第2話 13日目 朝
第六位階中位
明くる朝、目を覚ますとアルネアに捕まっていた。
僕のベッドの上や室内では大量の妖精さん達が思い思いに過ごしている。
「……お休み」
「ちょっと待つの、話すの」
「昨日の顛末、聞かせて貰おうか」
◇
いつも通り、朝の雑事をこなした。
天気が良かったので洗濯物は外で干したり、昼食や夕食をちょっと凝ってみたり。
アヤと一緒に戦いとは少し離れたひと時を過ごした。
心配して来てくれたアルネアとリェニには、既に昨日の事を説明してある。
死神やダモスの闇と不浄の件、能天使による謎の神罰、新しく遺跡が僕の支配地になった件。
特に支配地の件は、位置的にどう見てもルベリオン王国の領地内、王様とお話しする必要があるだろう。
と、言ったらリェニが『む? ではイスタルには私から話そう』と言い出した。
そりゃ、隣人なんだから知り合いなのは当然と言えるだろうね。
リェニの話はそれだけで終わらず、せっかくなので暮らせる様に整備しようと申し出て来た。
特に断る理由もないのでお願いし、妖精さん達には先ず遺跡北の居住区を整備して貰う事となった。
護衛には熊、猪、鹿、狐、蛇、それから、イェガ、クリカ、モルド、の大型の子達をつけた。ただし、メインのガーディアンはうさーずである。
整備の内容に関しては妖精さん任せだ、きっと、いや、間違いなく、人がではなく妖精が暮らせる様に整備する事だろう。
あくまでも予想であるが、僕にはきゃっきゃっ♪ と飛んで行った妖精さん達が話を聞いていた様には見えなかった。
また、他の配下は、機動力の無い人型とウルル以外を地下墓地に派遣し、ウルルには昨日落とした天兵を回収する様に、人型の子達はリッド拠点の護衛について貰った。
朝の諸々を終えるのに一時間程掛かったので、そろそろウルルも戻って来ているだろう。
戸締り確認をして、ログイン。
「オープンゲート」
◇
ログインしてリビングに出ると、そこではアルネアとリェニ、他が豪勢な食事をしていた。
「美味いの、人が作る物は最高なの……でも量が少ないの」
「美味だ、しかし量が多いし甘みが足りない」
アルネアが食べているのは見た感じ鶏肉っぽいスパイシーな香りの物体。
リェニはパンケーキを小さなナイフとフォークで細かく切り分けてほんの少しだけ食べていた。
「……美味い、もぐもぐ、美味いな、これは」
「はぐはぐ!」
「二人とも……せめて手を使いなさい」
リェニ達が綺麗に食事をしている一方で、狼二人は皿に直接顔をつけて食べていた。
顔の形から、と言うか、やってみた体験からそのままでは食べ辛いという事くらい分かりそうな物だが、皿リッドが気を利かせて皿の形状を食べやすい形に変えてしまったせいでそのままである。
教育大臣の氷白も何度か注意したのだろうが、それも無意味だったらしい、床に転がっているフォークを見れば一目瞭然だ。
今は、優しいお母さんの顔でミュリアの髪を整えている。
尚、飛び散った汚れは気が効くリッドが回収していた模様、とっても綺麗になってる。
「おいら、こんな美味しい物食べたの、初めてケロ、手が止まらないケロー!」
「あの! 水分取らないと干からびちゃいますよ!」
「ひっ……わ、分かったケロ」
「〜〜!? 〜〜♪」
また一方では、レイエルがポテトチップスらしき物体をむしゃむしゃと食べており、件のポテトチップスは塩が振られている。
かなり大きなボウルにちょこっとしか入っていないので、それだけ食べたのだろう。心なしか肌艶が失われている様に見える。
それを見兼ねたニュイゼが、アルルジュースらしき物が入ったコップをレイエルに差し出した所、レイエルが怯えた様な声を出して身を震わせた。
そんなに怖いのか。
ニュイゼの方はレイエルの事が好きらしく、甲斐甲斐しく世話をしている。
……時折長い舌が唇を舐めるのは、おそらく癖か何かだろう。
そんな二人の横では、サンディアが謎の赤い液体を飲んで驚愕に目を見開き、そのトマトジュース的な物体を一気飲みしていた。
ふむ。
「人外魔境だ」
取り敢えず、厨房、もといキッチンでポテトチップスを量産しているアランと、ジャガイモを高速スライスしているリッドを労っておこうか。
「アラン、おはよう」
「おう、おはよう、今日はちょっと遅かったな」
「まぁ、昨日あれだけ暴れたからね、ちょっと疲れたんだよ」
「そうか。あぁ、料理の事なら気にしなくて良いからな」
「む、そう。じゃあ気にしない」
チラリと視線だけ向けて料理に戻ったアランに先読みされてしまった。
しかし、アランはいつも早いね。
「アラン暇なの?」
「唐突だな……まぁ、そうだな……少し前まではそうでもなかったんだが、騒がしい奴が居なくなっちまったから……暇になっちまった」
「ふーん」
僕の質問に、アランは料理の手を止め、遠くを見る様な目で応えた。
何だろう、失恋? ……アランが? ……それはないか。
皆が来るまでの間に、細かい雑事を終わらせておこう。
◇
やる事は山程あったが、現時点で出来る事は精々、帰って来たウルルを労ったり、画像やインベントリの整理をするくらいである。
直ぐに終わってしまったが、全員が集まるまでの短い間であったので特に問題はない。
全員が集まるのはいつもより少しだけ遅い時間であった。
やはり昨日の戦いが響いているのだろう。
多対多の殺し合いなんてそうそう経験出来る事ではない、レベルも昨日の戦いだけで3〜4程上がって、レベル帯は38〜40、メィミーは11上がって24。
メィミーの方はようやく一般プレイヤーに追い付いた形である。
まぁ、相手にしていたのは強い不浄や死神の分体、ただの戦闘疲労だけではあるまい。
疲れが後を引いているのはそれらに影響されたからと言う部分もあるだろう。
それらを考慮して、今日はのんびりやって行くとしようか。
大まかな行動計画は、先ず、食後に地下墓地の調査、その後リッド便で鉱山街に、そして最後に王都にある屋敷の調査と、王様に支配領域の件でお話。
何事も無ければ戦闘は殆ど無い筈である。




