第1話 能天使降臨
※200万PV達成
第六位階中位
光の柱が到達する直前、僕に出来た事は……案外と多かった。
と言うのも単純な話で、どうやら敵が行使した魔法は所謂所の儀式魔法に相当する魔法。
キラキラと光る無数の星達が超巨大な魔法陣を形成。
そこへ、天使が放った光属性の光線がその魔法陣に到達、その際、魔法発動に僅かな遅延が発生、その後、巨大な光の柱の魔法が放たれた。
原理的には、天使が放った魔法を星々が形成した魔法陣で増幅した物で間違い無い。
そんな数瞬の間に僕がやった事と言えば、簡潔に纏めるとショッピングである。
何せ今の僕は弱体化している、そんな状態で出来る事は限られているし、あれを防ぐには防げる自動型の道具を使うしか無い。
そんな訳で、何ら遅延無く開いたクランショップで結界系のアイテムを検索。
出て来たアイテムの中から拠点防衛に使える物を選び出し、購入。
そして、僕の支配領域になった『呪われし遺構』全域を守れるように設置。
この間、実に0.3秒。
検索、購入、設置が終わる頃に、増幅された光の柱が発射されたのである。
あとは野となれ山となれ。
拠点の名前である『呪われし遺構』を改名し、『古都インヴェルノ《仮》』にしたり、結界が破られた時に備えて『ギガントスクイッドの死体』を取り出す準備をしていた。
尚、今回購入した商品は、『結界大結晶』が1つと『結界結晶柱』が4つに『魔力貯蓄結晶』が5つ、『魔力吸収結晶《大》』が6つ。
締めて、十億と一千万マナである。
内訳は、大結晶が3億、結晶柱が1つ1億で4億、貯蓄結晶が1つ5千万で2億5千万、吸収結晶が1つ1千万で6千万。
残金は、150,293,642マナ。
手酷い出費であった。
設置は、遺跡の西に大結晶と貯蓄結晶、吸収結晶を、後は、所持していた結晶柱と貯蓄結晶も合わせて系五ヶ所にそれぞれの結晶を設置した。
発動させた結界は『対魔法結界』。
直接受けるのは不味いので、東の海へ受け流す様な形で結界を張った。
果たして僕の思惑は上手くいき、太陽が間近にあるかの様な光を撒き散らす光線は、ものの見事に海の彼方へと逸れて行ったのである。
ただし、結界の魔力は大幅に減少、次同じ攻撃が来たらとても耐えられはしないだろう。
死神と戦い、ダモスとも戦った今の僕には、もはや手加減をしている余裕は無い。
手早く仕留める。
それしか生き残る術は無いのだ。
◇
そもそもその様な思考に至った理由は単純明快な話だ。
あれだけの魔法を行使出来る人物が、今の遺跡の状況を探れない筈がない。
それはつまり、探る気すら無く取り敢えず打ち込もうと言う作業的な思考、或いは探った上で魔法を放ったかのどちらかだ。
その時の僕には話を聞いている余裕が無く、何者で何が目的かを誰何している時間が無かった。
……それだけでは無い。
実の所、死神の一件で、生まれて初めてと言っていい程に大きく感情を揺さぶられたのが後を引いていたのだろう。
それは詰まる所、面倒臭さかった……或いは、いい加減にイラついていたのかもしれない。
ともかく僕は、現れた天使の形をした敵を、殺す判断を下したのである。
◇
「『悪魔化』」
発動した瞬間、側頭部から角が、肩甲骨のあたりから翼が、腰のあたりから尻尾が生えて来た。
光と闇は相反する。
故に手早く天使を狩るなら悪魔になるのが良いだろう。
大地を蹴って飛翔すると、結界によって逸らされた光の残滓を闇の魔力を纏う事で通り抜け、瞬時に魔法陣を構成している要の星を打ち砕いた。
天兵 LV70 状態:警戒
大天兵 LV150 状態:
破壊した星は大天兵と言う名前の天使型ゴーレムであった。
魔法陣を構成している無数の星々が天兵であり、数十の要には大天兵が。そしてそれを守る様に数体の天兵が配置されていた。
