AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 五十
第三位階上位
——はっ、しょうこりもなくまた来たか、わいしょーな猿共めっ!
「っ!? 何だ?」
「声が聞こえます!」
「まさか……あの鳥が喋ってるのか?」
「その様ですね……」
「喋る魔物……そんなのも居るのね。やり辛いわ」
唐突に頭の中に響いた甲高い声は、闘志と共に怒りと蔑みの感情を含んだ怒声であったが、同時にどうしてか幼い印象を覚えるものであった。
——ふんっ、数も揃えられぬざこ共がっ! この私が受け持つしれんへ挑戦しようなどとかたはら痛いわっ!! そもそもきさまらの様なちくしょーが——
昇降機はゆっくりと地面に近付き、その間中ずっと巨大な鳥の罵倒が続いた。
でもなぁ……罵倒の内容がなーんか子供っぽいんだよなぁ、腹も立たんわ。
昇降機が地面に到着して停止すると同時に、炎の鳥も地に降り立った。
——ふぅ……えっと……じゅうりんしてくれるわっ!
唐突な蹂躙宣言に、すわ戦闘か。と身構えたが、炎の鳥は翼を大きく広げて威嚇の姿勢を取った所で停止した。
此方をもとい俺をじっと見つめている鳥は、翼を畳んで頭を下ろし、しげしげと俺を見ている。
——……人の中では比較的大きく……二本の武器を持つ整った顔の雄……まさかきさま……タクと言う名前では無いか……?
「タクだったら何だよ……」
——私の質問に答えろ……きさまはタクか?
執拗に確認を取る炎の鳥。
何で知ってるのか知らない上に、答えたら何か嫌な事が起きる気がする。
しかし、違うと言ったら言ったで戦いになり、この鳥には地力的に見てほぼ勝てないだろう。
仕方ない。
「……そうだ、俺がタクだが?」
そう答えた次の瞬間、炎の鳥がカッと光輝いた。
眩い光は一瞬の事で、奪われた視界が元に戻る頃には目の前から炎の鳥が消えていた。
「っ!? 何処に行った?」
「会話の途中に目眩しなんて卑怯な事を……あら?」
「空には居ねぇな……消える事が出来んのか?」
「……幼女?」
「アラン、タクさん、居ますよ、何か居ます」
「ん?」
「お?」
セナが指差す方向、俺の足元を見ると、其処には赤い髪の幼女が居た。
上ばかり見ていて気付かなかったが……これ、どういう状況?
「技の戦士タク様、どうか今までの非礼をお許しくださいっ!」
「え?」
赤い髪を腰まで伸ばした幼女は、炎を象ったと思わしき和装の様な服に身を包んでいる。
そんな幼女は片膝をつき、拳を地面に当てて頭を下げていた。
何が何やら分からないが、取り敢えず辞めさせよう。
そう思って一歩踏み出した——
「っ!? わ、分かりました」
「は? ちょっ、何?」
——瞬間、幼女は意味不明な了承の言葉を吐き、一瞬で接近して俺の足を両手で捕まえた。
そのまま捧げ持つ様に足を掲げ、ゆっくりと頭を近付けて口づけした。
「……」
「……え? 何?」
「……お兄様に捧げる筈だったふぁーすときすです。しかしお許しを貰うには致し方無い事」
白い頰を仄かに染めて視線を逸らした幼女。
悪い、マジで何言ってんのか分からない。
「最低ね」
「軽蔑します」
「タクさん、酷いです」
「……いや、今の何処にタクが責められる要素があったのか分からないんだが…………」
何もしてないのに女子からの評価が下がったんだが……この幼女は何だ? 炎の鳥は何処に行った?
