AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 四十四
第三位階上位
注文したのはエスプレッソ、ちゃんと三層に分かれている、店員の技量が高いとこうなるらしいとは遥か昔にユキに聞いた事だ。
恵ちゃんはアイスカフェラテ、雨谷は美憂ちゃんと同じで子供舌なのか、頼んだのはオレンジジュースだ。
珈琲等を飲みながらユキ達を待っていると、唐突に後ろから声をかけられた。
「あ、タクじゃん」
「ん?」
振り返った先にいたのは——
「——武か」
「おうさ」
本名鈴木武、お調子者でムードメーカー、頭は少し弱いがいい奴だ。
委員長とはちょっとウマが合わない様だがな。
「珍しいな、一人でこんな所に来るなんて」
割と友達が多いから本当に珍しい。そう言うつもりだったんだが。
「あーっ、何だよそれっ、俺への当て付けかー!」
「いや、違っ」
首に巻きついてくるタケルを押し退ける、普通に鬱陶しいわ。
「あーイケメンは良いよなー! お前はデー…………トじゃないみたいだな……ご、ごめん、修羅場か、悪い帰るわ」
文句を言って絡んで来たタケルは、女子二人を見て固まった後そそくさと逃げ出す様に離れて行った。
待て待て、なんか誤解してるぞ。
誤解を解く為に手を掴む。
「待て、誤解——」
「は、離せー! 俺を巻き込むなっ! 刺されろ三股っ!!」
「よせっ、外聞が悪いっ。ってか後一人は誰だ」
「そりゃ鈴守——」
「呼んだ?」
「「うわっ!?」」
割と必死にタケルを捕まえていると、買い物を終えたらしいユキが現れた。
ユリちゃんの服を着たユキはニコニコと微笑んでいるが、話の内容は間違いなく聞いていた筈だ、ちょっとこの馬鹿をどうにかしてくれ。
「ユキ、誤解を解いてくれっ」
「ん? なんの?」
「げっ、鈴木君」
「……どうして鈴守さんに頼むのよ」
ユキはしらばっくれるし、委員長は焦ってるし、雨谷は何故か拗ねてるし、タケルは暴走……ん?
「……」
「タケル……どうした?」
急に抵抗が無くなったタケルを訝しんで見てみると、どう言う事か委員長を見て固まっている。
どうしたんだ?
「ちょっ、ちょっーと失礼しますねっ」
「え、う、うん」
突然委員長にペコペコし始めたタケルは、俺を店の端っこまで引きずると首を引っ張って頭突きをしてきた。痛ぇ。
「っ痛ぇ〜、石頭め」
「痛ぇのはこっちだ馬鹿野郎……何だよ」
わざわざこっちまで引っ張って来たって事は女子には聞かれたくない事なんだろう。
声を潜めて話しを聞く。
「あのちょー可愛い娘、誰!? 彼氏いるのか!?」
「は?」
ちょー可愛い娘って……消去法的に考えて委員長の事だよな……彼氏は……いないと思うが……。
「彼氏はいないと——」
「いないんだなっ! よしっ!」
「おっと」
首を引っ張られて姿勢が悪い所に突然背中を叩かれたせいで危うくすっ転ぶ所だった。
今日のタケルは情緒不安定だな。
◇
あの後ユキは直ぐに買い物を終えると、宅配サービスを利用して買った物を預け、直ぐに上に来たらしい。
この後の予定は委員長と話し合って決めた様だ。
昼食は此処で取り、軽く遊んでから帰るらしい。
まぁ、どうせ俺もユキがやると言うならやる、恵ちゃんも同じだろう。
後の二人は……タケルは付いてくる気満々だし雨谷は『どうせ暇だし……行くわよ』との事。
とりあえず店で各自持ち帰りの飲み物を買って、フードコートの方へ移る事になった。
昼飯時に差し掛かって、ビルが疎らにある此処らへんの会社員が昼飯を食いに来る時間となっては、流石にそこそこの人が集まり始めていた。
幸い六人全員で座れる所は未だ空いており、離れていた机を俺とタケルでくっ付けて利用させて貰った。
「俺は……えーと、エ、エリさんは何にしますかっ?」
「へ? え、えーと……それじゃあ久し振りにハンバーガーにしようかな?」
「い、良いっすね、ハンバーガー。俺もハンバーガーにしようと思ってました」
「そ、そう」
タケルは委員長の前の席に座り、ユキと俺が真ん中、俺の両隣にはタケルと雨谷が座った。
タケルはどうやら委員長の事に気付いていないらしく、委員長は何故か今の格好を隠したがっている様だ。
委員長は必死に俺やユキをチラ見して助けを求めてくるが、ユキが何もしないなら問題無いのだろう。
何せタケルは少し頭悪いし、委員長はもはや別人だし。気付かないだろ。
「恵ちゃんはどうする?」
「あ、あの、ユ、鈴守先輩と同じのが良いです」
「そう、じゃあ野菜炒めね」
「え? は、はい」
恵ちゃんとユキは決めたらしい。
「雨谷はどうする?」
「わ、私、こう言う所来るの、初めてで……」
「なんか好みとかは?」
「お肉……じゃなくて、えと……」
「オーケー、がっつりかあっさりかはどうだ?」
「か、軽めで」
控えめだな。
まぁ、軽めってなると初めてにもちょうど良いし、ハンバーガーだな。
俺は……。
「……ラーメン——」
「——却下、野菜炒め三つで」
「……おう」
ユキ……なんか怒ってないか? ユキが怒る様なやばいことってなんかやったっけ?
ってか、野菜炒めに珈琲とか……ラーメンも大概だが。
注文を終え、各自に料理が行き渡った。
「それじゃあお手を拝借」
「え?」
「お?」
「へ?」
ユキの言葉に素っ頓狂な声を上げたのは委員長とタケルと雨谷。
俺と恵ちゃんは当然の様に手を揃えた。
……恵ちゃん……怖いわ。
「あっ、そうだったね」
「あーあー、そう言えば偶にやってるなー……実は俺、これちょーやりたかったんだよっ」
「へ? 何? え?」
二人は分かった様だが、雨谷は困惑しつつも手を揃えた。
まぁ、やらなくても良いんだがね。
「頂きます」
「「「頂きます」」」
「いっただっきまーすっ、へへっ」
「い、頂きます」
全員がユキに合わせて唱和し、昼食の時間と相成った。
……野菜炒めかー……。




