第3話 やる事は山の如し
第五位階中位
ウルル便に乗って移動中に、これからやるべき事、やれる事を整理して行く。
先ずは王都防衛の為の戦力を用意する事。
次に吸血鬼達との約束通り、地下墳墓の浄化をする事。
最後に、街障壁内部にある合成獣がいた屋敷の調査、獣っ子達の住居兼仕事場の開拓。
この三つは、なるべく早くにやっておくべき事だ。
続いて、
・北の港町の確認。
・南の湿地帯と街の確認。
・西の迷宮跡地の先の確認。
・東の海の先にある島々の確認。
・鉱山街にいる眷属化してしまった二人の処遇。
・アンデット組との一時合流。
・東の草原の整地。
・解放されたらしい謎の島の調査。
・霧の森、妖精の森の奥に行って妖精さん達と戯れる。
最後の奴はまぁ、暇になったらにしよう。
輸送中に各配下へ指示を出しておく。
アンデット組にはゆっくりで良いので地底湖まで戻ってくる様に。
北の森に放った子達には、西の森の遺跡街まで移動する様に。
拠点の島に放った子達には、街まで移動する事、戦士ゴーレムにも同じ命令をし、ワーカーゴーレムには逆に狩りをする様に指示を出した。
これで配下の回収がスムーズに行くだろう。
◇
街の西側は、他と打って変わって人で溢れていた。
昨日の夜に烏賊の襲撃があったから、今朝は避難した住民がまだ集まったままなのだろう。
他にも、悪魔の残党がいないか調べる為と言うのもある様だ。
そんな、人で溢れる街の中をウルルに乗って移動する。
ウルルが一歩歩くと人波が割れていく。
そうして真っ直ぐ街道を進んでいると、人に押し潰されているマヤを見つけたのであった。
取り敢えず引っこ抜いて回収した。
今は無言のままウルルの背中に乗り、僕に抱き付いている。
「僕ちょっと今からやる事があるんだけど」
「……暇、だから付いてく、ユキに」
「そう」
まぁ、マヤなら特に問題は無いかな。察しも勘も良いからね。
そんなこんなで街中を抜け、門前にいた小隊規模の兵士さん達に敬礼されつつ門を通過し、無人の草原と川原を通って森に入った。
その間、マヤは頻りに僕の胸元を触り、揉みしだき、そして項垂れていた。一体如何したと言うのか。
元遺跡の街に到着した。
草原ではスライムをスルーし、森の中では一度も魔物と遭遇せず、一切の戦い無く到着した。
ウルルに乗ったまま無人の街を進み、転移門の前に来たところで起動の為の魔石が無い事に気が付いた。
しかしそこはそれ、祭壇に直接僕の魔力を注ぎ込む事で何の問題も無く起動する事が出来た。
さて、転移するか。と拠点の島を念じようとした所で、目の前にメッセージが現れる。
《
選択可能エリア
・スノー
・鍛錬島
》
「ふむ……マヤ、項垂れて無いでいくよ」
「——かしい……リアルモジュール? ボクっ娘なのに……」
さっきからずっと訳のわからない事をブツブツ呟いているマヤ、戻って来るまでまだまだ時間がかかりそうだ。
取り敢えず鍛錬島は後にして、拠点であるスノーを選択する。
円形の舞台に魔法陣が現れ、強烈な光を放つ。
それが消えた時、目の前には整列するゴーレム達と新入りアニマルズが立っていた。
全員を軽く一撫でし、収納袋を回収してから送還する。
一々移し替えるのが面倒だったので収納袋をインベントリに入れると、収納袋を選択する際に新しい項目が現れる事に気付いた。
その項目はインベントリと同じで複数のアイテムが入っており、間違いなく収納袋の中身であった。
それを取り出したりインベントリに移し替えたり出来ると言う事が分かった。
これはどうやら普通の袋や箱、壺なんかでも同じ事が出来る様だ。『整理』や『分類』スキルのおかげだろうか?
その後、目を見開いて硬直していたマヤを写真を撮ってから回収して元遺跡の街に戻り、古参の皆が来るまで魔石の合成をして過ごした。
「……ユキがラスボスだった?」
何を言うかねこの子は。
謎の新説を唱え始めたマヤを放置して、僕は魔石を合成し続けるのだった。
◇
「……ユキがラスボスだった」
古参組を回収すると、マヤは天啓を得たかの様に謎の呟きを漏らした。
そんなマヤの手を引き、少し鍛錬島を見に行ってみる事にした。
「——と、言う訳で転移」
「魔王に連れてかれる」
失敬な、だれが魔王か。
強い光が薄れて行くと、目の前に現れたのは——
「へぇ……広いね」
——大きな街だった。
《【鍛錬クエスト】『鍛錬島の修行者』をクリアしました》
《【クエスト】『一番最初の挑戦者』をクリアしました》
【鍛錬クエスト】
『鍛錬島の修行者』
参加条件
・鍛錬島に入る
達成条件
・鍛錬島に入る
失敗条件
・無し
達成報酬
・道具『マナシールブレス』
・道具『初級ポーション』×5
・魔力:貨幣10,000
【クエスト】
『一番最初の挑戦者』
参加条件
・一番最初に鍛錬島に入る
達成条件
・一番最初に鍛錬島に入る
失敗条件
・無し
達成報酬
・防具『マナシールリング』
・道具『マナアブソーブクリスタル』
・道具『ライブクリスタル』
・道具『アイズストーン』×5
・道具『ニュートゥリションタブレット・ケース』
・道具『エスケープクリスタル』
・道具『エスケープストーン』×5
・魔力:貨幣100,000
今いる場所は、ピラミッドの様な建造物の天辺で、この遺跡の様な物は所謂四角錐台と言う形をしていた。
そんな高台から見える物は、結構な大きさの円形都市。
所々に広間が作られており、その中心にはいくつか祭壇の様な物がある。
街自体にはレジャー施設の様な物が散見されるので、鍛錬と言うか遊び場と言った感じだ。
街の先には海があり、周りには草原と森がある。
そして、僕達の背後にある山が、その腕で包み込む様に裾野を広げて島を覆っていた。
中々の絶景である。
「……よし、帰ろう」
「え?」
「冗談だよ」
「……え?」
手に入れた指輪を装着し、階段を降りようとした姿勢で停止したマヤが、なんで!? と言わんばかりに此方へ振り向いたので、進んでみる事にした。
まぁ、シスターアルメリアとビャクラが悪魔の軍を倒すだけで終わりにする筈が無い、それでも悪魔以外を倒していないと言うのなら、王都周辺には敵がいないのだろう。
そして、彼女らが気付かない、または気付けない距離を一瞬で詰めて来る敵なら、僕がいた所で無意味だ。
と、言う訳で、マヤに付き合って少し調査するくらいの時間はある。
「マヤ、行くよ」
「う、うん……」
ぼーっとしていたマヤに声を掛け、街へ向かって歩き出した。




