第12話 魔眼の使徒
第五位階中位
「……次、何処、行く?」
元遺跡の街から王都へ向かう途中で、マヤが僕の上半身に指を這わしながら聞いて来た。
「次は王都、その次が北の港町で、夜は南の遺跡かな。一応長期で潜るつもりだから、セイト達に予定を聞いておいて」
「……分かった」
分かったと言いながらも、僕の体を弄るマヤの指は止まらない。
とりあえずアランとタク、セイト達にメールを送った。
ざっと予定を書き綴り、集合時間と集合場所、参加出来るかどうかの質問を書いて送信。
もちろんマヤにも送ってある。
マヤはほんの数秒停止すると、『……参加、する』と呟き、僕のうなじに顔を埋めた。
「……良い匂い……柔らかい……あったかい……可愛い……優しい……気持ち良い…………欲しい」
「……あげないよ?」
「……大丈夫、ユキは押しに弱い」
「そんなことは無いけどね」
「……痛いのは最初だけ、直ぐに気持ち良くなる」
……まったく、マヤは適当な事ばっかり言うんだから困る、僕が押しに弱いだなんて、そんなことは有り得ない。
マヤは放っておこう。
「……好きにしたら?」
「……ん、最初から、そのつもり」
……むぅ。
◇
王都に到着すると、早速ゴーレム部隊配置を開始した。
先ず最初に森から出た足で東の草原へ向かい、ボコボコになっているそこを血刃で一気に整地した。
草原は元より大分低くなり、出て来た大量の土を全てインベントリにしまった。
続いて、その土を使ってゴーレムを生成する。
品質の高い魔石を大量生産してあるので、手早く土塊のゴーレムを100体生成した。
それらをソルジャー達に率いて貰う。
ソルジャー1体につき3体のゴーレムを付け、余りの10体は東西に半分ずつ配置する。
ソルジャー達は各門に5体ずつ配置し、残りの10体を外壁の外側で警邏させる事にした。
まぁ、警邏と言っても外壁の上に兵士が配備されている様なので、発見自体は兵士さん達の方が早いだろう。
ゴーレム達は敵が来た際に直ぐに対応する為にいる。
そして、北には『ゴーレムパラディン』を、南には『ゴーレムスカーレットナイト』を配置した。
勿論、この事は兵士の隊長らしき人物に報告してある。
更に上の人物へは事後承諾になるが……まぁ、問題無いだろう。
取り敢えずの防衛戦力は此処まで。
少々心許ないが、次へ移ろう。
「……王都が……包囲された……!」
「……」
マヤは放置。
◇
魔物が出る海岸にそって北上し続けると、港町が見えて来る。
まったく整備されていない海岸は進み辛く、足場が安定しないので戦い辛い。
そんな道とも言えない場所をウルルに乗って駆けていると、遠目に人影が見えて来た。
その人影は黒っぽいフード付きのローブを羽織り、ふらふらとしながら港町の方へ進んでいる様であった。
……声をかけた方が良いかも?
「ウルル」
「ウォン」
「?」
ウルルは僕の意を汲んで、ローブの人物の元へ走ると、その眼前で華麗に停止した。
ウルルが横を駆け抜けた風圧でフードが捲られ、その人物の顔が陽光の元に晒される。
黒く長い髪。僕と同じくらい白い肌。
身長は僕と同じくらいだが、体型はしっかりと女の子らしい肉付きがある。
その瞳の色は、赤色と青色のオッドアイ。
そして、その顔には——
——見覚えがあった。
……恵ちゃん?
女の子はヘテロクロミアの瞳で僕を見上げ、その目を大きく見開いた。
小さな唇が震え、聞き覚えのある声が溢れる。
「——ユキ……様……?」
『ユキ様』なんて言う風に僕を呼ぶのはメグミちゃんくらいの物だ。やっぱりメグミちゃんだろう。
「はっ!? あ、あのっ!」
「?」
「体、見ててくださいましぇんか!」
「うん」
急にもじもじし始めたメグミちゃんは、何やらログアウトしたいらしい。
取り敢えず頷いておく。
「あ、ありがとうございましゅ! 直ぐに戻ります!」
「うん、ゆっくりで良いよ?」
何が何やら分からないが、とにかく急ぎの様だ。
取り敢えず休憩にしようか。
◇
メグミちゃんは、宣言通り直ぐに戻って来た。
「ふふ、ふふふ、ふははははは……待たせたな! 銀の天使よっ!」
「ううん、待って無いよ?」
1分掛かっていないんじゃ無いかな? その間にマヤにはクラスメイトの妹と説明してあるが。
「わ、わりぇは魔眼の使徒、メィミー!」
メグミちゃん改めメィミーは、普段とは違う言葉遣いで名前を名乗り、右の赤い目にVサインを合わせた。
換装スキルを取得している様で、唐突に黒い眼帯が現れた。
それと同時に左手でローブを払い、はためかせる。
……どうしちゃったのかな?
「定命の器で巡り会うは我らの運命なり、今こそ友好の盃を交わそうぞ!」
《フレンド申請:個体名『メィミー』》
「うん、良いよ」
メィミーをフレンド登録し、分かり辛い喋り方のメィミーから話しを聞くと、どうやら昨日の夜から今まで北上し続けて来たらしい。
さっきはトイレにでも行ったのかな?
ともあれ、メィミーはマヤともフレンド登録し、ウルル便は3人乗りになった。
尚、僕は何故かメィミーとマヤに挟まれる様に真ん中になり、後ろは全身でしがみつくマヤ、前は騎乗が初めてのメィミーをしっかりと抱き締めて支える僕、とサンドイッチ状態だった。
「ユ、ユキ様……!」
「?」
「……」
ウルル便は、時折メィミーがブルっと震える以外は特におかしな事もなく、昼食の時間を少し過ぎた頃には港町が見えて来たのだった。




