AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 五十三
虎は傷口から血が飛び散るのも構わず、狂った様に結界に攻撃を繰り返している。
その猛威は凄まじく、徐々に結界の罅割れが増えていく。
「……これ、自滅してねぇか?」
「好都合じゃない」
「うぅ、ちょっと怖いです」
「いつでも攻撃出来る様にしておきましょう」
虎の猛攻はしばらく続き、結界はもはや崩壊直前となった。
そんな中、虎の前足が一際大きく振り上げられる。
——結界が壊れる。
果たして、その予感は正しかった。
振り下ろされた虎の一撃はボロボロになっていた結界を砕き割り、その破片は空気に溶ける様に消えていく。
そして——
『——嵐』
四つの声が重なり、戦いが始まった。
◇
「はっ!」
「グルァ!」
虎との戦いは初めからクライマックスだった。
血を撒き散らしながら大暴れする瀕死の虎と、切り札を切った俺達、お互いを潰し合わんとする激闘。
虎が振り下ろした鉤爪を回避し、その腕へ刀を振るう。
虎が弱体化しているのか、或いは武器が強いのか、刀は虎の毛皮を突き破りその下の皮膚を切り裂いた。
そして虎は俺だけにかまけていられる様な状況ではない。
四方八方から大剣や薙刀で攻撃され、必死に暴れ回っている。
しかし、その動きは段々と鈍り始めていた。
此処まで最初以来一度も魔法らしき攻撃をして来ない。MPが尽きているのだろうか?
動きが鈍り始めた理由は、MP同様に血が失われて行っているからだろう。
振り下ろされる鉤爪、振るわれる尾、咬み殺しに掛かるその動き、全てが遅い、遅くなっていく。
「グルァァァアッ!?」
「おっと」
アマネさんが放った矢が目玉に刺さった瞬間、虎は痛みにのたうち回った。
その状態の虎へ二射、三射と矢が射かけられ、その全てが虎の顔面、目玉、鼻先、耳へと突き立った。
五感の内三つを奪われた形になる虎は更に暴れ回り、前衛としては引かざるを得ない。
其処からは酷い光景だった。
アマネさんの矢は、額に刺さっても脳には到達しないらしく、次は手足を奪いに掛かった。
節々に矢が突き刺さり動きを封じられ、首を重点的に狙った矢が何本も射かけられ、胸元から首にかけてが剣山の様な有様になった所でようやく停止した。
「……終わったみたいね」
「化け物みたいな生命力だったな」
「強かったです!」
虎の死体へ近付くと、ナイフを突き立て解体した。
ドロップアイテムは、風精晶、レッサーゲイルタイガーの毛皮、牙、魔石。
まぁまぁだな。
さて——
「……で、どうやって帰るんだ?」
確かボスを倒したら死に戻り地点に飛ばされる筈だと思ったが……記憶違いか?
確かに最近は酷く厳しい連戦続きで疲れているが……。
「タクさん、昇降機の所に何か有りますよ」
「ん?」
ユリちゃんに促されて昇降機を見ると、その真ん中に何かがあった。
と言うか、モロに宝箱だ。
緑色の金属で出来ており、緑色の宝石が使われた豪奢な宝箱。
「宝箱とはまたベタだな」
「あっ! あっちにも何か有りますよ!」
アランが呆れと期待の混じった声でそう言うと、セナが明後日の方向を指差した。
其方へ視線を向けると、其処にあったのは小さな祭壇の様な物。
その祭壇の上には、緑の水晶玉らしき物が安置されていた。
両方だけど、いつの間に現れたんだか……。
「俺はお楽しみは最後まで取っておく派だ」
「あら? なら私は最初よ? 誰かに掻っ攫われたら堪らないもの」
「私はどっちでも良いです!」
「私も、特に拘りは有りません」
勝利後の弛緩した気持ちでそんな会話をしている皆、俺に決めろと言わんばかりに此方へと視線を向けた。
どっちでも良いだろとは思うが……いや、実は俺も最後まで取っておく派だ。
「先に水晶玉を回収してくるわ」
「ふーん、そう」
「じゃあ宝箱の前で待ってるぜ」
アマネさん……不機嫌なふりはしないでくれよ怖いから。
水晶玉に近付くと、その大きさがはっきりと分かった。
緑色のそれは、掌サイズよりやや大きいくらい、さっさとストレージに仕舞い、宝箱の方へ取って返す。
「それじゃあ開けるぞ」
アランは宝箱の縁に手を掛け、それは何の抵抗も無く開いた。
中に入っていたものは——
「……成る程、正に宝箱ってか」
「ふふ、こう言うのは中々ロマンがあるわね」
「キラキラですよっ!」
「この宝石はエメラルドでしょうか?」
——金銀財宝。
キラキラと光る大粒のエメラルドや金貨に銀貨、延べ棒、その他大量の宝飾品。
つい視線が向いてしまったのは金で出来たと思わしき剣。
クソ重いだろうし実用性は皆無だろうが、うん、ロマンがあるよな。
そう思っていると、唐突に地面が輝いた——




