AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 六十二
第三位階上位
「おお、タク、無事だったか」
「良かった、心配したよ」
解体しながら進んでいると、同じく解体していたアランとセイトを見つけた。
良く無事だったな。と思ったが、メニューのパーティー欄から無事な事は確認できるのを思い出した。
あまりの激戦にすっかり失念していた。
「メニューを見れば分かるけどな」
「お、そういやそうだったな」
「あぁ、すっかり忘れてたよ」
メニューを開いて確認すると、三人共HPバーは八割以上残っていた。
俺はポーション使いながらだったが、アラン達も其処は失念して無かったらしい……まぁ、ポーション無かったら既に死に戻ってただろうから当然だが。
その後、三人でひたすらに解体し続け、赤の騎士と合流し、赤の騎士に運搬してもらう事で効率的に解体し、更に交代で夕飯休憩を取って、と。
全てが片付く頃には日も沈んでしまっていた。
「……はぁ……やっと終わった……」
「疲れたなぁ……森の中の虫全滅したんじゃねぇの?」
「そう考えても不思議じゃ無いくらい出て来たね」
それだけでなく、赤の騎士が倒したと思われる個体には、掲示板の報告には無かったモンスターが複数存在した。
と言っても、どれも襲い掛かって来たモンスターの上位種っぽいものだったが。
ともあれ、勝ちは勝ちだ。
移動の最中に戦利品の分配をした。
魔石は全て赤の騎士に、幾つかドロップした肉や木の実などの食材系アイテムは、何故かアランが欲しがったので全てアランに渡し、他の虫素材は売った代金をセイトと俺で分ける事になった。
道中、赤の騎士にコウキ達の作戦の内容を伝えたが、どうやら白の騎士の心配は殆どしていない様で、特に焦った様子は無かった。
まぁ、多分地力が違い過ぎるだろうし、よっぽどの事が無いと倒される心配は無いだろう。
女子組に帰還する旨を連絡し、街で合流する事になった。
街に戻ったらやる事は、騎士に魔石を全て渡し、他の素材を売却して報酬を分配する。
……いや、アランに食材系アイテムを渡してから売却……うーん、ココネちゃん達に虫の上位種の素材を渡して防具や武器を作らせた方が良いか。
セイトと要相談だな。
◇
セイトとの話は直ぐに終わった。
セイト曰く、僕は殆ど倒していないし、武器にも防具にもお金にも困って無いから。との事。
ココネちゃんは少し強いみたいだけど、ヒヨリちゃんやアキちゃん、ノアちゃんは殆ど初心者みたいだからね。と言い、良い武器や防具があった方が良いよね。と言った。
部下を駄目にするタイプの奴だな。
そんなこんなで街に到着した。
「タク先ぱ——」
「タクせんぱーい! ヒヨリンとっても心配したんですよー! って、あれ?」
先に到着していた女子メンバーと合流し、唐突に駆け寄って腕を取ろうとして来たヒヨリちゃんを回避した。
和澄の道場で習った幻剣の歩法を使ったので、ヒヨリちゃんからは突然消えた様に見えただろう。
……いやまぁ、なんだ……ヒヨリちゃんくらいの身長の子ににいきなり飛び付かれるとな、反射的に回避しちゃうんだよ。想定より少し高いけど。
女子組は先に報酬の処理を済ませていたらしく、後は赤の騎士に魔石を渡すのと、アランに食材系アイテムを渡すだけ。
ココネちゃん達に虫の上位種の素材を渡し、武器や防具を作る様に言うと、アキちゃん以外の顔が引きつっていたのが印象的だった。
そんなこんなで騎士と別れ、各種処理を終える頃には、日付が変わるまで後3時間と少々になっていた。
今いる人数は十人。全員まだまだログインしていられるらしいのだが……折角これだけ集まったのだから何かしたい、しかしやる事が無い。
……さて、どうしようか。
◇
結局、各自で好きな事をすると言う事で纏まった。
まぁ、正確には、アランが作る飯を食ったり雑談したり情報収集したりと、主に食事会みたいな事になってるが。
……いや、食事会とか言うお上品な物では無いな、これは昨日と同じ、宴会だ。
左には、酔っ払って頰を朱に染めたヒヨリちゃんが、その発育に乏しい胸を押し付けてニヤニヤとしている。
右には、ヒヨリちゃんと違っていっそ見事なまでに色々と育ったココネちゃんが、同じく酔っ払って頰を染めながら体を押し付けて来ている。
一方では、暴飲の果てに暴食をしたセナが目を回してぶっ倒れ、ユリちゃんがそれを介抱している。
もう一方では、笑い上戸だったらしいノアちゃんとアキちゃんが笑い転げた後に眠くなったのか船を漕いでおり、アマネさんは酔うと静かになるタイプらしく、一人で空を見上げながらグラスを傾けていた。
アランはと言うと、我関せずで貸し厨房に篭って料理をし続けている。
セイトの方は、アマネさんと似たタイプなのか、一人でチビチビと飲んで肴をつついてと、後半になると騒がしかったのが一気に静かになっていた。
因みに俺は、両腕の、主に右腕の柔らかい感触を極力考えない様にしつつ、掲示板を見て情報収集をしていた。
どうやら、武技を使うと蟹の酸や蚯蚓の毒霧を弱める事が出来るらしい。
その他にも、硬い蟹の甲殻を貫く事が出来る様になったり、ゴブリンメイジが使う魔法を切る事が出来たりしたそうだ。
武技には技後硬直があり、ソロで狩りをする際にはそれに気を付けないとならない、など、武技を使う際の注意を纏めた掲示板もあった。
やっぱり武技って言うのは必殺技みたいな扱いをされているらしい。殆ど使わないから興味も無かったし、こんな状況にならなければ見向きもしなかっただろう。
武技の使用は検討した方が良いな。
掲示板の情報を見ていると、コウキ達の情報があった。
奇妙な事に、白の騎士と戦闘を開始した旨の書き込みがあったのに、失敗した、や、成功した、と言う書き込みが無かった。
ふと、何か焦燥に駆られる様な落ち着かない感覚を覚え、コウキ達の情報を探したら、一つの情報に行き着いた。
なんでも、死に戻りしたら直ぐに大聖堂に取って返すと言うゾンビ戦法で間断なく白の騎士に挑み続けていたらしい。
死に戻り後の身体能力低下は結構酷いと聞いたが、よくもまぁ其処まで出来る物だと感心した。
だが、それでも白の騎士を倒す事は出来ないだろうな、と、酔いの残る頭でそう考えた時、それは起きた。
「っ!?」
——世界が揺れた。
響いて来たのは音では無い。
ただ、気配としか言えない何か、背筋が粟立つ様な何かが、体をすり抜けて行ったのが分かった。
仄かに残っていた酔いが一瞬で覚め、即座に立ち上がり抜刀するや、その方角へと刀を構えた。
……何が起きたんだ……?




