AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 四十七
第三位階上位
「は?」
「あら?」
「ふわー……はれ?」
「まじかよ……」
俺達は呆然とそれを見下ろす。
「……当たりどころが悪かったみたいですね」
ユリちゃんが苦笑しながら言った言葉、それが現状を的確に表していた。
「まさか一撃とはな……」
ついつい口から零れた言葉は、驚きに加えてアマネさんへの呆れが多分に含まれていた。
頭部を矢で貫かれて絶命している巨大な鷲。
これが火の迷宮の中ボスである。
「……って! これ死んでるんですか!?」
「あぁ、死んでるな、完全に」
セナとアランのやりとりを横目に、鷲にナイフを突き立て解体した。
時折溶岩らしき物が見える傾斜のあるこの岩場。刺さっていた対象が消滅した事で、カランッと音を立てて落下した矢を回収する。
良く見ると、鉄で出来た矢の鏃が暗褐色蟹の鋏の先端だった。
装備がグレードアップされてるなぁ。
「……次の階に降りたら昼休憩にしよう」
アマネさんに矢を返し、全員に声を掛けた。
まぁ、虎に苦戦してた時と比べると装備も整って来たし、アマネさん程の使い手がいるならこう言う結果も宜なるかな。
それに、早いに越した事は無い。この調子で進めば夕飯までには火の迷宮を突破出来るかもな。
◇
「ご馳走様」
「ふふ、お粗末様でした」
昼飯を食い終え挨拶すると、ユキはクスクスと微笑みながら言葉を返して来た。
「……何だよ」
「いや? ただ、タクが楽しそうだなって。それだけだよ」
「……」
じゃあ何でお前も楽しそうなんだよ。
そんな言葉は、考えはすれど口に出す事はしない。
もししたら素直で真っ直ぐなこいつの事だ、酒でも入って無いと言えない様な恥ずかしい事を恥ずかしげも無く吐き散らかすに違いない。
それを分かっててやってる時とそうじゃない時があるから性質が悪い。
「……ふん」
「ふふ」
今は素だな。
さっさと諸々のやる事を終え、ゲームに戻る。
別に逃げてる訳じゃない。そう言い訳がましい事を考えつつ、ベットへ横になった。
◇
ログインし、アラン達が来るまで掲示板を見て過ごす。
朝から昼までの数時間で、状況が色々と動いたらしい。
どうやら、多くのプレイヤーが武器と防具を蟹製の物に変えた事で、戦力の大幅増加が起こり、殆どのプレイヤーが三層を突破出来る様になった様だ。
四層での狩りも、四層に到達出来る様になったプレイヤー達が協力し、中ボスを六匹倒してそのままの集団でボスにアタックを仕掛けて行ったのだとか。
ただまぁ、五層のボスに勝つには消耗が激し過ぎた様で、全滅しているらしい。
火の迷宮もつい先程プレイヤー集団が四層を突破した様で、今は五層のボスと戦っている所だろう。
だが、あくまで俺の見解ではあるが、今戦っているプレイヤー集団は全滅するだろう。
その根拠は中ボスの倒し方にある。
中ボスである炎の鷲は、最初の内は決して降りて来る事なく空中から炎の攻撃を打ち続けるらしいのだ。
つまり、プレイヤー達は一方的な攻撃にさらされると言う事になる。
それを耐え切った後に続くのは、巨大な鷲の爪や嘴による急降下攻撃だ。
最初から最後までかなりの消耗を強いられる事になる。
他の迷宮でも無理だったのならここも無理だろう。
其処まで見終わった所で、全員が集まった。
出発しようか。
◇
狩りは順調に進んだ。
四層は火山の様なエリアで、エレメント系やゴブリンの集団と戦うのは中々に面倒だったが、今更雑魚が群れてもさして苦戦はしない。
巨大鷲は何もない空を飛んでいるので態々探し出す必要が無く、アマネさんの矢が頭や翼の付け根を射抜くのでその脅威は半減以下。
苦戦する要素がまるで無い。
そうやって狩りを進めていると、アランが面白い物を見つけた。
魔鉱石
備考:魔力によって変質した魔法金属を含んだ鉱石。
赤魔鉱石
備考:火属性の魔力を宿した魔法金属を含んだ鉱石。
——金属だ。
今まで発見されていなかったのは、このエリアの環境及び魔物の強さが原因だろう。
下を見ている暇があったら上を見て警戒しないと奇襲される。
そんな状態では他を見る余裕も無いし、そもそも見たとて知識が無いとそれが異常なのか普通なのかすら分からない。
武器や防具は既に揃っているので特に集める必要は無いが、見付けたら回収しておこう。
そんなこんなで四層のボス狩りも残す所は後二匹、この調子で行こう。
◇
「せっ!!」
「はぁああ!!」
「ちっ、急所が分からないわね……『貫通矢』」
それの襲撃は唐突だった。
「『風爪』」
「タクっ、切り札を使うぞッ!」
大量に現れたゴブリンやエレメントの群れを狩っている途中、空から巨大鷲の襲撃を受けた。
それらに応戦し、戦いが長引く事を危惧したその時、それは唐突に出現したのだ。
周辺にいた大量のゴブリンや巨大鷲を一瞬で焼き払い、燃え盛る紅蓮の中から立ち上がったのは炎を纏う赤い巨人。
その戦意に溢れる視線を受けた瞬間、必敗を予見した。
『嵐ッ!』
俺、アラン、セナ、ユリちゃん、四人の声が重なり、体が一気に軽くなる。
炎の巨人には通常の攻撃が殆ど効かなかった。
どうやら武技は通じる様で、その炎を多少は散らす事が出来たが、正直に言って焼け石に水、とてもじゃないが話にならない。
切り札を切るのも致し方無しと言う物だ。
「はっ!」
「ぜっぇえぁぁあっ!!」
「うぅ、攻撃が効いている気がしませんよ!」
切り札であるテンペストを使った状況だと、今まで以上にその炎を散らす事が出来た。
しかし、セナの言う通り、切り札を切ってすら焼け石に水を打つ状況は変わらない。
炎の巨人は嗤っているのか怒っているのか、その炎はより猛々しさを増していく。
振るわれる拳は地面を容易く粉砕し、その延長に火線が迸る。
どう考えても普通のモンスターじゃない。隠しボスか何かか?
殆ど手応えの無い攻撃を繰り返して行くも、効いているのか効いていないのか分からない、そもそも近付くだけでもダメージを食らう、強力な遠距離攻撃がある以上逃亡も難しい。
ボス蟹も強かったが、こいつはおそらくそれ以上に強いぞ。
どうすれば良い? どうすれば勝てる? そんな事を考えていると、視界の端で、炎の欠片を顔面に受けて盛大にすっ転んだセナの姿が見えた。
それへ向けて炎の巨人が拳を振りかぶる所も。
「セナっ!!」
アランの悲鳴混じりの声が響き渡った——




