第14話 港町の確認
※180万PV達成
第五位階中位
桃花にちゃんとした性教育を施した。
それはもうしっかりと、理解するまで。
具体的にはマヤとメィミーが真っ赤になって煙を上げ始めるまで。
しかし、桃花には伝わらなかったらしい。
知恵熱か何かで煙を上げそうな顔をした後、もう良いやと言わんばかりに考えるのを放棄した。
『百回聞くより一回見る、百回見るより一回やる、よ! ……ハニー、私に、教えて?』そう言って桃花は頬を赤らめ薄着の服を脱ぎ始めた。
途中、真っ赤になりながら視線を逸らし『裸になるのは恥ずかしいけど、ハニーと私は夫婦だもん、私、頑張るわ……!』とか言い出した桃花に夫婦の営みのなんたるかを懇々と説明した。
具体的にはマヤとメィミーが部屋の隅で正座して壁を見ながら素数を数え出すくらい。
……多分マヤの方はノリでやってたと思う。
どうやら夫婦の話は理解出来たらしい桃花は、酷くショックを受けた様な顔で呟いた。
『そん、な……う、嘘よね、ハニー。ハニーと私が夫婦じゃないなんて……』
『真実だよ?』
『う……嘘よ! そんなの信じない! ハニーと私は……!』
『現実を見ようか』
『う、嘘よ……嘘……だってハニーと私は——』
桃花は今にも死にそうな目になって地面にへたり込むと、何やらブツブツと呟き始めた。
『ハニーと私は愛し合ってるの。私のお腹にはハニーの子供だっているんだから、だから夫婦じゃないなんて嘘。……ハニーは恥ずかしがりやさんなのね、大丈夫、私は分かってるから、愛してるわ、ハニー。……そうよ、愛してるの。だからそんな意地悪言わないで? 夫婦じゃない? 夫婦よ! ハニーと私は深い絆で結ばれてるの! ……夫婦じゃないなら夫婦になれば良いだわ。……でもどうしたら良いのかしら? ……そうよ、ハニー以外を無くしてしまえば良いんだわ! そうすればハニーと私は二人きり……あぁでもお母様は消せないわ、それじゃあ駄目よね。ならどうしたら良いのかしら? そうだわ! ハニーにとって私が全てになれば良いのよ! ハニーの手足を——』
どういう訳か桃花の好感度が一瞬で依存レベルまで振り切れていたらしく、桃花が奇妙な壊れ方をしてしまったので、此処で軽いお話しからお話しに切り替えた。
◇
「ハニー、香辛料のお店はこっちよ」
「ふふ、ありがとう、桃花」
桃花とのお話しは上手く収まった。
後8秒と言うのは、押し倒されて10秒でアウトと言う事らしい。
桃花はどうやら『夫婦』や『母親』に強い願望と言うか憧れの様な物がある様だ。
そして、僕の気配が子供の頃に好きだった物に似ていると言う事も。
探ってみた所によると、桃花は精霊の一種らしい。
そして、どうやら桃花はマレビトの気配を察知する事が出来るのだろう。
「ふふん、ハニーが喜ぶ事をするのは当然よ、だって私はハニーの——」
そんな桃花とのお話しは上手く行ったのだ。
「——犬なんだもの!」
「うん、そうだね」
うん。
「ご褒美に撫でてあげる。よしよーし」
「く、ぅん……は、ハニー勘違いしないでね? ご褒美が欲しくてやってるんじゃ無いのよ? ハニーが喜ぶからやってるのよ?」
「はいはい、よしよーし」
「ん、んぁ……ち、違うんだからね……! ハニーの為なんだからぁ……」
桃花の手触りが良い頭を撫でる、すると、ふわりと桃の香りが漂って来た。
桃花と言うだけある、僕的には桃は好きなので桃花の印象は悪く無い。
「そっか、じゃあご褒美はやめにしよう」
「あ……そ、そんな…………ハニー……」
「よしよーし」
「は、ハニー……!」
うむ。
「お、おのれ、新参の癖にユキ様とぉ……! う、羨ましい……っ!」
「ん、あの撫で撫ではヤバイ、常習性がある」
「うぅ……う? 待ってください、あなた、ユキ様に撫でて貰った事がある様な口振りで——」
「ん、さいこー」
「……そんな、私なんてまだ一度も……」
「ん、人生損してる」
「くっ……悔しいですぅ……!」
うん、あっちも話が纏まった様なので、早速香辛料のお店を覗いてみよう。
メィミーは後で撫でる。
香辛料のお店の中は静かだった。客引きの声すら無い。
しかしそれも仕方ないだろう。今の時代はそう言う時だ。
闇との決戦でルベリオン王国は疲弊し、やたらとお高い香辛料に手を出している余裕がある者は少ない。
その上、海には強力な魔物が発生する様になり、交易も途絶えている。
適当に砂糖と赤くて辛い粉とカレーぽい風味のスパイスを幾らかに、何種類かのハーブを大人買いした。これで現金はゼロである。
次の目的地は海岸、一応被害状況の確認だ。
◇
海岸に到着した。
港町は全体的に活気が無く、海岸近くの市場は閑散としていたが、桃花が通ると手を振られたり声を掛けられたりした。
話を聞くに、桃花がこの街を津波から救ったらしい。
僕、マヤ、メィミーの3人は、桃花の仲間である白羅、空華、禅鬼の3人と判断されている様だ。
道中気の良いおじさんやおばさん、お兄さんやお姉さんに焼き魚や干物、貝や海苔っぽい物を渡された。
港には特に大きな被害は見当たらなかった。
船もしっかりと係船柱の様な物にロープで止められており、流される事も無かったらしい。
後は津波自体を桃花が防いでいたので、被害がほぼゼロになったのだろう。
活気が無いのは海が酷く荒れたからか。
とりあえず、褒めて欲しそうな桃花と、ついでにマヤ、メィミーの3人を纏めて撫でておく。
「よしよーし」
「こ、これが天使の力か……っ! ……はぅ……」
「……ん、ユキ、もっと撫でる」
「んー? よしよーし」
「あぁ……! ハニー、止めちゃ嫌……」
「んー、よしよーし」
当初の目的である桃花の説得と回収が終わり、被害の確認も終わったので、此処でやる事はもう無い。
メィミーもただ新しいフィールドを探しに北上していただけらしいので、全員で王都に戻る事が出来る。
今のウルルなら四人乗りも可能だ。
ただ、かなり窮屈だと思うので、オルトロスに進化したネロとウルルで分乗しようと思う。
3人が満足するまで撫で続け、その後、特におかしな事もなく港街の外へ出た。
「『召喚ウルル』『召喚ネロ』」
召喚されたネロは、頭が二つある大きな犬であった。
如何にも強そうである。
各々の乗員は、ネロを見て直ぐに飛び付いたメィミーと、桃花に遠慮したらしいマヤがネロに乗り、僕と桃花がウルルに乗る事になった。
時刻はまだおやつの時間が過ぎたくらい。
王都に到着しても、集合までほんの僅かに時間が余るだろう。
……久しぶりにギルドに行こうかな?
◇
移動の途中
桃花が
——漂流者を見付けた。




