第4話 鍛錬島
※170万PV達成
第五位階中位
街へ向かう……前に、軽く遺跡の様な物の調査をしてみる事にした。
軽く見回してから、グルリと後ろへ回り込んでみると、其処にあったのは固く閉ざされた扉。
左右に窪みがあって何かを嵌め込める様になっており、調べると結界が張られている事が分かった。
解除出来るかな、とより深く潜り込んでみたが、直ぐに無理だと分かる。
どうやらフィールド制限と似た様な力が使われているらしく、鍵になるアイテムが無いと開ける事は出来ない様であった。
「じゃあ、行こうか」
「ん……」
ここで出来る事はもう無い、さっさと街の方へ向かうとしよう。
◇
遺跡から街へ向けての道は、長い石の階段になっていた。
森の雰囲気も似ているし、何となく鈴護り神社を思い浮かべてしまうのは致し方なし。
道中魔物との戦闘は一度も無く、周辺を探っても強い魔物の気配を感じ取る事は出来なかった。
どうやら弱い普通の動物や昆虫はいる様だが、どれも襲い掛かってくる様子は無い。
そんなこんなでウルル便は街に到着し、開いていた門を通過してその中へ入った。
街の中は静かだった。
いるのは複数のゴーレムのみ、色々なお店がある大通りを真っ直ぐ進んでいると、広場に到着した。
広場は、真ん中に祭壇の様な物があり、そこから少し離れた所に、祭壇を囲う様に複数の半透明な板がある。
その更に外側には何故か椅子や机が大量に設置されており、そして一番外側には料理や飲み物を販売しているらしき屋台が並んでいた。
全くもって訳が分からないが、とりあえず中心の祭壇を調べてみよう。
祭壇へ近付き観察してみると、それが転送装置である事は直ぐに分かった。
真四角の台座の中央に、六角形の低い柱があり、それに触れると転送される様になっている。
飛ばされる場所は『訓練窟』だろう。広場の入り口にある看板にそう書いてあった。
それじゃあ入ってみようか。
「マヤ、行くよ」
「ん?」
マヤに一声掛けてその手を握り、六角柱に触れた。
一瞬光に包まれ、次の瞬間に見えて来たのは、ゴツゴツとした岩肌。
どうやら洞窟の中らしい。
《【鍛錬クエスト】『訓練窟』が発令されました》
【鍛錬クエスト】
『訓練窟』
参加条件
・訓練窟に入る
達成条件
・訓練窟を踏破する
失敗条件
・無し
達成報酬
・スキルポイント3P
・魔力:貨幣5000
周辺の気配を探ると感じられるのは弱い気配、どうやら出てくる魔物はあまり強く無い様だ。
光源も、壁が発光している様で明るい。
これならマヤ一人でも十分突破出来るだろう。マヤの実力を見る良い機会だ。
「それではマヤ様、貴女の力量を問わせていただきます」
「ん? ……分かった」
教官モード、もといスノーさんになりつつ振り返ると、マヤは何か球体状の物を宙に浮かせてそれをじっと見つめていた。
さっと視線だけで確認すると、それはアイズストーン。
仕舞うだけしまって確認はしていなかったので、マヤが先頭を歩き始めたのを機に纏めて情報の確認をする事にする。
先ず、件の『アイズストーン』。
備考欄から分かる情報は、鍛錬島の迷宮内部でしか使用出来ないと言う事。
使用後は宙に浮き、自動で追尾してくる。
その効果は、映像を最大1時間分撮って自動で編纂する機能を持った使い捨てアイテムの様だ。
インベントリ内で起動すると、編集後の動画と編集前の1時間の動画を見る事が出来て、要するに自分達の戦いの様子を後で確認して反省したりするのに使えるアイテムと言う事だ。
また、備考欄の最後の方にちょろっと書かれている情報によると、内容によって売却額が変わるとの事。
鑑定で取得出来る情報量が多い理由は、神ないしそれに準ずる存在がわざと制限を掛けていないからだろう。
続いて『ライブクリスタル』。
これはアイズストーンと同じで使用すると宙に浮いて自動追尾してくるアイテムで、効果も同じく映像を撮る物。
