第6話 魔王軍、始動?
第五位階中位
小さな声で酷いと呟いたマヤ。
まぁ、実際酷いと思うが、それよりも僕はマヤが回収した迷宮核の様な物に興味がある。
「マヤ、先程回収した物を見せてください」
「……ん……んん?」
しょんぼりしながらメニューを開き、インベントリを操作し始めたマヤが、唐突に目を見開いた。
「あった」
そうマヤが呟き何かをすると、虚空から金の宝箱が現れた。
……如何やら自動で回収される仕様になっていたらしい。道理で弾かれた訳だ。
「山分け」
表情はあまり変わって無いが、やや興奮気味にそういうマヤ。
まぁ、僕は一度も戦って無いので貰うつもりは無い。
「要りませんよ」
「じゃあこっち」
そう言ってマヤが取り出したのは迷宮核の様な物。
僕の拳と同じくらいの大きさの透明な球体である。
「では有難く」
「ん」
……うん、くれるんだから貰っておこう。
貰えるものは貰えって御先祖様が言ってるからね。
早速解析に取り掛かる。
迷宮核 品質? レア度? 耐久力?
備考:売却用。
鑑定結果は散々な物であった。
と言うか、本当に迷宮核なら備考欄の売却用と言う表記はおかし過ぎる。
そもそも、僕がこれを迷宮核と断定出来ない理由は、迷宮内部での魔力の流れに違和感があったからだ。
端的に言って、迷宮からの迷宮核への魔力の流れが一定過ぎる。
迷宮との接続は為されているものの、その間に何がしかの遣り取りがあった気配が微塵も感じられ無かった。
更に付け足すと、迷宮の名前がおかしい。
訓練窟と言うからには、一度攻略されると沈黙する様では話にならない。
そんな訳で、中身を確認すべく弄り回していくと、疑念は確信に変わった。
これ、ハリボテだ。
厚い防壁を解体して中に刻まれた術式を確認すると、其処にあったのは魔力を吸収する術式と放出する術式のみ。
複雑怪奇な術式は一切見られなかった。
インベントリに仕舞うと、正体を看破した影響か名前が迷宮核から偽装核に変わっていた。
まぁ、術式を書き込める余白はたくさんあったし、物自体は同じ魔結晶の様だから僕が有効活用しよう。
終わった所で視線をあげると、広場の結晶板に映像が流れ出した。
如何やら——
「50万だった」
——マヤが映像を撮ったアイズストーンを売却したらしい。
……相場が如何なっているのかは知らないが、迷宮攻略の報酬が五千だった事を考えると、その迷宮を攻略している動画が100倍もするのは……どうなんだろう?
……いや、出てくる魔物の種類や構成、迷宮の始まりから終わりまでの踏破情報が含まれている訳だし、それくらい……するかな?
映像はマヤがトコトコ歩いている所が映されており、その後ろで僕が入手アイテムを検分している所が映されている。
『んく……んく……ぷは……はっ、はっ……』
『……? ……!?』
『んく……んく……』
『!? ……!?』
『ふぁ……甘い……』
『…………』
「…………」
複数のクリスタルプレートのうち二つに二種類の映像が映され、一方はハイライト、もう一方は最初から最後まで通しで映されている様だ。
何故ハイライトの方に最初の歩いている所が映っているのかは知らないが……特に50万の価値がある様には見えない。
まぁ、考察するのは後にしておこう。
「マヤはこの後どうする?」
「…………買い戻す?」
「?」
「……何でもない。ついてく」
マヤはまだまだ時間があるらしい。
ならばどうしようかと思いつつ地図を確認すると、街の平面図は全て出たが、八割以上が灰色になっていて、その部分の情報が表示されない事に気付いた。
新しく解放された属性迷宮の場所や各商店の場所は記されているが、灰色の部分は地形の情報しかない。
……街の中を見て回るか。
そうと決まれば即行動すべし、とは言え、その間配下を遊ばせておくのも勿体無いので、地図上に表記されている属性迷宮がある広場に派遣しようと思う。
幸い、此処から遠く無い広場に四つとも纏めて存在しているので、各迷宮に戦力を投入しよう。
火の迷宮には相性の良さそうなゴーレムソルジャーとゴーレムガーディアン、ゴーレムスカーレットナイトを派遣する。
スカーレットナイトが『アイテムボックス《大》』のスキルを持っており、ゴーレムガーディアンが『アイテムボックス《中》』のスキルを持っているので、ドロップ品の心配は無い。
風の迷宮には新入り狼ズとワンワン軍団、スノーウルフロード、ネロ、ウルルを派遣する。
ウルルが『インベントリ』のスキルを持っているのでこちらもドロップ品の心配は無い。
水の迷宮は、スライムエンペラーズの最初から分裂している状態とアイを送る。
こちらもドロップ品の心配は無い。
最後の土の迷宮には、新入りアニマルズ含む派遣できる全員を送る。
ドロップ品回収の心配があったので、メロット、イェガ、リットの3匹に『アイテムボックス《大》』のスキル結晶を使って取得させた。
これで心置きなく探索が出来ると言う物だ。
「……魔王軍が……動いた…………」
「まだ言うか」
戦慄したように口元に手を当て呟いたマヤ。
なんだかんだ言って随分と打ち解けて来た様に思う。
◇
《【探索クエスト】『火の迷宮』が発令されました》
《【探索クエスト】『風の迷宮』が発令されました》
《【探索クエスト】『水の迷宮』が発令されました》
《【探索クエスト】『土の迷宮』が発令されました》
【探索クエスト】
『火の迷宮』
参加条件
・『火の迷宮』に入る
達成条件
・『火の迷宮』を踏破する
失敗条件
・無し
達成報酬
・スキルポイント3P
・魔力:貨幣10,000
【探索クエスト】
『風の迷宮』
参加条件
・『風の迷宮』に入る
達成条件
・『風の迷宮』を踏破する
失敗条件
・無し
達成報酬
・スキルポイント3P
・魔力:貨幣10,000
【探索クエスト】
『水の迷宮』
参加条件
・『水の迷宮』に入る
達成条件
・『水の迷宮』を踏破する
失敗条件
・無し
達成報酬
・スキルポイント3P
・魔力:貨幣10,000
【探索クエスト】
『土の迷宮』
参加条件
・『土の迷宮』に入る
達成条件
・『土の迷宮』を踏破する
失敗条件
・無し
達成報酬
・スキルポイント3P
・魔力:貨幣10,000
迷宮の攻略が始まったらしい。皆が移動する短い間だが、分かった事がある。
地図の灰色になっている部分、そこはフィールド制限の壁に阻まれて入る事が出来なかった。
迷宮を攻略して行けば徐々に解放されて行くんだろう。