兎にも角にも時間が無い、魔法使用の反動がくる前に敵を殲滅ないし無力化しなければならないのである。
僕は即座に戦力状況を把握すると、血刃と影鎌を操作して天兵達の破壊を開始した。
「馬鹿なっ! 『断罪の鉄鎚』が防がれただとっ!!?」
そう声を上げたのは、四枚の翼と光る輪っかを持った女性。
長い金髪はポニーテールで、瞳の色は碧眼、身長や体型は少女と女性の中間くらい。
純白に、光る青の装飾が施された鎧と槍、大盾で武装している。
素早く獲物の背後に回り込み、死神の大鎌を振るう。
「しっ!」
「っ!? ぐぁっ!?」
刃が当たる直前、どう言う方法かは知らないが、僕の攻撃に気付いた天使が回避行動を取り、袈裟懸けの一太刀は翼を一枚切り落とすにとどまった。
シーリン エクスシア LV309 状態:出血《微》疲労《小》
鮮血が飛び散る中、悲鳴をあげつつも天使は此方へ槍を振るって来た。
中々の反応速度に驚きつつも、振るわれた青い光を纏う槍を切り捨てる。
「っ!? 聖槍がっ!? ぐぅっ!!」
鎌をインベントリに仕舞い、返す刃の代わりに蟹鎚を振り上げる。
天使は流石の反応速度で蟹鎚の一撃を大盾で防いだが、勢いを殺す事は出来ず、空高くへ打ち上げられる事となった。
「馬鹿なっ……! 聖盾までも破壊されるだ——っ!?」
そのまま飛行して僕から離れようとした天使へ、上空で待機させていた血刃の一部で作った大槍を突き刺す。
しかし、その一撃さえも異常な反応速度によって避けられ、致死の大槍は心臓から大きく離れた腹部を貫いた。
「ゴフッ……ありえない……こんな……っ!!」
とどめのつもりで放った複数の血刃による槍も、防御に振るわれた四肢を貫くにとどまり、どうしても殺し切る事が出来なかった。
時間切れである。
「聖鎧をこうも容易く……! 『転移』!」
だが、幸いな事に敵も逃げ出す様である。
恨み辛みを考えると斃せなかったのは残念極まるが、取り敢えずOKだ。
「貴様……その顔覚えたぞっ! ゴフッ……いずれ、必ず、神罰が下るっ!!」
「……」
「覚えておけっ! 主に仇なす神敵めっ!!」
そこまで言い切ると、天使、シーリンは大きな光を放って消滅した。
その際に見えた魔法陣は写真で撮ってファイルに入れておく。まぁ、普通なら警戒して何度か転移を繰り返すのだろうけど、一応ね。
シーリンが立ち去った後は、哀れにも置いて行かれた天兵達を、僕の生命力を吸って増加した血刃でバラバラに破壊し、残っていた最後の大天兵も力を振り絞って今、捻り壊した。
《【王国クエスト】『能天使降臨』をクリアしました》
【王国クエスト】
『能天使降臨』
参加条件
・能天使:『エクスシア』率いる天兵と戦う
達成条件
・能天使:『エクスシア』率いる天兵を討伐、撃退する
失敗条件
・王国が滅ぶ
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント5P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度100%
・武器『名も無き聖槍』
・防具『名も無き聖盾』
・防具『名も無き聖鎧』
エクストラ評価報酬
問答無用
悪鬼羅刹
・スキルポイント5P
・スキル『天使召喚』
《レベルが上がりました》
王国が滅びるとか書いてあるが、何方の拠点もまだ遺跡、既に滅びた後である。
それはともかくとして、これにて一件落着。
後で起きる問題は後の僕が如何にかするだろう。僕はもう眠い。
力なくゆっくりと皆の前に降り立つと、『悪魔化』を解除する。
「……『召喚リッド』……それじゃあ皆、また明日」
『……』
それだけ言うと、召喚したリッドを直ぐに変形させ、ベッドにダイブして瞼を下ろした。
眠たいし、頭痛いしでもう駄目だ。
即退場




