第16話 ユキの犬
第五位階中位
王都の壁の中では、ネロの見た目は少し過激なので送還し、ゴーレム達に南門の前へ集合する様に指示を出しておく。
兵士さん達に敬礼されて門を通り、自走式狼車ことリット便をちょっと豪華にした物に乗って城へ直行した。
街障壁では止められるかとも思ったが、引いているのがウルルだったからか止められる事は無く、城壁では僕が止める間も無く大きい方の門が開かれた。
『馬車……? を、お預かりします。』と言って寄ってきた兵士さんには断りを入れ、軽く側面を撫でてリッドを労ってから送還する。
『し、失礼しました!』と慌てて敬礼した兵士さんに『お勤めご苦労様です』と微笑みながら伝え、疲労回復の魔法を掛けてから下がらせた。
……かなり忙しいみたいだからね。
審判の間へ向かう道中に出会う人たちにも片端から疲労回復の魔法を掛けておく。
そんなこんなで多少時間を食いながら、審判の間に辿り着いた。
◇
「よしよーし」
「……ご褒美ぃ……わふぅ……♪」
「くふっ……わ、私は、私は屈してなど……んんっ……♪」
「……ハニー……もっと撫でて……?」
「……ユキぃ……」
マヤとメィミーの二人は、何故か審判の間の中へ入る事が出来なかった。
何かしらの条件を満たしていないからだろう。
そんな二人は今、一枚扉を隔てた向こう側で待機している。
僕の方はと言うと、愚図る桃花に此処で皆を守る様に説得している所だ。
レミナはお留守番のご褒美、ルカナはおまけ、復活したミニ白雪もついでに撫でておく。
「……あれ? 此処っていつからユキの犬小屋になったんだっけ?」
「ははっ、ユキは面白い物ばっかり持ってくるね」
「…………トウ、カ……なのか?」
「ふふふ」
とりあえずミニ白雪にも完全復活するまで此処に居て貰う。
戦力もレベル200台の3人がいれば……十分だとは言えないが僕が用意出来る常駐戦力としてはこれが限界だ。
他の戦力は周囲の探索やレベリングに費やさなければ更なる脅威に対応出来なくなる。
「それじゃあ皆、僕の留守は頼んだよ? 出来たらご褒美ね」
「はいぃっ! 頑張りましゅっ!!」
「ご、ご褒美とかそう言うのじゃ無いけど……この天才である私に任せたのは正解よ、何があっても守り抜くわ!」
「……うん、ハニー……寂しいけど……行ってらっしゃい」
「ユキ、直ぐに帰って来るのよ? 絶対だからね!」
「はいはい、それじゃあ行ってくるよ」
そう言うと、審判の間を後にした。
◇
南門へ向かう間に、ティアとも連絡を取る。
『ハイ♪ ユキだけど、聞こえる?』
『む! ユキか、聞こえるぞ』
ティアには、敵が来たら戦う前に審判の間に行く様伝えた。
会話の途中、ティアを思うと少し不安になったので、ティアだけを守る戦力としてアイをつける事にする。
今朝見たティアの鑑定結果を考えると、やはり心配でならないのだ。
エスティア・ルベリオン 霊人 LV83 状態:
霊人という種族がどう言う物かは知らないが、ティアのレベルはあまり高く無い。
レベルが低いと言う事は少なくとも同種のレベルが高い者より劣ると言う訳で、心配は尽きない。
装備の能力がやたらと高い様なので、レベル以上の力を持つ事は間違い無いが……兎に角アイをつける。
『それじゃあね』
『うむ、数日会えないと言うのは寂しいが……ユキ、無理だけはするなよ?』
『それはこっちのセリフだよ』
『ふふ、心配無用だ。……お、夫が帰る場所を守るのが、その……つ、妻の役目だからな!』
『うん……ん?』
『その、私自身もユキが帰る場所だ。私はユキの帰る場所を守り抜く。だから心配は無用だ』
『う、うん? ……まぁ、分かったよ。それじゃあまた、夜に連絡するね』
『うむ、行ってらっしゃい』
念話を切った。
……ううん? ……まぁ良いか。
南門に着くと、タク達は既に集まっていた。
メィミーの分かり辛い自己紹介を終え、早速外壁の外に出る。
其処には、土塊のゴーレム達が整列していた。
先にリッドを移動式リッドハウスに変形させ、タク達に乗るよう指示を出す。
僕が今からやるのは、ゴーレム達の改造である。
改造と言っても、テリトリーフラッグとユニオンリングを埋め込むだけの簡単な作業。
『念力』スキルを使い、100個の旗と指輪を100体のゴーレムに埋め込んだ。
軽く見てみると、期待通りの効果が出ている様なので、後は先の指示通り、王都を囲む様に警備して貰えば十分である。
そんな、軽い戦力増強の作業を終え、ゴーレム達に指示を出して解散させると、リッドハウスに乗り込む。
さて、出発だね。
「リッド、ゴー」
◇
全員が男子部屋と女子部屋に分かれると、夕食の為にログアウトした。
僕も、アヤと一緒に夕食を食べ終えると、寝る準備を済ませ、直ぐにログインした。
相変わらずアランは素早くログインし、キッチンで料理をしていた。
ちょうど良いので港町で買った香辛料を全て渡す。
「アラン、これあげるよ」
「ん? お、おお! サンキュー、ユキ!」
「うむ、美味しい夕食を期待しているよ」
「おう、任せとけ!」
早速香辛料を使い始めたアラン。
うむ、夕食は期待出来るね。
僕は皆が戻って来るまで配下の確認をしておこうか。
中庭へ出ると、リッドに指示を出してその空間を隔離した。
皆がログインしたら教えてね。と言うと、リッドはプルリと震えて応えてくれた。
インベントリから本を取り出し、ページをめくる。
誰から確認しようか?




