色違いのゴブリンや腕が複数あるゴブリン、頭が複数あるゴブリン、他の魔獣に胴体から上をくっ付けたゴブリンなど、多種多様なゴブリンを介錯した。
その次に現れたのは、人を使った実験体。
タイプ・ラミアやケンタウロス、アラクネ、マンティコア、ハーピー、獣人。
回収した研究資料を確認するに、どうやら使われた素材は犯罪者や盗賊、敵国の貴族や騎士らしい。
試しに解放してみたが、言葉を解さない獣であったので、此方もサクッと介錯した。
魂が既に別の物なのだ、ゾンビやスケルトンを狩るのと同じ感覚である。
入手した資料の中にはホムンクルスの精製について書かれている物もあったので、今度作ってみようと思う。
材料は、対象の血液、培養液、高濃度魔力水、核となる物質。
つまり、僕の血、上級ポーション、魔結晶1、魔結晶2である。
特殊な魔法陣が必要らしいのだが、それは良くみると即席生命の魔法陣であった。
生存時間が短い訳である。
基本的に此処で使われていた材料は、血液、中級ポーション、高純度魔石を砕いて入れた水、魔水晶、それで、使われた魔法が即席生命。
これでは碌な物が出来なかっただろう。
調べ物をしつつ片手間で介錯して周り、最後に実験室で待ち構えていた『デミレッサースピンクス』と『デミレッサーマンティコア』をテイムして終了となった。
この二体は、未完成品に比べると高い知能、それこそ人間と同じくらいの知能を有している様で、状態欄には『興奮《小》』『萎縮《大》』と出ていた。
高い知能を持つ魔物と言う事は、魔力の感知能力も高く、僕達と自分らの格の違いが良くわかる状態にあったらしい。
言葉こそ話さないものの、進化すれば多少はましになるだろう。
尚、実験での耐久力の都合上、スピンクスもマンティコアも若い女性と男性の顔である。
全ての完成品の記録は事細かに付けられており、それによると、彼らはとある小国の近衛騎士隊長であったらしい。
現時点で4体の魔物を配下に加えたが、その全てに獅子の特徴が含まれている。
完成品を回収した人物は獅子が嫌いだったのか、或いは従える事が出来なかったのか、後者であるのなら敵の力の高をある程度測れるが、前者である可能性はなきにしもあらず。
十分に警戒しておこう。
◇
亜人研究区画を処理し、次は精霊研究区画。
素材として使われている魔物は、スピリット系の結晶型やエレメント系の小さな粒、多種多様な妖精達。
リェニが少し悲しげであったが、構わず全て介錯した。
保管庫や資料室を周り、全ての資料や素材を回収して、深部に向かう。
数十分の後に実験室に辿り着いた。
其処にいたのは——
ルェルァ・ローシェ 結晶大精霊 LV519 状態:
——リェニの御親族であった。
大きな青い結晶の中に、胎児の様に膝を抱えてうずくまる小さな妖精の姿が見える。
良くみると、膝と体の間に小さな球体が抱えられており、それを守っているかの様にも見える。
「リェニ、あれ」
「む? …………むむむ? 私に似ているな」
リェニに声を掛けて結晶を指差すと、リェニは目を凝らしてそれを見詰めた。
僅かな間が空いて出てきた言葉がこれである。
家族とかでは無いのかな?
結晶の妖精は確かにリェニに似ているが、リェニより幾分幼く見える。
「親族で居なくなった人は?」
「ふむ…………一人だけ」
かなりの間が空いて、リェニはそう答えた。
「遥か昔に、妖精の秘宝と共に姿を消した妖精女王がいる。名前は確か……ルェルァ王女」
「それだね」
「そうなのか……となるとあれがローシェの秘宝『妖精の宝珠』か」
どうやらリェニの関心はルェルァ王女では無く『妖精の宝珠』にあるらしい。
「殺して取り出す?」
「……いや、あれがもし本当に『妖精の宝珠』であるならば、幾らユキと言えどそう簡単には斃せないだろう」
リェニの話によると、妖精の宝珠とは、歴代の妖精女王達が力を継承し、高めて来た強力なブーストアイテムらしい。
その実態は、初代妖精女王の核。
ローシェ氏族の妖精女王は代々それを受け継いで来たが、ルェルァ王女の代で消失、行方知れずになっていたらしい。
「取り敢えず、僕が行ってみるから、三人は此処で待っててね」
「駄目なの、私も行くのよ」
一人で行こうとしたが、アルネアが待ったをかけた。
仕方がないので、僕より後ろを歩く様に厳命し、付いて来て貰う事にする。
部屋の中央で浮遊している結晶にゆっくりと近付く。
結晶は変わらず、淡い青の光を放っており、特に攻撃してくる様子は見られない。
ゆっくりと近付き……近付き……近付き……そして、触れた。
「……」
「……」
『…………すぅ……すぅ……』
「寝てる?」
「寝てるの?」
鑑定して確認すると、状態欄には何も無い。
魔力を注入してみれば起きるだろうか?
「『魔力譲渡』」
『……ふぁ!? にゃにごとっ!?』
「起きた」
「起きたの?」
この反応、おそらく内部の妖精、ルェルァが覚醒した物と思われる。
『っ!? 触るなっ!!』
「おっと」
「危ないの」
ルェルァの叫び声が聞こえ、次の瞬間、結晶から強烈な光が放たれた。
しかし、光には殆ど攻撃力が無い様だ。
少しの衝撃こそあるが、構わず結晶に触れ続ける。
妖精は精霊に近いから『魔力譲渡』で魔力を送り続ければ僕に敵意が無い事くらい分かるだろう。
『っ!? な、何っ!?』
魔力を注入されるのは独特な擽ったい様な感覚なので、酷く困惑した念が伝わって来た。
ただ、攻撃は止んだので後はじっくり慣らすだけである。
◇
『ふぇ……ふへへ…………』
「む、やりすぎたかな」
何やらルェルァがトリップし始めたので、この辺で切り上げる事にする。
ルェルァの入った結晶を持ち上げ、アルネアと一緒に二人の方へ戻る。
「それはどうするのかしら? 飼うの?」
「さて、ね……取り敢えず持ってて」
「は? ちょ、ちょっと! ……こ、これなんか笑ってるんだけどっ!?」
「ルカナと同じだね」
「はぁ!?」
撫でると皆こんな感じになるよね。
それはともかくとして。
「リェニ、どうする?」
「……私にはどうしようも無いな。古くから妖精の宝珠を持つ者がローシェの女王だから、彼女が里に帰る事を望めば彼女が女王だ」
どうやらリェニは王位や権威には全く興味が無い様だ。
特に顔色も変えず、淡々と喋っていた。
妖精社会がどうなっているのか知らないが、最悪この子は僕が引き取れば良い。
特に何も問題となる様な事は無いのである。
次は竜の研究区画だ。