「なぁ、お前——」
「——くっ、これでも足りないと言うのですか、なんたる屈辱……しかしお許しを貰うには仕方ないのです」
そう言いながら、幼女は俺の靴を舐め始めた。
いや、まて、ガチで言い訳が出来ないくらい絵面がやばい。止めてくれ。
「止め——」
「——ぐっ、これでも駄目なのですかっ、この様な辱めを受けたのは生まれて初めてですっ……! 神霊候補であるこの私がここまでしたと言うのにっ!」
薄々感じていたが、こいつ、炎の鳥か。
ってか、本当に口が悪いな。
◇
如何にか勘違い幼女を立ち上がらせる事に成功した。
その間にあった出来事は、女子メンバーが俺に向ける冷たい視線が全てを物語っている。
「コホン……で、どうすれば良いんだ?」
「……ふ、ふん! 私に、あ、あんな事をさせておいてどうすれば良いんだ? だと? 責任を取れ! しれものめっ!」
はぁ……駄目だこりゃ、口調も尊大な物に戻ってるし、ユキ、助けてくれ。
「鈍亀や猫被りにどの様なしれんを課せられたかは知らないが、お兄様のしれんを突破したなら相応の格を認められる。そして私のしれんを突破すればお前は晴れてえいゆーの端くれとして認められるだろう」
俺が親友に助けを求めていると、幼女は何やら訳が分からない事を語り出した。
「幸いお前の魂はえいゆーのそれだ、お兄様の前の実験がてら私と子を作って貰うぞ」
「……は?」
…………は? コヲツクル? 何言ってんだこの幼女は。
「ロリコンね」
「不潔です」
「子供ってどうやってできるんですか?」
「酷い言われ様だ……取り敢えずセナはあっち行ってような」
幼女は騒がしい外野を無視して此方へと一歩近付いて来た。
「手を出せ」
「は?」
「手だ、手を寄越せと言っている」
「お、おう」
言われるがままに手を伸ばしてしまったのは、半ば思考が停止しているからだろう。
幼女は俺の手首を取ると、パンッと音が鳴る程度の力加減でお互いの掌を打ち合わせた。
その瞬間——
「っ!?」
——背筋が凍り付いた。
一気に体温を奪われた様な寒気が走り、立っているのがやっとな程の疲労感が押し寄せてくる。
何をされた?
「……成功だ、流石私」
そう言って、幼女は掌をそっと握り込んだ。
掌から離れた幼女の手に、先程までは無かった球体状の何かが握られている。
幼女は両手でそれを持ち、俺に見せて来た。
球体状のそれは、まるで宝石の様にも見える真っ赤で硬質な結晶体。
その中央には小さな光が灯っており、鼓動に合わせる様に淡く明滅している。
何だこれ。
「ふふ、これが私と貴様の子だ」
「……は?」
「名前はそうだな……私とお前の名からとってレルークとしよう。このえいゆーたる魂を持って私のしれん突破の証明とする」
ちょっ、ちょっと待ってくれ……状況が分からん。立て板に水を流すかの様な勢いで意味のわからない事が進行している。
「ふわー、子供ってああやってできるんですね……」
「いや、色々とおかしいだろ……」
「……これは想定外だわ」
「……何が何やらさっぱり分かりませんね」
ユリちゃんの言葉通り、何が何やらと困惑はするが、おそらくクエストがクリアになったんだろうと言う事は分かる。
「ふふ、これでお兄様とする時は失敗しないな」
「ちょっと待て、それ本当に——」
「——心配はむよーだ、実験がてらとは言え命は命、私はそれをむげに扱うつもりは無い」
いや、そう言う事じゃなくて……? 何だ? 急に意識が遠く……。
「ふん、どうせまた会うから特に何かを言ってやるつもりは無い……しかし一つだけ教えてやる」
薄れ行く五感、その中で、幼女の声が静かに響いている。
「もうじき最初のはんてーが下される、その結果は合格だ……ではな、タク」
判定? 合格? 何の事なんだ……?
《【伝説クエスト】『??の仮試練』》
【伝説クエスト】
『??の仮試練』
参加条件
・ボス『プロミネンスイーグルの幻影』に招かれた者
達成条件
・?
失敗条件
・?
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント5P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度20%
武器『剣翼・熱波』
エクストラ評価報酬
精霊生誕
・スキルポイント5P
全体報酬
・評価点+




