AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 五十二
第三位階上位
《【探索クエスト】『風の迷宮を踏破せよ』をクリアしました》
【探索クエスト】
『風の迷宮を踏破せよ』
参加条件
・風の迷宮を探索する
達成条件
・風の迷宮を踏破する
失敗条件
・無し
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント3P
・貨幣:魔力10,000
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度19%
・道具『風爆石』×2
・道具『風破石』×4
エクストラ評価報酬
最速踏破
・スキルポイント1P
現在の時刻は昼飯の直前。一度攻略した事があるので探索の必要がなく、そう時間をかける事なくここまで来る事が出来た。
アマネさんはあと土の迷宮を踏破すれば四元素迷宮を踏破した事になる、最悪ボスは倒せなくても問題無い。
まぁ、全力で狩りに行くけどな。
◇
しばらく待つと視界が大きく開けた。どうやら闘技場に到着したらしい。
広大な闘技場を見下ろすと最初に目に付くのは大きな虎のモンスター。
相変わらずの大きさで、体高だけでも俺の身長の倍近い、しかし……。
「……怪我してます」
「……ボスは回復しねぇ仕様なのか?」
セナやアランの言葉通り、大きな虎は身体中に傷を負っていた。
それらの傷は殆どが浅い物だが、良く見ると毛並みが酷く乱れている所が何ヶ所かあり、虎はそこを庇う様に歩いていた。
面倒な事に、虎は手負いの猛獣そのものの顔で此方を威嚇している。
「戦いがあった事は間違い無い様ですね」
「あのゴミみたいに散らばっているのはデスペナルティーのドロップ品と言う事かしら」
虎以外に見えたのは、夥しい程の血痕、血溜まり。そしてドロップしたと思わしき幾らかの素材やアイテム、武器、防具。
……ゴミみたいと言われればゴミゴミしていると言わざるを得ないが、個人的には激戦の跡地と言ってあげてほしい所だ。
昇降機が降っている間前衛陣は特に何も出来ないが、アマネさんは試しにとばかりに店売り最安値の木の矢を射かけた。
木の矢は真っ直ぐ虎の額へ向けて飛んで行ったが、案の定途中で見えない壁に阻まれる。
アマネさんは特に落胆するでもなく、開戦に向けて蟹の鋏で出来た特別製の矢を継がえた。
昇降機はゆっくりと地面に近付いている、その最中——
「……おいおい、まじかよ」
「これは……卑怯なんじゃ無いかしら」
——虎が大きく口を開いた。
所謂溜めだ。
口腔に仄かな緑の光が集まり始め、それは徐々に強くなっている。
どう考えても必殺技の準備段階。
昇降機が地面に到達し、壁が解除された瞬間にそれは放たれる事だろう。
規模がどの程度かは分からないがボスの必殺技だ、直撃したら即死待った無しだろうよ。
どうしたものか。
散会した場合だと、広範囲攻撃は避けられないだろうし、おそらく一人はキルされる、場合によっては各個撃破される可能性すらある。
しかし、散会しなければ全員纏めて御陀仏だ。
そう思考を巡らしていると、ふと思い出した、おそらく防御特化であろう能力『城塞』の事を。
どのみち全滅する可能性が高いのならこれを試してみる良い機会だ。
四人にそれを説明し、了承を得て試す事になった。
「期待してるぞー、タク」
「タク君なら出来るって信じてるわよ」
「タクさんが出来ない筈ありませんよね?」
「えっと……頑張ってください!」
「お、おう」
ニヤニヤしながらアランがハードルを上げ、それにアマネさんが心にも無い事を心にも無い顔で言って便乗し、顔色一つ変えずにユリちゃんがハードルをかち上げ、セナが困惑しつつ応援してくれた。
いや、子供が真似するから止めろよ……。
全員の前に踏み出し、その瞬間が来るのを待つ。
虎は一番前にいる俺を睨み付け、俺はそんな虎を見据える。
流石にこんな猛獣に睨み付けられると冷や汗が出るってもんだが、同時にワクワクもして来る。
昇降機がゆっくりと地面に近付き、停止する直前——
「——っ! 『城塞!』」
虎の口腔より放たれた物は砲弾では無く、一直線に伸びる暴風だった。
昇降機が地面に到達し壁が消滅するのとほぼ同時に暴風は壁があった場所を越え、目前に迫った所で……間に合ったらしい。
「……はぁ、無駄に緊張してたせいだな」
『城塞』の効果が発動し、俺達は今、半透明の青い壁に囲まれていた。
青い壁は半球状に俺達を囲み、荒れ狂う暴風を完全に遮断している。
ステータスを確認するとMPバーがゼロになっていたので、ストレージからマナポーションを取り出し飲み干した。
「……これ、事前に発動しておけばよかったんじゃないかなーと思うのです」
「……いやまぁ、効果を知らなかったからな」
「壁が硬いのかボスの攻撃が大した事なかったのか分からんな」
そんな会話をしている内に暴風は収まり、忌々しげに此方を睨み威嚇する虎が見える様になった。
「戦闘準備ですね」
ユリちゃんの言葉に前衛の三人が俺の隣に並び、後衛のアマネさんが後ろに下がって行った。
「さぁ、タク君、結界を解除して」
「おう……」
……えーと…………。
「……解除ってどうやってやるんだ?」
「「「「…………」」」」
「……」
微妙に居心地の悪い沈黙が訪れた。
いや、テンペストも解除出来ないし仕方ないだろ。
しかし、そんな沈黙の時間は唐突に破られる。
「グルァァァアアーーッ!!」
「っ」
闘技場に木霊する虎の咆哮。
傷だらけの虎は此方が動かない事に焦れたのか、或いは渾身の一撃を防がれた事に怒っているのか、その巨体を感じさせない俊敏さで飛び掛かってきた。
鋭い鉤爪が付いた大きな腕が、結界へ振り下ろされる。
——ビシッ。
半球の結界に一筋の罅が走った。




