第24話 闇満ちる大地 六 ユキウサギ
※190万PV達成
第五位階中位
先ず第一に確認。
従魔術の能力、『配下操作』は、端的に言って憑依であろう。
よってこの状態でも使用可能と推測できる。
それを試すべく、と言うか興味本意で、メロットの魂に重なってみようと思う。
まぁ、メロットなら万が一があっても大丈夫だろう。多分。おそらく。
と言うか、メロットの実際の魂は本に封印されており、尚且つその本は今僕の中にある。
よって、今見えているメロットの魂は、言うなれば肉体を操作するメロットの意思と言う事であろう。
うむ、問題なし。
と言う訳で、姿勢良く座って両手を振り回しているメロットに重なってみる。
『っ!? ……んんっ……気持ち良い……ユキ……?』
「ん?」
接触した瞬間、唐突にメロットの声が聞こえて来た。
どうやら接触状態で相手が考えている事を読めるらしい。
「ふむふむ、ちょっとお邪魔するね?」
『……え? ユキ? ……あ、ちょっと、んっ……む、無理……』
「ふむ、大丈夫そうだね」
思考では少し良くしゃべるメロット。
僅かな抵抗感はあるが、特に問題はなさそうである。
何より、金の粒子が融合を後押しする様に僕とメロットに纏わり付き、境界を溶かしている。
『だ、だい、じょばない……無理……! は、入らない……死ぬぅ……』
「大丈夫、大丈夫。もうちょっとで重なるから」
『だ、駄目、もう無理……! ふきゅう………………』
「…………メロット?」
重なりきった瞬間、メロットからの反応が無くなった。
……………………。
『…………死ぬる』
「あ、大丈夫そう」
それにしても、どうもメロットの反応がおかしい。
……おそらく、『配下操作』の場合は、術者が被術者の体を遠隔操作する物で、肉体を共有しても魂を共有する物では無いのだろう。
要するに、魂を合体させるのはもっと別の物と言う事だ。
……金の本には皆の魂が入っており、僕がそれを取り込む際に異常な快感を味わう羽目になった。
メロットも同じ目にあっていたのだろうか……?
「……ごめん」
『…………ゆ、許す』
「ありがとう」
さて、現状だが、今僕の視界は二重になっている。
体の操作権限はメロットにあるらしく、メロットは両手を指揮者の様に振るう事で、剣と杖を操っていた。
対する死神は、大鎌でもって剣を弾き、飛来する魔力の矢雨を同量の魔力を持つ闇属性の矢で迎撃していた。
剣戟と弾幕の隙をついて消失した死神。メロットは咄嗟に背後の旗を使って一瞬で移動した死神の、大鎌による一撃を防いだ。
「っ!」
しかし、膂力の差か性能の差か、大鎌とメロットの間に割り込ませた旗は押しやられ、伏せようとしたメロットの額目掛け鋭い刃が迫り来る。
その直前、王笏の自動防御が発動し、闇夜の中に金属音が響き渡った。
今ので魔力がゴリっと削られたのが分かる。
しかし、僕が融合したからか、今やメロットと僕の魔力が繋がっており、メロットの魔力は減った先から補給されている。
今、僕はメロットのマナタンク状態であるのだ。
「……便利」
『だろうね』
アークリーパー LV300 状態:服従
ちょっと相手のレベルが高すぎるきらいがあるが、取り敢えずメロットに任せておこう。
続いて僕がやる事は、無尽蔵に沸いてくる金色の粒子を操って、遺跡全体を覆い尽くす事。
常態の処理能力では少々厳しいと言わざるを得ないが、今の状態なら可能だ。
「……いっぱい」
『気にせず戦ってね』
「……見えない」
メロット視点では、体から金色の粒子が溢れ出して四方八方に散らばって行くのが見える。
メロットに気にしない様伝え、金色の粒子を操作する。
やる事は単純だ。
金色の粒子で結界を作り、聖属性を付与してそれを狭めて行くだけである。
『ふむ』
「……危険」
闇の靄は結界が完成した瞬間、待っていたかの如く急速に一つの場所へ集まりだした。
その場所と言うのが、メロットの目の前にいる死神である。
飛躍的にに高まって行く死の気配。
そろそろ良いだろう。
何処まで通じるかは未知数だが。
『それじゃあ……』
「?」
体を借りるよ、メロット。
『……『配下操作』』
「ひゃっ!?」
『ふぇぁ!?』
——金光が瞬いた。
◇
『銀の御霊に相応しき器が白銀の神と同型を取る……これもまた運命なりや?』
唐突に聞こえた死神の声で飛んでいた意識が戻って来た。
辺りの気配を探ると、後方でタク達が此方を見ており、直ぐ目の前が墓地に続く荒地であった。
配下の皆は遺跡の直ぐ近くに散らばっており、それぞれが死神や財宝の不浄と戦っていた様だ。
月が照らす荒地には、それなりの数の人型が徘徊しており、それらは全てが全て、此方を向いている。
墓地の中にいる輩も同じ様だ。
視認できていない筈なのに、遺跡や墓地にいる財宝の不浄が全て此方を見ている。
「……『命令』遺跡内、不浄、殲滅して」
何故かは分からないが、口を開くと途端に喋るのが億劫になる。
それどころか、違和感こそ全く無い物の、体の感覚が何時もと全く異なっている。
取り敢えず、『画像』スキルで自撮りして姿を確認してみよう。
『無意味である。彼の魔王は凡ゆる金色を好む、我が闇が晴れた今、あれを遮る物は無し』
「……そう、面倒だね」
メニューを開き、撮った写真を確認する。
そこに写っていたのは、美少女と美女の中間程に育った僕っぽい人であった。
頭頂付近にピンクシルバーの兎耳が生えており、髪の色は3割がピンクシルバー、残りがピンクゴールドになっている。
目はしっかりと開かれていて、左目が桃色、右目が青色のオッドアイ。
そして、胸元には……少し大きめのクッションがあった。
状態から考えて、僕の金色状態とメロットが合体した様な姿なので、僕とメロットが混ざった程度の大きさに落ち着いたのだろう。
装備の方は非常に豪華である。
剣を操っていた右手には竜が細工された金色の籠手が、杖を操っていた左手には黒の指ぬきグローブが装着されていた。
頭部には、王冠を想起させる装飾品が付けられており、服もまた豪奢でありながら品がある。
そしてその周囲に、鎧の様な物が付かず離れず浮遊していた。
『神命に試練……これもまた我が宿命なれば……始めよう』
「……ん、やろうか」
死神 LV? 状態:?
ユキ LV? 状態:?
勝てるかは分からないけ——
《【運命クエスト】『異邦魔王』が発令されました》
【運命クエスト】
『異邦魔王』
参加条件
・?
達成条件
・異邦魔王を討伐する
失敗条件
・異邦魔王が討伐される
・異邦魔王を討伐出来なくなる
・備考
異邦の魔王に永遠の眠りを。
……参加者追加……?




