第17話 蛇は蛙を喰らい、雪女は狼男を躾ける
第五位階中位
取り敢えず気になる子から順繰り確認して行く事にした。
最初は、レイエル。
レイーニャもそうだが、スキル欄に『人化』と言うスキルがある。
これは、僕が持っている『悪魔化』と『天使化』、『獣人変化:狼人』に類似するスキルだろう。
自分の能力を確認するのも兼ねて、レイエルには『人化』を使ってみて欲しい。
「『召喚レイエル』」
魔法陣が現れ、光を放つ。
それが収まると、其処には二足歩行の蛙がいた。
「『人化』使ってみて」
「唐突過ぎるケロ」
文句というか感想を述べつつ、光を放ち始めたレイエル。
『獣人変化:狼人』を使った時は、ニュルっと耳が生えて来るだけだったが、やはり大規模な変形には大きなエネルギーの動きがあるのだろう。
光が収まった時、其処に立っていたのは——
「うーん、ちょっと慣れないケロ」
——照れた様にはにかむ全裸の少女であった。
想定内である。
ショートボブの髪は水色をしており、瞳の色は澄んだ青。
肌は僕に似て白っぽく、頬をほんのりと染める赤色が良く目立つ。
インベントリから『海魔王の重軟鎧』を取り出し、『換装』スキルでレイエルに装着させる。
『換装』スキルで装着させたからか、レイエルに合わせて形状が変化した鎧は、少しフォルムが女性的になり、全体的な質量が低下した様だ。
「おお!? なんか出たケロ!?」
「『人化』スキルの魔力減少スピードはどのくらい?」
「んえ? あ、えと……変わった時以外は減ってないみたいケロ?」
「ふーん」
ふむ……変化と化の違いは其処かな? 変化が変身で化がそのものになる、と。
「……まぁ良いか、レイエルは自由にしてて良いよ」
「……むぅ、ちょっと扱いが雑ケロ」
そう言って拗ねるレイエルを満足するまで撫で続けた。
◇
「はひっ……」
「さて、次は」
レイエルはどうやら気分が高まると粘性の液体が身体中から出るらしい。
ちょっと気持ち悪いヌルヌルは、メイド服の『清浄化』ですぐさま浄化された。
他にも、手足の指の間にほんの僅かに水掻きらしき物があったり、舌の形状や感触が僅かに人と異なる様であったが、特に気にする程の事ではない。
問題は無いのである。
続いて召喚するのは、雪精人。
「『召喚雪精人』」
そう唱えると、現れたのは真っ白な肌の美女。
鋭い剣の様な美しさを持つ美人さんである。
大きなクッションのやや上には、本体と思われる青い結晶の様な物があったが、それは直ぐに皮膚の下へと沈んで見えなくなった。
長くて白っぽい髪に同じく白っぽい瞳。
冷気を纏うその立ち姿は、雪女と言うに相応しい。
さて、服は……『雪精姫の精霊装』が良いだろう。換装させる。
「む……貴方は勝手な事ばかりするんですね」
「必要な事しかしないよ?」
「……知ってますよ」
プイッと視線を逸らした雪精人のお姉さん。
どうやら無理やり使役した事を根に持っているらしい。
美人さんの視線の先には痙攣しているレイエルがいた。
驚愕の表情を浮かべた横顔を見つつ、名前を考える。
……氷白が良いか。
「名前は氷白ね」
「え? あ、はい」
雪精姫の精霊装は、装着者が美人のお姉さんでも容赦なく少女風の装備であったが、細部はしっかりと変化しており、可愛らしい形で纏まっていた。
さて、撫でるか。
「え、ちょっ、私は——」
「よしよーし」
遠慮しなくて良いんだよ?
