AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 五十一
※150万PV達成
第三位階上位
ふと、気がつくと夕陽が射す公園の噴水前だった。
「……はぁ、お疲れ様だな」
「今回も大変でしたね!」
「勝てたのは運が良かったからと言っても過言では無いでしょう。もっと良く鍛えなければいけませんね」
「狙い甲斐のある相手だったわね……あら?」
四人が和気藹々と話す中、俺は黙り込んでじっとしていた。
理由は単純。物凄い疲労感が身を包んでいるからだ。
それだけでなく、めちゃくちゃに腹が減っているし寒気もする。
そんな俺に気付いたらしいアマネさんが直ぐ近くまで歩いて来た。
「……体調悪そうね、今日はもう止めてしっかり休みなさい」
「……そうします」
背中を撫でながら休む様に命令してくるアマネさん。
それじゃあまた明日。と言ってアラン達に手を振り、ログアウトした。
◇
リビングに降りると既に夕飯は出来ていた。
食欲をそそるカレーの香りが空きっ腹に直撃し、二人前には多い量のカレーを全て平らげてしまった。
「御馳走様」
「お粗末様でした。今日は良く食べるねぇ」
その後、直ぐに寝ようかと思い食洗機を動かしているユキに『んじゃあおやすみー』と声を掛けた所、一瞬で捕まった。
風呂に入れられ歯磨きさせられ、色々と介護じみた事をされた後、マッサージを受けた。
全身を揉み解す様なそれは気持ち良く、段々と睡魔がやって来て……。
「タク、おやすみ」
「……ああ……お……すみ……」
ユキがおやすみと言った様な気がしてそれに返事をし、意識は暗闇に投じられた。
◇
「ふぁ……んん」
目が覚めた。
傍らの時計を見て時刻を確認すると、起きるにはまだまだ早い時間だった。
とは言え、起きてしまったのだからゲームでもやろう。
「ふみゅぎゅ」
「……ん?」
取り敢えず上体を起こそうとベットに手をつくと、何やら程良い弾力の何かを押しつぶしてしまった。
すると、何処からともなく可愛らしい音が聞こえて来た。
体調はすこぶる快調だが、どうにも起きたばかりだと頭が回らない。
押したら音が鳴る玩具なんて持ってたか?
「……」
「ふみ……」
「……」
「ふぁ……」
「…………」
「ふみゅ……」
「…………」
「んぁ…………何?」
「…………!?」
◇
朝、何処か気怠げなユキが軽めの朝食を作るのを手伝う。
ユキが元気無いなんて珍しい事もあるもんだ。今日は雪が降るな。
早めの朝食を食い終え、片付けを手伝ったり自分の雑事を片付けると早速ログインした。
公園で皆を待っている間に掲示板を見ると、新たな情報が何件か見つかった。
どうやらコウキ達の一団が西にある蜂の巣を攻略したらしい。
この情報は昨日の昼過ぎ頃に伝えられており、その後コウキはプレイヤー達を各迷宮に派遣し、爆石や破石の材料になる石を集めさせていた様だ。
プレイヤー達が攻撃アイテムを回収している間、コウキのパーティーは北に向かい狼の群れを撃破、これでボスっぽいモンスターは全ていなくなってしまった事になる。
……二体を除いて。
その二体とは、『赤の騎士』と『白の騎士』。
赤の騎士はどう考えても味方だろうに、なんで掲示板上で倒してみようなんて言葉が出るのか意味わからん。
白の騎士の方は、扉の先に何かがあるのは間違い無い上に、近くにある壁画から、扉の先にある物はかなり重要な物である事が伺える……との事で、コウキ達の一団は白の騎士に一当てして見るらしい。
本気で言ってんのかね?
◇
コウキの一団の規模は、蟹戦以降大幅に増加した。
まぁ、言ってしまえば、単独よりも集団の方が効率が良く、偶々コウキの一団が殆ど失敗していないから、何と無く従っていると言う者もいるだろう。
ローリスクで適度なリターンを期待出来るなら多くがそれに従うのは何もおかしな事じゃ無い。
そして、幸いな事にコウキにはそれを指揮出来る技能があった。
今、プレイヤーの大多数がコウキの指揮の元活動し、レベリングにアイテム収集に情報集めにと島中を探索している訳だ。
その結果、僅か二日程でプレイヤー全体の質が上がり、東西南北全てのフィールドの情報が掻き集められた。
その殆どはモンスター素材のドロップ割合くらいの物だが、中にはスキルの情報もあった。
結論から言うと、不遇のスキルは相変わらず不遇のまま、戦闘系スキルしかり、魔法スキルしかり、生産系スキルもまたしかり。
錬金術スキルは人海戦術を駆使して素材不足を解消したが、新しく生えた合成、錬成、分解の三つの能力はMPを異常に食らう上殆どが失敗すると言う、もはや誰も見向きすらしないスキルになっていた。
そんなこんなで時間が経ち、全員が集まった。
ゲーム開始八日目の今日、目的は風の迷宮の再攻略だ。
◇
「よっと」
「そこね」
飛来する風の砲弾を風爪で迎撃し、アマネさんが茂みへ矢を放つ。
飛び出してきた虎は足に矢を受けていた。上手く機動力を奪えたらしい。
「おらっ!」
「はっ!」
「食らうのです!」
三人の攻撃が命中し森に虎の悲鳴が響き渡る。
機動力が下がっても辛うじて回避した様で、一番やばいアランの攻撃は掠っただけにとどまった。
ユリちゃんの攻撃は後ろ足を穿ち、セナの一撃は矢が刺さっていない方の前足を傷付けた。
「せっ!」
回避の為に身を宙へ投げ出した虎へ風爪を叩き込み、肩口から首元までをバッサリと切り裂いた。
続け様に放たれたアマネさんの二射目が虎の首に突き刺さる。
これでもまだ生きてるのな。
「止めっ!」
「ですっ!」
ユリちゃんとセナの追撃が瀕死の虎の首へ打ち込まれ、今度こそ虎は動きを止めた。
武器の能力が上がったおかげか、案外楽に撃破出来る様になったな。
「これで六匹目だな」
「かなり余裕でしたね」
初っ端死に掛けた身としては、虎をこんなに簡単に仕留められる様になったかと思うと感慨深い物がある。
ともあれ、中ボス六匹目を撃破したので、いよいよボス戦だ。
しばらく森を進み雑魚を何匹か屠った所で、六つの光が灯った扉が見えてきた。
その扉を潜り抜け、昇降機は動き出す。
……以前はどうやって戦ったんだったか……良く思い出せないな……。




