AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 三十五
第三位階上位
各自配置につき、三度目の襲撃を待つ。
他のプレイヤー達が思っていたより簡単に指示を聞いてくれたのが幸いして、布陣は良い感じに整っている。
赤い騎士と交渉し、騎士型ゴーレム達を等間隔に最前線へ配置、その直ぐ後方に近接プレイヤーを置き、其処から更に後方、逆茂木の後に遠距離プレイヤーと通常ゴーレムを配置した。
各前衛プレイヤーが手に持つのは、迷宮から産出された破石や爆石。
これを使って、遠距離から少しでも多くの蟹を削る。
最初に使うのは破石。
これは初期魔法のおおよそ五倍程の威力があり、何より連射出来るのが強みだ。
強い衝撃を受けると爆発し、周辺にダメージを与える。
今までに無い一番の巨大イベントと言う事もあり、殆どのプレイヤーは此処で破石や爆石を使うつもりらしい。
全体の準備が整ってからしばらく後、三度目の襲撃は始まった。
◇
最初にやって来たのは、一度目や二度目と同じチビ蟹の大群、それに続く様に膝丈程もある蟹が海から上がって来た。
そして——
「でけぇ……」
「勝てるのかな……」
プレイヤー達の中からそんな声が聞こえて来る。
海から這い上がって来たのは巨大な蟹。
体高は概ね腰程もあり、其処から更に大きな鋏が付いている。
全高は首にも届くだろう。
それらの群れに隠れる様に、暗褐色の蟹が紛れ込んでいる。
暗褐色の蟹の方は大きさこそ膝丈より少し小さいくらいだが、甲殻の所々が針の様に尖っており、鋏は一目でわかる程には鋭い。
その上かなり移動スピードが早いらしく、巨大蟹や通常蟹の影を走り回って隠れながら進行して来ている。
何方も普通の蟹より強い事は間違いない。
「投擲用意っ!」
コウキの声が響き渡る。
「狙いは後方っ! 未見の蟹を狙えっ!!」
普通の蟹になら対応出来るが、他と直接対峙してしまえば一定以下のプレイヤーは狩られるだけだろう。
蟹達は凄まじい勢いで上陸し——
「——放てっ!!」
次の瞬間、浜に色取り取りの光が乱舞した。
殆どの光は蟹の後方で炸裂したが、一部はチビ蟹含む前衛の蟹へ着弾した。
破石が当たったチビ蟹は無残に弾け、通常蟹は硬い甲殻が割れ砕けている。
対する上位の蟹。
大蟹は降り注ぐ大量の破石を前に甲殻にヒビが入り、ある者は集中砲火を受けて絶命していた。
今の時点で見える範囲には無傷の者はおらず、ゴーレムと上手く連携すれば死者ゼロでの勝利も可能だろう。
暗褐色の蟹は相変わらずチョロチョロと走り回っている。
どうやら大蟹を盾にして破石の雨をやり過ごしたらしい。
今は、まばらに降る破石と矢を巧みに回避しつつ此方へ向かって来ている。
ただ、進めば進むほど盾が少なくなっているので、一部の蟹は矢を受けている様だ。
……ってか、あの蟹に刺さってる鉄の矢はアマネさんのじゃ無いか? 恐ろしい。
「槍部隊っ、構えっ!」
そうこうしている内に、チビ蟹と通常蟹の群れが前衛まで迫って来ていた。
コウキの指示通り、ゴーレム達の横に配備された槍部隊が蟹へ向けて槍を構える。
「——今だっ!」
『おぉぉぉーーっ!!』
合図と同時に槍が突き出され、ほんの一瞬蟹の進行が滞った瞬間、ゴーレム達の大きな剣が振るわれた。
ゴーレムの一撃は容易く蟹達を破壊し、それと同時に全ての前衛プレイヤーが駆け出す。
芸の無い乱戦だが、今回はゴーレム達に上位の蟹を屠って貰える様にお願いしてあるので、通常蟹の群れを相手にプレイヤーだけで対処しなくてはならない。
死者は更に増えるだろう……死に戻りだが。
トップクラスのプレイヤーにも、それぞれ役割が振られている。
掃討力の高い俺やセナは小型の蟹を屠って回り、一撃の重いコウキやアランは大型の蟹を狙う。
短刀を使う佐助や直剣を使うテルマなんかは、他のプレイヤー達を補助して戦い、戦線を維持するのに一役買っていた。
佐助が忍びらしく音もなく助けて回るのに対し、テルマはいちいち文句を言いながら助けていた。
態々プレイヤーからヘイトを稼いでどうする。
現在の俺の武器は、虎爪・疾風に加えて蛇牙・時雨。何方も刀だ。
各種スキルのおかげか普段より比較的上手く二本の武器を扱えている様な気がする。
◇
「ちっ、硬いなっ!」
しばらくの雑魚戦後戦況は推移、今は上位の蟹と戦っている。
このレベルまで来ると低位のプレイヤーでは話にならず、最初に打ち減らした事もあって今はパーティーでの戦闘になっていた。
そんな中、暗褐色の蟹はその小さい体と素早さでゴーレム達の猛攻を掻い潜り、鋭いハサミでその体表に傷を付けていた。
そのスピードは小回りの利くプレイヤーにも脅威となり、ゴーレムの表皮をも傷付けられるハサミは容易にプレイヤーの四肢を切り落とす。
トップクラスのプレイヤー達も余裕が無くなり始め、この一戦での死者数はかなりの物になっている。
「っ! 危ねぇ、助かった」
「い、いえっ! その、もしかしてミヤシ——」
大蟹と単独で戦っていると、暗褐色の蟹から奇襲を受けた。
それを防いでくれた同い年位の女子が何かを言おうとした様だが、その言葉を聞いている余裕は無い。
「ぜっ!」
襲い掛かる重量武器を刀で受けるのは少々宜しくない。
構造上脆そうな関節部分に、迅斬術をかなり抑えた剣で切り捨てる。
何時でも回避行動に移れる様にする必要がある為、全力は出す事が出来ない。
少しでも焦れて隙の多い技を使おうとすれば、さっきの様に嫌がらせの様な奇襲に合う。
幸いな事に刀の質が良いので、稼働する筋肉を少なくした迅斬術でも関節を切断する事に成功していた。
「はっ! ……次だっ」
敵の数から見て戦いはもう時期終わるだろうが、それまでに何人のプレイヤーが死に戻りする事か……。