◇
「……ごめんなさい、白雪……私は汚されてしまいました……」
「ん? まだ足りない?」
「ひぅ!? だ、駄目です!」
「って言う割には抵抗して無いよ?」
「それは……その……」
「ふふふ、よしよし」
「んんっ……て、抵抗しても……無駄だからです」
「じゃあ……やめる?」
「…………」
「ふふ、よしよーし」
「……ふんっ」
頰を朱に染めて他所を向く氷白。
素直になれば楽になれるのにね。
「さて、次に行こうかな」
「あ……コホン、なんでも無いです」
次に召喚するのは、上位狼人。
魔法陣が現れ光を放ち、出現したのは赤い髪の青年であった。
勿論全裸だ。
すらっとした良い筋肉のつき方で、顔も中々、氷白みたいな美人だ。
頭には狼耳が生え、後ろには尻尾が見える。
ただし、僕を目に止めると、きゅるんと目付きが柔らかくなった。尻尾もぶんぶん振られている。
うむ、犬だな。
そんなわんこは、四つん這いになって僕に近付くと、僕を張り倒した。
「おっと、わ」
「くぅーん」
そのまま頰をペロンと舐め頬擦りして来る。
……ふむ、性質もそのままなんだね。
そんな考察をしていると、氷白がわんこを蹴り飛ばした。
「きゃいんっ!?」
「む?」
……ちょっと怒ってるっぽい?
氷白は驚いて目を白黒させているわんこに近付くと鋭い目付きで睨み、説教を始めた。
「貴方は……自らの行いを良く考えなさい」
「わ、わふっ!」
「人の身を持つと言うなら主人の使う言葉を解し話す事が出来る筈。もはや獣では居られないと言う事を理解しなさい」
「……わ、わん」
「私を馬鹿にしているのですか? ……はぁ、これでは主人であるユキも失望するでしょうね」
まぁ、特に失望する様な事は無いが、確かに、今のワンシーンは世間一般には見せられない絵面であったのは認める。
具体的には、『幼女と少女の中間くらいのメイドを押し倒して舐める全裸の青年』という絵面。
……うむ、犯罪臭がする。
「う……あ……んん゛っ……これで、いいか?」
「ええ、それと、四つん這いはやめなさい、主人の品格が疑われます」
「ん、すまない、そうする」
換装を使い、『悪魔紳士の紳士服』を装着させる。
猫背なせいで、ちょいワルなお兄さんみたいになってしまっている。
「背筋を伸ばして立ちなさい」
「う……わかった」
「人の形を取るなら獣の理は捨てなければなりません」
どうやら、お説教と言うか躾の様だ。
話しが長引きそうなので、二人を軽く撫でてから端に移って貰い、次を召喚に取り掛かる。
「先の様に、急に主人を押し倒す様な真似をしてはいけません」
「う……だめなのか?」
「駄目です。舐めるなど以ての外」
「うぅ……だめか?」
「駄目です」
「くぅーん」
「それも駄目です」
「う……」
わんこの名前は……ルーベルだな。
と言う訳で、氷白にはルーベル教育大臣に任命する。
頑張ってね。
◇
次は、ナーガに進化した蛇の子だ。
現れたのは上半身が美少女、下半身が蛇の魔物だった。
髪の色は銀、瞳は燃える様な赤色で……まぁ簡単に言うとサンディアと同じ様な感じである。
唯一違うのは胸部。
少女部分の身長に比べるとやや大きい、しっかりとした膨らみがある。
少女は僕の配下の中では初めて——
「あ、あの……」
——恥ずかしげに体を隠した。
「主人……ふ、服を……ください……」
おっと、あまりに常識的な反応だったせいで少し行動が遅れた。
服は……『大海の歌姫』と『不死魔道士のローブ』を換装させる。
名前は……ニュイゼかな。
「名前はニュイゼね」
「はい、主人」
「よしよーし」
「ふぇ!? ちょっ……あふぅ……」
よしよーし。
◇
長い下半身で僕をぐるぐる巻きにして気絶したニュイゼを、『念力』で倒れているレイエルの方へ運んだ。
すると、ニュイゼは本能からかレイエルの方へニョロニョロと進み、その頭に噛み付いた。
「はむ……はむぅ……」
「う、うぅ……けろ……」
「……さて、次に行こうか」
蛇だからね、蛇と蛙だからしょうがない。




