AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 六十一
第三位階上位
赤の騎士は俺の横、祭壇の前に来ると、円筒状の祭壇の側面に開いた穴に何かを投げ入れた。
……祭壇っつうかポストだな。
「えーと……何やってるんだ?」
普通のゴーレムなら答えてくれないだろうが、この赤騎士なら答えてくれるだろう。
そう思って質問すると、赤の騎士は祭壇を指で示しつつ、此方に魔石の様な物を差し出した。
ジェスチャーに従ってその真っ赤な魔石をポストに入れる。
《『神造・殲滅弓騎兵』稼働可能まで残り〔99,632,975,540/100,000,000,000〕》
「……まさか……これ、動くのか!?」
俺の言葉に赤い騎士はコクリと頷いた。
周囲で小さなざわめきの声が聞こえるが、それも仕方ないだろう。
何せこの像、目の前の大聖堂と同じくらいの大きさがある。
これが赤の騎士と同じ様な機動性で動くのだとしたら……ちょっと洒落にならない。
ただ体当たりするだけでもかなりの威力を期待できる。
こいつが有れば蟹の軍勢なんて簡単に追い散らせただろうな。……機動性があればだが。
動かすのに必要な分は残り四億くらい。
魔石一つがどのくらいの数値になるかは知らないが、今ある数値が九日目間で溜まった物だとすると後少しで溜まりきる筈だ。
……これの起動が現状打破のトリガーになるんじゃないか?
「……これは動かした方が良いのか?」
赤の騎士にそう聞くと、騎士はコクリと頷いた。
よし、ならやるか。
「魔石を集めれば良いんだな」
俺の言葉に、騎士は少し間を空けてからコクリと頷いた。
◇
狩りは女子組と男子組に分かれて行う事になった。
一番良い狩場である迷宮が潰れてしまったので、女子メンバーは山側の浜辺に出る蟹やスライムを狩り、男子組は赤の騎士と共に農場の奥にある森で虫狩りをする。
農場の奥は色々な虫型モンスターが出て、様々な状態異常攻撃をして来るので初心者だらけのココネちゃんのパーティーでは足手纏いになる。
そんな訳で、森での狩りは始まった。
とはいえ、赤の騎士がいる以上虫狩りに失敗は無く。
蝶や蛾、蜂、の空飛ぶ虫や、飛蝗、百足、団子虫、蚯蚓などの飛ばない虫を駆逐する様に狩り進めた。
◇
「戻ったぞ」
「お帰り、交代だね」
昼飯を食い終え戻って来ると、交代で『聖騎士』、セイトがログアウトして行った。
アランは俺の前にログアウトして昼飯を食って来たので、セイトが戻ってくれば後は夕飯までノンストップで狩りだ。
「ん?」
アランが獲物を釣ってして来るのを待っていると、唐突に電子音の様な物が聞こえた。
メニューを開いて確認すると、ヒヨリちゃんとココネちゃんからフレンドチャットが来ていたので、両方を繋いだ。
『も、もしもし、タク先輩——』
『ヒヨリンでーす! 定時報——』
『——え?』
『——え?』
「定時報告か?」
二人で定時報告するのかと思ったが、話しを聞くに本当は一人がする筈だったのを何か行き違いがあったらしい。
ともあれ報告の内容は、狩りは順調に進んでいるとの事。
浜辺で狩りをしているプレイヤーは全くいないそうで獲物の取り合いになる事が無く、ココネちゃん達だけでは苦戦しそうな蟹狩りは、アマネさん達の活躍で十分に安定した戦いを維持できているらしい。
勿論、此方の情報も彼方に送った。
「それじゃあまた」
『はい! また後で』
『後で褒めてくださいねぇ!』
「おう、じゃーな」
そうして念話を切った所で、丁度良くアランが虫の群れを引き連れて来た。
「さて……多過ぎだろう」
土煙を上げて襲い掛かって来る飛蝗の群れと、苦笑いしながら走って来るアランを見つつ、二本の刀を構えた。
気合い入れて掛かんねぇとな。
◇
どれ程の間戦っていたか。
途中で戻って来たセイトとアラン、赤の騎士の四人で、間断なく襲い来る虫型モンスターや植物型モンスターの大群をひたすらに処理し続けていた。
あの飛蝗の大群以来、どう言う訳か複数種の虫型モンスターが延々と襲い掛かって来た。
飛蝗が原因なのか他の生物が原因なのかは知らないが、それを処理している内に農場の方から植物型モンスターも現れ始め、狂った様な乱戦になっていた。
これでは定時連絡も対応できず、メールで戦闘中と送るのが精一杯だった。
気付くと空はオレンジ色に染まり、戦いが集結していた。
辺りに立ち込めるのは、植物の青臭い匂いと甘い匂い、そして虫型モンスターから飛び散った体液から発される異臭に、何かが焼けたのか酷く焦げ臭い。
あまり長居はしたく無い劣悪な環境が出来上がっていた。
「……解体して消そう」
それしか方法は無い。




