第27話 次の戦い
第?位階
今回手に入ったのは、大きな鎌。謎の黒い球体。ボロボロに見えるローブ。骸骨部分が見えていない死神の飾りが付いたチョーカー。涙滴型のネックレス。
各々軽く検分する。
大鎌は、物理的な攻撃力も確かに存在しているが、それよりも精神や魂に直接作用する武器の様だ。
黒い球体は、影があれば自在に鎌を出現させる事が可能で、死神が使っていたのと同じ様な攻撃が出来る武器。
ローブは、飛行系の能力が付与されている他、闇属性の魔法や耐性を強める能力があり、気配を隠す様な力も備わっている。
チョーカーは、装着しているだけで、攻撃時に精神や魂に直接作用させる事が出来る装備。
ゴースト系の魔物や精霊に大きなダメージを与える事が出来るという事である。
そして最後の涙滴型のネックレス、これは名前に魂とあるが、死神が生きている事から考えると実際に魂であると言う事では無い様だ。
付与されている能力は、一部の装備やスキルを強化すると言う物、それ以外の能力も存在しているが、今の僕でも良く分からない。
装備に関してはこんなところ。続いてスキル結晶。
良い機会なので観察しながら使ってみよう。
そもそも、スキルと言う物が何なのかと言うのは予てからの疑問であった。
早速スキル結晶『死神召喚』を使う。
「ふむ」
インベントリから取り出したスキル結晶。使用すると念じると、いつも通り、結晶内部にある光の玉が飛び出した。
その光は肉体を経由して僕の魂に入って来た。
光の玉は無色透明な力の塊で、その力が、僕の魂表層から少し先に掛けての何も無い余白部分? に不可思議な文様を描く。
微妙に擽ったい感覚を覚えるそれは瞬きの一瞬で行われ、機構を完成させた光の玉は、機構周辺の魂に馴染むように熔け崩れた。
周辺よりも少し濃くなった機構部分は、粘性の高い液体の中に沈む様にゆっくりと、僕の魂の奥へ入って行く。
要するに、スキルとは魂に刻まれる物と言う事か。
それを観察していると、表層部分の魂が年輪の様な地層の様な不思議な形状をしている事に気付いた。
スキル結晶はその年輪をぶち抜いて、一仕事終えたかの様に消えて行った訳だ。
……大丈夫なのだろうか?
と言うか……魂に刻まれると言う事はつまり……?
そう言えば、死神は『義体』がどうのと言っていたが……まぁ、良いか。
強くなる分には問題無いだろうし。
全てのスキル結晶を使い、その変化の程を見送った後、ゆっくりと地面に降り立った。
遺跡と墓地の中間、広い荒地には、僕の配下が全員集まっている。
タク達も先鋭メイド隊もセバスさん達も全員いる。
戦力が此処に集合している理由は明快であった。
今、遺跡側には財宝の魔物がいない。
駆逐した訳ではなく、移動したからだ。
墓地側には、下位から上位までの大量の財宝魔物が集結しており、地下墓地からは今にも不浄の塊が這い出て来ようとしていた。
次の戦いが、始まろうとしていると言う事である。
「っ!?」
戦力を見下ろし、いざ指示を出そうとした瞬間、光が弾けた。
奇妙な喪失感を感じ、気付くと、僕はメロットと一緒に玉座に座っていた。
手元にあるのは魔典と夢の星珠。
着ている服はインナーのみ。
即座にメイド服を装着し、改めて辺りを見回す。
「……コホン……それじゃあ皆、戦う準備を」
『おう!』や『了解!』などのタク達の声、『仰せのままに、我らが王』と言う吸血鬼さん達の声、『ワオォォーーン!!』と言う遠吠えに『ガァァアーー!!』と言う熊の雄叫び、それぞれの声を聞きつつ、玉座を操って後方へ下がる。
今は凄く気怠くて、何もやる気が起こらないのだ。
◇
死神さんが気を効かせたのか金の粒子が気を効かせたのか、或いは融合していたからか、経験値は未召喚の子達にも入っていた。
ただし、全体的に数が多くなってきているのであまり大きくは上がらなかった様である。
僕のレベルはだいたい100くらいしか上がっていない。
