AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 六十五
第三位階上位
思考を停止していたのは一瞬の事。
あぁ、そう言えばこいつ、喋れなかったな。なんて、どうでもいい事を考えた次の瞬間には走り出していた。
騎士は光の粒子にならなかった。
それはつまり、死に戻りでは無く、確かに死んだと言う事。
騎士は俺に自らの心臓を託した。
何の為に?
そんな事は決まっている。
騎士には命を賭して戦い、命を捧げて成そうとしている事がある。
——双頭竜の撃破。
その為に、『神造・殲滅弓騎兵』を起動する。
俺はそれを託された、なればそれを成す事が死んだ騎士の手向けになるだろう。
騎士を悼んでいる暇はなかった。
◇
「っ! 敵かっ!」
照明に照らされた廊下を走っていると、大聖堂の出入り口で小さな影が動いたのが見えた。
すわ、黒蜥蜴の生き残りかと武器を構えたが、よく見ると——
「コケッコッ!」
「お前かよっ!」
——ニワトリだった。
出入り口の影からそっと中を伺う姿は余りにも人間じみていて、あぁ、こいつにも命があるんだよな、と思わせられた。
ニワトリは強い、だが、騎士程では無いだろう。
戦力になるからと言ってついて来てくれと言える気にはならなかった。
「危ないから森に帰りなっ」
「?」
そう言いつつ横をすり抜けると、ニワトリは首を傾げた後、俺について来た。
そっと空を見上げると、いつの間にやら暗雲が立ち込め、その中央には漆黒の双頭竜が悠然と浮遊していた。
双頭竜は二つの首を動かししきりに辺りを伺っているが、聖堂から出て来た俺に気付いたらしく、四つの瞳が全て俺の方へと向けられた。
こんなのが空にいると言うのに、このニワトリに危機感と言う物は無いのか。
何時もみたいに物凄いスピードで走って逃げれば良いのに。
ニワトリはあろう事か、物凄いスピードで走ると俺の頭に飛び乗った。
「おいっ!」
「コケッ!」
「ちっ、知らねぇぞっ!」
もはや、事ここに至ってニワトリに構っている暇は無い。
空では双頭竜が二つの顎門を開き、周辺一帯の暗雲をそこへ収束させていた。
空を覆っている雲だと思っていた物は、奴が発する黒い靄だった訳だ。
ほんの一瞬の内に双頭竜周辺の厚い雲が顎門へと収束され、その口腔は隙間から刺した月の光を歪め始めた。
今にもブレスが放たれ様とする中、祭壇へと辿り着いた俺は、その中へ赤い結晶体を放り込んだ。
間に合ったか?
そう考えた俺の前に現れた物は——
——非情な現実だった。
《『神造・殲滅弓騎兵』稼働可能まで残り〔99,999,999,978/100,000,000,000〕》
——足りない。
ほんの僅かに、足りない。
ふと、蘇るのは赤の騎士が魔石を取り出したシーン。
胴体から手が引き抜かれた時、魔石の破片らしき物がパラパラと散らばった。
あれを掻き集めていたら足りたかもしれない。
刹那の間に行われた思考、その後悔は正に後の祭り。
もはやこの状況では手遅れでしかなかった。
——ブレスは放たれた。
高空から放たれる滅びの閃光。
ほんの一瞬の間に俺に出来た事は、頭の上に乗るニワトリを引き下ろし、覆いかぶさる様にして伏せる事だけだった。
◇
静寂、無音……いや——轟音。
膨大な音の波が飽和し、気が付くと響き渡る轟音の中にいた。
恐る恐る空を見上げると、どう言う訳か、空から放たれた黒い閃光と地上から放たれたらしき金色の輝きが宙でぶつかり合い、その力を消しあっていた。
金色の源泉、俺の背後へと視線を向けると、其処にいた物は——
「……鳥、か?」
——金色の鳥。
巨大な金色の鳥は、その光り輝く四翼を大きく広げ、空へと金の極光を放っていた。
ニワトリの姿は何処にも無い。
…………。
「お前……あのニワトリか?」
俺の呆然と呟く声に、金色鳥は答えるでもなく、ほんの一瞬だけ視線を此方に向けて来た。
空では今こうしている間も、黒と金がぶつかり合い、轟音を響かせながら拮抗している。
何故だか知らないが、この金色鳥があのニワトリであると言う確信があった。
同時に、ニワトリが俺を守っていると言う事も理解した。
なら、俺がやる事は何だ? ……決まってる、『神造・殲滅弓騎兵』を起動させる事だ。
即座にストレージを開くと、その中から魔石の代わりになりそうな物を物色する。
石系アイテムを使おうかとも思ったが、それで万が一誤作動があったら怖い。
何か、何か純粋に魔力を含んでいる物は無いか?
ストレージを流し見て行くと、それを見つけた。
「……これ」
同時にフラッシュバックするのは、これを渡された際に伝えられた言葉。
「然るべき時、然るべき場所で、然るべき用途に。か」
ストレージから取り出したそれ、魔結晶。
闇と金色で荒れ狂うこの空間で、透明な筈のそれはその中心に金色鳥と同じ金色を宿している様に見えた。
躊躇は一瞬の事。
自分の直感を信じ、魔結晶を祭壇に叩き込んだ——
《『神造・殲滅弓騎兵』稼働可能まで残り〔¥&#$*?%999,999,999,999/100,000,000,000〕》
「は?」
バグった?
《【世界クエスト】『偉大なる神装兵』をクリアしました》
【世界クエスト】
『偉大なる神装兵』
参加条件
・『神造・殲滅弓騎兵』へ魔力を捧げる
達成条件
・指定期間内に『神造・殲滅弓騎兵』を起動する
失敗条件
・指定期間内に『神造・殲滅弓騎兵』を起動しない
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント10P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度&¥#%ーー100%
・防具『覇級魔導鎧・魔王』
・防具『覇級魔導鎧・勇者』
・防具『覇級魔導鎧・熾天使』
・防具『王級魔導鎧・賢者』
・防具『王級魔導鎧・剣聖』
・防具『王級魔導鎧・鬼王』
・防具『王級魔導鎧・竜王』
・防具『王級魔導鎧・天使』
エクストラ評価報酬
金色の輝き
太陽鳥の気紛れ
・スキルポイント20P
全体報酬
・評価点+
目の前にクエストクリアのメッセージが現れ、半透明なそれの先で巨大な影が動いた。
その兵器は頭部らしき部分を逸らし、天を見上げると、片腕を掲げ双頭竜へと向けた。
その腕に宿るのは金色の光。
そしてそれは、放たれた。
——閃光。
辺り一帯を金色が照らし、一瞬の間に光は双頭竜へとぶつかった。
——爆発。
膨大な光が辺り一帯を包み込み——
——俺は、意識を失った。




