AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 三十九
第三位階上位
次の獲物目掛けて進む。
五人で束になって掛かっているのに、倒すまでの時間が分単位で掛かるのは不味い。
幸か不幸かコウキ達の切り札は強化倍率が低いらしく、その変わり持続時間が長い様で今も前線を維持してくれている。
しかし、それが切れるのも時間の問題だろう。
どんどん数を減らして行かなければならない。
次の獲物は勿論騎士型ゴーレムと一対一で戦っている巨大蟹。
これを倒してゴーレムを一体解放する。
最初の一撃、アマネさんの矢は、あいも変わらず正確に巨大蟹の目玉を貫いた。
俺達が接近し切る前に追撃の矢を放ち、巨大蟹の両目を潰す。
巨大蟹は滅茶苦茶に暴れまわるが、ゴーレムがそれを取り押さえ、その隙に俺達が蟹の脚を全て切り落とす。
今度は然程ダメージを受けていなかった蟹だったのか動けなくなっても生きていたが、藻掻き苦しむ蟹へゴーレムの巨大な武器が振り下ろされ死亡した。
おそらくだが、先の蟹はゴーレムから攻撃を受けていたのだろう。
アマネさんは弱っている方をチョイスして釣ったした訳だ。
「次だっ!」
そう声を掛け走り出すと、ゴーレムもそれに追従してくれた。
実に心強い。
次の獲物は、3匹で1体のゴーレムを襲っている蟹連中。
ゴーレムは防戦一方で碌に反撃も出来ず、文字通り削られていっている。
アマネさんが攻撃を仕掛ける前に、ゴーレムが突進して行く。
砂浜を蹴り、大きく跳躍したゴーレムは隙だらけの蟹の背甲目掛けその巨大な剣を振り下ろした。
ドゴッ!! と辺り一帯に鈍く大きな音が響き渡り、蟹の背甲が剣の形に凹む。
ゴーレムが放った全身全力の一撃は偶然か狙ったのか不明だが、蟹の心臓がある部分にあたり、蟹へ致命的なダメージを与えた。
「死に損ないは俺らが潰すっ、あんたは他の蟹を抑えてくれ!」
俺の声に振り返り、コクリと首を縦に振ったゴーレムは別の蟹へと向かっていった。
俺らはまだ生きている死に損ないの蟹を即座に解体し、次の獲物、弱っているゴーレムと戦っている蟹へと向かう。
ゴーレムと協力して行くと蟹狩りは思いの外スムーズに進み、直ぐに残りの2体を殲滅した。
「どんどん行くのです!」
「次は……あっちが危ないみたいね」
「行きましょう」
地方的には勝利してもまだ此方の不利は変わっていない、休んでいる暇は無い。
◇
戦闘の最中、ふと敵の攻勢が増した。
どうやらコウキ達の切り札が限界を迎えたらしい。
まぁ、時間稼ぎは十分だったがな。
「ゴーレム達は蟹を抑えてくれ! 俺らはコウキ達を救出に行くぞっ!」
既に趨勢は決した。後はコウキ達が引き受けていた蟹の集団を狩るだけだ。
一部のゴーレム達は此方へ向かってくる蟹を受け持ち、他のゴーレム達は蟹の集団へ切り込んで行く。
俺たちはその開かれた道を駆け抜ける。
ゴーレム達の奇襲と連携は素早く、隙の多い大振りの一撃を打ち込んでは確実に屠り蹂躙して行った。
そして——
「——見つけたっ……!」
コウキ達を発見した。
複数の蟹に囲まれている中、コウキが火を纏った大剣を振るい、獅子奮迅の働きを見せていた。
しかし他のメンバーはあまりよろしく無い。
佐助は腹部から血を流して倒れており、ミヨがそれを魔法で治療中、テルマは呆然とその様を見下ろして立ち尽くしていた。
ネネコはというと半泣きになりながら回避盾をしている。
「ゴーレムが来るまで時間を稼ぐぞ」
各自に指示を出し、圧倒的に不利な戦場へと躍り出る。
セナには佐助へポーションを持って行く様に伝え、アマネさんにはテルマをどうにかする様にお願いした。
ユリちゃんとアランはネネコの救援へ向かわせ、俺はコウキの補助に向かう。
さて、此処が踏ん張りどころだな。
◇
長く感じる数分の防戦を続けていると、ようやくゴーレムの援軍が到着した。
途中でテルマが復活し、佐助も前線に戻って来たのでコウキの火が潰えてもどうにか時間稼ぎを続ける事が出来た。
「はぁぁぁ〜〜、助かった………………にゃ」
「今つけ忘れたでござるな」
「うるさいにゃっ!」
軽口を叩く余裕も戻って来たらしいな。
「油断するには少し早いですよ」
「まだまだ敵は多いからな」
「落ち着いて行きましょう!」
「セナちゃんは元気ね」
やや疲れ気味のコウキ達に対して、うちの連中は本当にマイペースだな。
「タク、救援感謝する。助かった」
「気にすんな、お互い様だろ?」
もうじき巨大蟹の大群は殲滅されるだろうが……あの小山の様に巨大な蟹はどうなったんだろうか?
余裕が出来た事でその考えに至った瞬間——
「おわっ!?」
「な、何だ!?」
何かが真横を吹っ飛んで行った。
宙に赤い線を残して飛んで行った何かは数匹の巨大蟹を巻き込んで粉砕し、停止した。
「炎の騎士か!」
「やられたのか?」
其処にいたのは赤い騎士。
当然嫌な予想が浮かんで来たが、赤の騎士は上体を起こすと何処からともなく赤い二本の大剣を取り出し立ち上がった。
槍は何処に行ったんだ?
「わひゃ!?」
「きゃ!?」
セナとネネコの驚く声が聞こえて視線を向けると、二人の間に赤い槍があった。
どうやら空から降って来た様で、砂浜に深々と突き刺さっていた。
赤い騎士を吹っ飛ばした元凶へと視線を向けると其処には、所々が赤く染まった超巨大な蟹がいる。
良く見ると右の鋏に槍の穂先が刺さっており、上手く開閉出来なくなっている様だ。
武器を持ち替えたのは槍が折れたからか。
その周囲には一際大きな巨大蟹が複数おり、相当なの激戦を繰り広げていたと思わしき真新しい傷が多数付いていた。
ボス戦か……切り札を切るか?




