AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 三十七
第三位階上位
プレイヤー達に情報を伝達し、次の戦いへの準備を進める。
全員が指定の配置について間も無く、四度目の襲撃は始まった。
海から上がって来たのは巨大な、俺の身長の二倍はある巨大蟹だった。
◇
「撤退っ! 急げっ!!」
コウキの指示が響き渡る。
投じられた各種石系アイテムによる攻撃を終え、かなりの数の大蟹や暗褐色の蟹を仕留めた。
今回の襲撃は、小型の蟹や通常の蟹はおらず、上位の蟹だけの襲撃だった。
追加でやって来た巨大な蟹は甲殻が鉄の様な輝きを持ち、破石での攻撃では無傷、爆石でも大きなダメージを与える事は出来なかった。
そんな蟹が10体は居る。
動きこそ鈍いものの大きさから来る威圧感があり、プレイヤーの一部は撤退の声を聞いて悲鳴をあげながら逃げて行った。
混乱が伝播しなかったのは救いと言えるだろう。
この状況で俺が単独で出来る事は無い……訳でも無いが……切り札を切るにはまだ早い。
殿の俺とアラン、佐助が防衛地点まで退がる頃にはゴーレムと蟹の戦いが始まっていた。
赤い騎士は巨大蟹に炎を纏った槍を振るい、一撃毎に脚を切断していく。
蟹はハサミで対抗するも、赤い騎士の体は他のゴーレムよりずっと硬いらしく、まるでダメージを与えられていない。
他の巨大蟹達は騎士型ゴーレムが相手をしているが、戦力は拮抗しているらしく一進一退の攻防を繰り広げている。
突出して強い赤の騎士が確実に巨大蟹を潰して行くので、他のゴーレムは巨大蟹相手に時間稼ぎをすれば良い。
問題は他の上位蟹だ。
ゴーレム達が巨大蟹を相手している為、戦線には隙間が多い。
其処を暗褐色の小型蟹や大蟹が駆け抜けてくる。
破石や爆石で数を大きく減少させる事に成功したが、まだまだ脅威と言える程の大群でもって押し寄せて来ているのだ。
弓持ちのゴーレム達には大蟹を狙う様にお願いしてあるので、目下の脅威は逆茂木や乱杭をすり抜けてくる小型の蟹。
「黒い蟹が来るぞっ! 武器を構えろっ!!」
『応っ!』
プレイヤー達はコウキの指示通り、それぞれの得物を構えて蟹の襲撃に備える。
そして——
「今だっ!!」
『おぉぉぉーーっ!!』
——上位蟹との戦いは始まった。
◇
防衛施設の隙間を縫って現れる暗褐色の蟹。
こいつらは中々に知能が高い様で、最初の内は下からのみだった物が、逆茂木を駆け上がって上からも襲撃してくる様になった。
最初の犠牲者は一撃で首を落とされ即死、下にばかり注意が向いていたプレイヤー達はその多くが致命的なダメージを被る事になった。
もしかするとそれを狙っていたのかもしれない、そう思わせる程にはその奇襲はタイミングが良く、奇襲直前に響いたセナの『上ですっ!』と言う声が無かったら被害は更に拡大していた筈だ。
「らっ! くそ、きりがねぇな」
暗褐色の蟹は上手く大蟹を盾にして破石や爆石の攻撃を躱したらしく、その数の多さはシャレにもならない。
甲殻は大蟹よりやや柔らかいらしく、この武器なら一撃で両断出来るが、上から下からやってくる蟹を相手に腕は二本じゃ足りない。
「『双剣使い』助太刀するよ!」
そんな声と共に真横に現れたのは金髪のイケメン。
取り巻きの女子も参戦したが、はっきり言って肉壁以外の何者でも無い。
「……無茶はするなよ」
「君の無茶を止めに来たのさ」
肉壁でも無いよりマシ。
そんな意味を込めて言った言葉は、良くわからない答えで返された。
少し余裕が生まれたので周囲の状況を確認すると、どうやら暗褐色の蟹は俺の所にばかりやって来ていたらしい。
多過ぎると思ったがそんなカラクリがあったとは……。
暗褐色の蟹の襲撃は徐々に収まって行き、次にやってくるのは大蟹の群れ。
防衛施設の木々を大きな鋏で滅茶苦茶に割り裂いて進軍するそれらを見ながら、剣を強く握り締めた。
◇
大蟹との戦いはコウキの新たな指示により、武器を持ち替えた石製ゴーレム達が矢面に立って進む事になった。
プレイヤーはゴーレム達が注意を引いている蟹を、横から突いてHPを削り、着実に敵を屠って行く。
大蟹の攻撃は石製ゴーレムに効果があるらしく、まともに一撃を受けると皹が入っている。
頼り切りになる事は出来ない。
そんな中で戦いは進み、敵の数がかなり減って来た所で、異変は起きた。
海が膨れ上がった。
遠目から見て分かる程、小山の様に大きな何かが陸上に上がって来たのだ。
それに続く様に、複数の巨大蟹が現れた。
五度目の襲撃。
未だ四度目の蟹を倒し切れていない中、新たな脅威はすぐ側まで迫って来ていた。




