AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 三十六
第三位階上位
《レベルが上がりました》
「はぁ……終わりか」
「そうですね」
「他の人の手助けに行きますか?」
大蟹を撃破し周囲を見回すと、戦いは概ね終結し始めていた。
何時の間にか周囲には十数人の女子プレイヤーと数人の男子プレイヤーが集まっており、拙いなりに助けになってくれた。
「よし、掃討に移るぞ」
『了解っ!』
『はいっ!』
向かう先は、一番苦戦しているテルマとミヨのところ。
プレイヤーは何人かいるが、どうもテルマの戦い方が良くない。
他のプレイヤーと連携が取れていない。それどころか連携の邪魔をしている。
困り顔でテルマを見ているミヨにアイコンタクトをとって、テルマに声を掛ける。
「助太刀するぞ」
「手を出さないでっ! 私一人で十分よっ!」
成る程。
ミヨ達が周囲を囲んでいるのは、テルマがしくじる時に直ぐに助けに入る為か。
ついてきた十数人のプレイヤーにハンドサインで止まる様に指示を出し、二本の刀を手に乱入する。
「はっ!」
「っ! ちょっと!」
切り損なって傷だらけになっている蟹の鋏脚を両方同時に一息で切り落とす。
勢いそのままに右手に握る蛇牙・時雨を地面に突き立て、蟹の甲羅側から腹に掛けての凹凸を握り、そして——
「——っ!!!」
持ち上げた。
正確に言うと、アッパー気味にかち上げてひっくり返した。
これには、文句を言おうとして口を開いていたテルマも目をまん丸に見開いて硬直している。
まぁ、それが狙いな訳だが。
「せっ!」
その後は、射角を調節して蟹の口から心臓目掛けて刀を突き込んだ。
おまけで体内を真っ二つに切り、刀を引き抜く。
「よしっ! 次に行くぞ!」
「……あ、り、了解です!」
『は、はい!』
テルマを囲んでいたプレイヤー達も併合して次の救援に向かう。
強敵が残っている以上、休んでいる暇は無い。
「……タクさん……凄い」
「——はっ!? ……な、何なのよっ、あいつっ!」
構ってる暇も無い。次が控えてるからな……出来ればついてきて欲しいとこだがな。
◇
「……これで最後か」
「その様ですね」
数人のプレイヤーで協力して何とか防御していたと言った風情の場所に、一声掛けてから参戦し大蟹を倒した。
参戦と言っても、複数のプレイヤーに経験を積ませる為に戦わせて、俺はそれを見ていただけだがな。
俺以外にも周りで掃討を終えたアランやセナ、ユリちゃんもいたが、俺の呟きに答えたのはその誰でも無い、何処か見覚えのある女子だ。
確か、蟹の奇襲から助けてくれた奴で、蟹との戦闘で助けた奴で……軟派からも助けた形になった奴で…………リアルでもどっかで見た覚えが……。
「あぁ、加藤——」
「はうっ!? 覚えて——」
「——何だっけ?」
「心希ですっ!」
そんな名前だったか。
確か鈴護の……凛花ちゃんの友達だったな。
凛花ちゃんが歳の割にちっこいのに対し、この子は他よりもずっと大きく成長している。そのせいか、クラスではちょっと浮いていたらしい。
其処に、小さい頃から雪に関わって普通の子より少しおかしな子である凛花ちゃんが現れ、あっという間に仲良くなったのだとか。
確か、以前にちびっ子の引率で隣町のデパートに行った時に会ったんだったな。
……あの時も一人だけ軟派されてて……良く軟派されるな。
「覚えてる覚えてる、助かったよ。ありがとう」
「っ! いえ、当然の事をしたまでです!」
小さい子供は成長が早いと言うが、この子は見た目だけはすっかり大人だな。
ココネちゃんは凛花ちゃんと一緒に軽く護身術を習っているので、一応ある程度の体捌きと立ち回りが出来るが、やはり人外が相手だと上手く戦えないのだろう。
凛花ちゃんはユキのエーサイキョーイクを受けていて反射がおかしいが、ココネちゃんは少ししか受けていない筈だから其処まで強くないのだ。
「よし、全員撤収するぞ、配置に戻れ」
『了解!』
『はい!』
◇
「現在のプレイヤー数はおよそ300か……三割削られたな……」
「次はもっとヤバいのが来るだろうよ」
「各プレイヤーにも疲労が溜まっています」
コウキの呟きに、アランとミヨが答える。
四度目の襲撃は間違いなく今まで以上に過酷になるだろう、各プレイヤーの精神的な疲労も看過出来ないレベルになり始めている。
次はもっと保守的な戦いをすべきだろう。
「コウキ、次の戦いなんだが——」
提案した内容は単純明快。
現時点で既にプレイヤーが対応出来るレベルを超えている。
この事から、迷宮から産出された各石系アイテムを全て投入して敵を可能な限り打ち減らし、その後撤退、後方の石製ゴーレムと共に防御施設を盾にして蟹を迎え撃つ。
これしかないだろう。
「はっ……逃げるって訳?」
「まぁまぁ、落ち着くでござるよ」
「逃げる。と言うより、襲撃に対する防御を固める。が正しいわね」
「そうにゃ、アマにゃんの言う通りだにゃ、元々防衛戦にゃ」
テルマが噛み付いて来たが、コウキは分かっているだろう。
このまま白兵戦を続けていたら今度は保たない。
少なくとも下位から中位までのプレイヤーは全滅する。
「そうだな、タクの案を採用しよう」
「……ふんっ」
おそらく、テルマも白兵戦に限界は感じていたのだろう……文句を言ったのはただ俺に噛み付きたかっただけ、嫌われたもんだな。
……それにしても……身内の女達は雪の手によって調きょ……調教済みだから女子に反発されるのはなんだか新鮮だな。




