第28話 財宝竜ダモス
第六位階下位
ダモス何某は知能が低いのか、あるいはそうする事が当然という認識を持っているのか。
自分の体を形成している財宝をばら撒いて、大量の兵士を作り上げた。
それはまるで貴族が傭兵を雇うかの様な姿。
或いはダモス何某は、人間の持つ財宝への欲望が具現化した存在なのかもしれない。
竜の姿を取るのはそれが強さの象徴であるからだろう。
その有り様は、物理的に見ると先の貴族や王族が如き振る舞いであるが、魔法的に見ると死神さんのやっていた事に近い。
死神さんの場合は、闇属性の靄を作り、それを使って分体を形成していた。
対するダモスは闇属性の靄の代わりに財宝を核にした分体を作っている。
汎用性は圧倒的に死神さんの方が上だが、どちらにせよ相当に厄介な能力である事は間違いない。
「ふむふむ」
「……怠い」
「ワフ、ワオン」
財宝の魔物が荒野に溢れ出し、そこへ機動力のある子達が殴り込みに入る。
そんな戦いの最中、僕の隣に腰掛けているメロットは、肉体を着ているのが辛いとでも言わんばかりにぐったりとしていた。
まぁ、重い物を二つも付けているんだから疲れもするだろう。
その上、メロットも僕と同じくらい精神を消耗している様で、今にも眠りそうである。
また、僕の足元ではウルルがちびちびとアルルポーションを飲んでいる。
ウルルの場合は、体力を削られて気絶していただけなので、ポーションを飲んで回復すれば万全らしい。
ウルルの役割は主に僕の護衛。
僕が死亡した場合配下の皆がどうなるのか知らないが、万が一自動で送還される仕様であった場合は戦場が一瞬で瓦解する。
そうなると、次に襲われるのは距離的に鉱山街。
僕が死亡した場合の死に戻り地点はおそらく王都なので、間違いなく鉱山街は滅びる事になるだろう。
それは困るので、ウルルは護衛なのである。
まぁ、万が一となればぶっ倒れる事前提で全力で攻撃し、少しでも多く力を削いでやるつもりだが。
一応、強者であるアルネアとウンディーネ三姉妹、王族のティア、幾らか戦力を率い、且つ、大剣士とも知り合いらしいリナに連絡を取っておこう。
「ハイ♪ ユキだけど」
あ、眠い……。
『む、ユキか』
『ん? ユキの声がするの』
『あら〜、何かあったのかしら?』
『……ユキ、疲れてる?』
「……うん、これまでに無いくらい」
気怠げにそう漏らすと俄かに騒がしくなる皆。
『なっ!? ユキ大丈夫なのかっ!?』
『んん? 直ぐ行くから場所を教えるの、早くなのよ』
『直ぐ向かった方が良いかしら?』
『……ん、アマネ、ユキの危機、直ぐ行く』
「うん、取り敢えず……自己紹介してて」
ねみゅい…………。
意識はぼけっとしているが、取り敢えずやるべき事は先にやっておこう。
戦場を俯瞰出来る写真を撮り、それをリナに送る。
事前情報として敵の大まかなレベルも付け加え、その想定出来る総数と王都から遺跡までの移動時間も書き記した。
『じ、自己紹介か……コホン、私はエスティア・ルベリオン。ユキの主人だ、私のユキが何時もお世話になっている』
『……リナ、ユキの姉、わ・た・し・の、ユキが何時もお世話になってる……主人というのを詳しく』
『アルネアなの、ユキとは友達。ユキにお姉さんがいたのも主人がいたのも驚きなの……主従が無理矢理だったら怒るのよ? 本気なの』
『あらあら〜、ティアちゃんは悪い人じゃないわよ〜。アルネアちゃんは久し振りね〜』
ティアとの関係が無理矢理だったかどうか?
「……うー、無理矢理だった様な〜…………」
『……詳しく』
『聞かせるの』
『え、あ、あの、義姉さん、ですか?』
『そんな風に呼ばれる筋合いは無い』
『あらあら〜』
ねむ……ぃ…………。
◇
最初は何故かやや険悪であったが、直ぐに仲良くなった皆に、現状を伝える。
此処からではダモス何某は探知範囲外なので、その強さの程は分からない。
しかし、今の所は財宝をばら撒く事しかしておらず、大量の兵力でセバスさん達の接近を阻んでいる。
倒された財宝魔物から転がり出た財宝は、下級の物だとそのまま回収出来る様だが、上級の物だと下級の財宝魔物に分裂して直ぐに回収出来ない。
その上、回収せずに放置していると財宝がダモス何某に引き寄せられ、新たな財宝魔物として襲い掛かってくる。
非常に厄介ではあるが、少しずつ、確実に、ダモスの力を削いで行っている筈だ。
このまま行くと普通に勝てる気がするが、まさか異世界で魔王と呼ばれていた存在がこの程度で終わるとも思えない。
と言う訳で、各員には万が一の時に備えて直ぐに動ける様に待機して貰う。
「ふぁ……それじゃあよろしくね」
『……分かった、ユキ、気を付けて』
『リェニにも伝えたの……万が一の時はユキも逃げるのよ?』
『ユキ、絶対に死ぬなよ……怒るからな』
『ふふ、精霊を集めておくわね〜』
念話を切り、ようやく一息つく。
途中少し意識が飛んでいた様な気もするが、特におかしな事にもなっていないので、問題はなかった様だ。
やってみた感じから言って、全力活動は十秒持たない気がする。
そこはもう皆の頑張りに期待するしか無い。
◇
乱戦に近い戦いが繰り広げられている戦場を、遺跡の朽ちた壁の上から見下ろす。
配下の皆は死神さんの経験値でかなりレベルが上がったので、肉体性能が大幅に向上しており、殆どの財宝魔物を一撃必殺の勢いで倒して行っている。
しかし、やはり敵は数が多く、戦場を俯瞰して指示を出す人が必須である。
彼らの戦いを良く見て把握し、戦場を支配する人が。
「冷静に、確実に………………」
「すぅ……すぅ……」
「……ウォンッ」
「はっ……うぅん、ウルルありがとう」
「……うるさい、眠い…………」
ちょっと駄目かもしれない。




