第3話 平穏とうさぎ
第六位階中位
朝食を済ませ、地下墓地の探索へ移った。
チーム分けは、
タクチーム+メィミーにルーベルと氷白。
セイトチーム+アランにレイエルとニュイゼ。
妹組にサンディアとウルル。
僕はアルネアとリェニとミュリアである。
先程からアルネアがしきりにミュリアの事を気にしているので、後で聞いてみようか。
探索の主な目的は、浄化が成されているかの確認なので、皆には地下墓地下層まで、場合によっては深層まで潜って貰う。
僕は、上層と中層を探索して貰っている配下の子達を回収した後、何があるか分からない深層からその先まで潜る。
さて、それじゃあ行こうか。
◇
皆を送り出した後、地下墓地の入り口に設置した道具を改修して回収した。
聖属性の魔力を発生させる装置は、強力な闇と不浄の力によって完全に破壊されており、金属板が3つに割れていた。
地下墓地上層は、不浄の気配が一切無く、中層も同じ、下層に入って初めて仄かに感じられる様になり弱いゾンビやスケルトンが発生していた。
深層に入ると、死神が不浄を殺して一晩しか経っていないのに、そこそこの量の不浄が渦巻いていた。
原因は、土や石、朽ちた骨に長年かけて染み込んだ不浄の残滓。
白犬隊を指揮して墓や通路を浄化し、タク達にメールして深層まで潜る様に伝えた。
最深部には滞り無く到達した。
グリエル氏が眠っていた墓所は、いつの間にか結界が張り直されていたので、特に荒らされる事もなく、以前来た時のままであった。
既に其処にはいないグリエル氏の冥福を祈り、前に鉱山街で少女から買ったプァリボルを献花して、その場を後にした。
そんなこんなで、特に不思議な事件が起こる事もなく、地下墓地の完全浄化が完了した。
内部には、二度と不浄が発生しない様に耐久性の優れた魔鋼製の浄化装置を複数設置し、朽ちた骨は全て回収した。
財宝もダモスの一件で全て回収済みなので、もうここでやる事は無いだろう。
最後に、回収した骨でゴーレム、『ボーンゴーレム』を作成し、それと天兵を直した物を徘徊させる事で、防衛力を高めて悪用されない様にしておいた。
それらが全て終わる頃には、昼食の時間より少し早いくらいの時間になっていた。
そう、詰まる所こっちでの昼食の時間である。
リッドはレベルアップしてより出来る事が多くなり、リッド便は快速リッド便に進化した。
スピードが上がり、尚且つ揺れが全く無い。
そんな高速リッド便に乗りつつ、僕の配下とタク達で食事中である。
各自、先の探索で一緒だったメンバーで歓談し、仲を深めている。
リッドの速度から言って、食べ終わって数分後に鉱山街へ到着するだろう。
鉱山街に用事があるのは僕だけなので、他の皆はログアウトして昼食を取っていて貰おう。
◇
「疾風のお二人ですと、昨日の昼に迷宮都市に向かいましたよ」
「迷宮都市ですか……」
やたらと警備を強めていた鉱山街に、スノーのギルドカードを提示して入り、ギルドに向かったが、目的を達する事は出来なかった。
救命活動の折に眷属化していた二人、パーティー『疾風』のキュリナとジーナは、貴族の護衛として迷宮都市へ向かったらしい。
依頼人は、キュリナとジーナが住んでいた村からその先の開拓村一帯を治めている貴族、ナラハ子爵。
ナラハ子爵は、代々ルベリオン王国南部、ルステリア公爵領の西にある魔の森を開拓して来た貴族で、所謂田舎貴族として毒にも薬にもならない存在と捉えられている。
貴族ではあるが然程金銭的に余裕がある訳でも無く、今代当主も細々と開拓をしている所らしい。
今回の祝祭ではナラハ子爵の一人娘がやって来ていた様だが、生憎と貴族全ての家族までは把握していないので会場にいたかどうかは分からない。
ルステリア公爵領の貴族達は迷宮都市に屋敷を持っているので、其処までの護衛として安く雇えるEランクの二人を指名した様である。
まぁ、元々知り合いでもあった様だが。
疾風の二人は、これを機に迷宮都市で探索者として活動するつもりらしいので、二人に会うには南の街に行くしかないだろう。
目的は達成出来なかったが、特に急ぎの案件と言う訳でも無い。王都のあれこれが終わった後に迷宮都市に向かうとしよう。
「ところでスノーさん、一昨日と昨日の夜、海の方で何か起きませんでした?」
「巨大なイカと悪魔と天使と魔王と死神が暴れ回っていましたが、今はもう警戒の必要はありませんよ」
「へー、そうなんですか……つまり教えられないけどもう大丈夫と言う事ですよね?」
「そんな所です」
僕も淡々と並べられると信じられないとは思うよ。
その後、常設依頼の薬草採取依頼を受けて納品し、貴族が通る道故に不足気味らしい食材を幾らか売却してギルドを出た。
街にはまだ何名かの貴族が領主館に滞在している様なので、面倒事を避ける為に領主館には近付かないでおこう。
続いて、一応確認とばかりにシスターアルメリアの孤児院に向かった。
遠目に見た感じだと、以前に会った衛兵の強そうなお爺さんと若者、他数名の男女が子供達の面倒を見ている様なので、子供達に見付からない様にお爺さんを呼んで、食料や薬を渡しておいた。
次に、薬をあげた女の子の経過確認。
レベルが上がったおかげか色々と能力が向上し、より深く、広く探知出来る様になったので、少女の気配を探し出すのには然程苦労しなかった。
チラッと覗き込んだ感じだと、相変わらず貧しい様だが、母親もちゃんと復調して仲良くやっている様であった。
魔力の調査からも特に変な病気に侵されている訳でもなさそうで、強いて言うなら疲れている。
疲労回復の魔法を掛け、これでやる事全てが終わったので、リッド便に帰還する。
手早く昼食を食べないと王都についてしまいそうだ。
◇
アヤと入れ替わりで昼食を取り、やる事を終えてログインした。
その時には既にリッド便は道程の6割を進み切り、後数十分もすれば王都が見えてくるだろう。
各メンバーは快速リッド便の中で思い思いに過ごしている。
……さて、疑問の解消に努めようか。
「……アルネア……何持ってるの?」
「ん? ぬいぐるみなの。うさぎなの?」
何やら歯切れが悪いが、要するにうさぎのぬいぐるみだ。
夢現・兎人形大王 LV? 状態:
件のうさぎはピンク色で、頭に王冠の様な物が乗っており、僕に向けてもふもふの片手を上げて見せている。
挨拶のつもりらしい。
「うさぎのぬいぐるみなのは分かるんだけど……」
「ユキのスカートの中から出て来たが?」
「む?」
リェニのその言葉にスカートの中を探ると、夢の星珠が無くなっていた。
やっぱりあの時の兎だったか。
まぁ、特に文句がある訳でも無いが、やはり訳が分からない。
『不思議の世界』を攻略すれば何か分かるだろうか?
……あの場所は何やら、既存の法則性が存在しない世界である様な気がしてならない。
鍛錬島は後で配下を送り込んで攻略してしまおう。
魔物解説が色んな理由(長い・バラバラ、等)で見辛そうなので、次から少し改善します。
これらは、時間が出来次第順次改善して行きますが、改悪だと思われる場合はお声掛けください。