グリエル氏との戦いでは、8%の経験値で合計70くらい上がった事を考えると、100%の経験値で100しか上がらないのは少々不味い。
レベルアップの効率を考えると、一部配下に経験値が行き渡らない様に調節する必要があるだろう。
僕の配下の数は、今や500以上にまで膨れ上がっている。
この戦力の全てを経験値稼ぎに使えるのなら効率は良いのだろうが、今はちょっと残念な結果になってしまった。
具体的にどの様に残念かというと、出来れば今使える戦力に経験値を集中させて欲しかったと言う我儘である。
僕が保有する戦力の配備状況は、
50のワーカー達が拠点の島で狩りを行い、30のソルジャーと100のゴーレムに、二体のリーダー格が王都の防衛をしている。
レイーニャ配下で増えた80匹の猫ちゃんずは、おそらくレベルが100を超えた今もにゃん拠街でゴロゴロしているだろう。
102のアンデット達とルーレン、アッセリアの二人は今、地底湖に帰還する為に迷宮を上がってきている筈。
これらの兵力に加え、白雪、レミナ、ルカナ、レイーニャのトップクラスの戦力が無く、元ジャイアントトレントだった現ドリアードさんには会ってすらいない。ウルルとメロットもグロッキーである。
つまり、数にして371の戦力が参戦出来ない。
今動かせる戦力は145。
幸い、そのうち82が白犬部隊なので、不浄には有効である。
一番の問題は僕が使えない事か。
一部の自動型の装備は起動すれば勝手に魔力を吸って発動状態を維持してくれるが、殆どの武器は使えない。
スキルも、一部の自動型のスキルは特に問題無いが、肝心の魔力吸収や譲渡が使えない。
それらの装備やスキルを使用すると、途端に強力な眠気が襲ってきて、意識が遠のいて行く。
僕が全力で活動出来るのは、おそらく数十秒が限界。
つまり今僕に出来る事は、配下や他の皆に戦いを任せ、後方で玉座に踏ん反り返って欠伸をしながら気怠げな視線で死線を行く皆を見下ろす無力な幼女になる事。
まぁ、『それで良い、むしろそれが良い』と言うのがアヤ達の意見であり、『王とは本来そう言う物で御座います』と言うのがセバスさんの言葉である。
そんなこんなで戦いの準備は進み、ダモス何某が地上に出て来る前に、何とか間に合わせる事が出来た。
戦場は、僕が使役する戦力の内、機動力のある犬や猪、鹿などが敵を撹乱し、防衛力として期待出来る、イェガ、クリカ、蜘蛛さん、変形リッド、四熊、などなどが敵の大群を受け止める。
人型の子達は、装備の都合上他の子達よりも一段強めなので、強敵を相手取って貰う。
その中でも、氷白はかなり頭が良いみたいなので、タク達への敵の誘導と支援を行なって貰うつもりだ。
吸血鬼さん達は、20人の先鋭メイド隊が、僕の配下の人型と同じ役割を担い、50の少し弱めのメイド達に周辺の警戒と遠距離攻撃による雑魚狩りをして貰う。
ゴブリンもどきのフェイリュア・ヴァンパイアと、それから進化したと思わしきちょっとグロイ見た目の下位吸血鬼は、悪いが捨て駒として戦場に放り込む。
一番の大戦力である、セバスさん、リアラ、アスフィンがダモス何某と戦う役割だ。
僕とウルルとメロットは、一番後ろで死人の様にぐったりする役目である。
◇
月が照らす荒野。
墓地に蠢く不浄の影。
不気味な程に静かな戦場には、目前に迫る戦いに備えて武器を構える人型と、声もなく殺気を研ぎ澄ませ四肢に戦意を漲らせる獣達が、その時を待っている。
それは、何の前触れも無く現れた。
遍く全てに降り注ぐ月光、それを拒むかのように反射させる金属塊。
それらは瞬きの間に、積み上がり、まるで立ち上がるかのように形を成した。
強靭な四肢。
怪しく光る紅玉の瞳。
そして天突く巨大な翼。
——竜。
金と銀、様々な光を放つ宝石で出来た竜。
『OOおオooォォぉおオOーー‼︎‼︎』
響き渡る咆哮は、まるで地獄の底から響く怨嗟の声が如く。
戦いの時は始まった。