ただし、このクリスタルは使い捨てアイテムでは無く、使用時に迷宮外部にあるクリスタルプレートへ映像を流す仕様であるらしい。
要するに他人に映像を見せる為のアイテムだ。
……少なくとも僕は使わない。
次は、『エスケープクリスタル』と『エスケープストーン』。
これは、名前から分かる通り迷宮から脱出する為のアイテムだ。
此方は鍛錬島以外でも使えるらしく、ストーンの方が使い捨て、クリスタルの方は魔力充填式の物らしい。
魔力充填のスピードは遅く、凡そ丸一日で使用可能になる様だが、『魔力譲渡』のスキルで直ぐに再使用可能になるみたいだ。
次に、『ニュートゥリションタブレット・ケース』。
直訳すると、栄養錠剤の入れ物だ。
取り出したそれは手のひらサイズの板状をしており、表面についている小さなボタンを押すと角の部分が開いて、振るとそこから米粒程の大きさの錠剤が出てくる。
備考欄には最高品質の携帯食料と書いてあるので口に含んでみると、完全に無味無臭だった。
鋭い犬歯で噛むとコリッとした歯応えと共に砕け、ゆっくりと周囲の唾液に溶けて行く。
その液体を飲むと、それは喉に絡みつくこってりとした一種異様な物体になっており、味は無味無臭から打って変わって甘くまろやかでコクのある味わいになっていた。
ただし、これは飲み下して使う物であったらしく、蒟蒻の様なゼリーの様な、或いは半熟卵の黄身、はたまたみたらし団子のタレの様な、トロッとしてプルプルしている物体が後から後から湧き出して来た。
成る程、これなら腹持ちも良さそうだ。と思考しつつ、割と慌てて飲み込んでいくが、少し、というか大分、思っていた以上に液体が膨れ上がっていき、次第に息が持たなくなって来た。
口から溢れ落ちない様に顔を少し上向けて、荒い呼吸を繰り返す。頰を涙の雫が伝った。
こうなった原因はなんと無く予想がつく、どうやら僕の体はこの液体を人肉かそれに近い物と判定したらしく、唾液が過剰分泌されたからだ。
改めて思う……うちの家系は食人鬼か何かかっ。
通常なら唾液が無くなって止まる筈のそれが、供給される唾液を吸い取り増産され、それに反応して唾液が分泌されると言う悪循環。
結局、錠剤が完全に溶け消えるまでそれは続いた。
その後ステータスを確認すると、空腹度のゲージが最大まで回復されており、程よい満腹感を感じられた。
……次飲む時は噛まない様にしよう。
さて、気を取り直して次、『マナアブソーブクリスタル』。
これは単純に、周囲の空気中から魔力を吸収して貯めておける代物だ。
大きさは米粒よりやや大きい程度で、普通の人なら落としたら見失ってしまうだろう。
貯めた魔力はマナシール系のアイテムに接触させると移す事が出来る様だが、どうにもロスが多い。
最後は、『マナシールブレス』と『マナシールリング』。
マナシールブレスは白っぽい半透明の物質で出来ており、魔力を大量に込める事が出来る道具らしい。
その最大保持容量は厳密には言えないが魔結晶にも匹敵するだろう。
対するマナシールリングは……これ、どうやら神結晶の加工品らしい。
僕程度では全く推し測れない程の保持容量がある様だ。
また、かなり複雑な術式が刻まれているが、出したり入れたりは自由に出来る様で、僕的にはかなり使えるマナタンクを入手した形になる。
ただ、今の僕の能力的に、一つの物質から魔力を吸収するよりも同時に複数の物質から魔力を吸収した方が多く取得出来るので、こればかりに頼っては後で痛い目に合うかも知れない。
試しに『マナアブソーブクリスタル』を『マナシールリング』に錬成したら……綺麗にくっ付いた。
それこそ、元からそれを想定しているかの様に綺麗に。
効果も思惑通り、自動で周囲の魔力を吸収し、殆どロスなく『マナシールリング』に供給している。
マヤのも後でくっ付けてあげよう。




