AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 三十四
第三位階上位
「出過ぎるなっ! ゴーレムに合わせて行動しろ!!」
『応っ!!』
二度目の襲撃は、小型の蟹と普段この浜にいる蟹の大群だった。
一部の高位プレイヤーは迷宮産の素材を使った防具で武装しているが、殆どのプレイヤーは迷宮表層の素材やフィールドに出るモンスターの素材を使って作ったツギハギ装備だ。
一対一では勝てない者が多いし、相手の数が多ければ尚更だ。
その点コウキの指示は正しい。
ゴーレムはこの蟹を相手にしてもびくともせず、振るわれる心持ち大きな武器は蟹の甲殻を物ともせず叩き割っている。
先の指示でプレイヤー達は防御を主体に戦い始めている。
プレイヤー達と切り結び動きを止めた蟹をゴーレム達が破壊したり、ゴーレム達が倒し損ねた瀕死の蟹にプレイヤーがトドメを刺したりと安定した戦いを続けている。
勿論、俺含むトップクラスのプレイヤーは単独で複数の蟹を相手に出来る。
少なくとも一対一では確実に勝てる。
戦場の密度から言って一度に相対出来る蟹の数は最大で5匹、かなり疲れるが対応出来ない訳では無い。
しかし、トップクラスのプレイヤーで突出して行動している奴は少ない。
言っては何だが、今突出している連中はペース配分を考えていないんだろうな。
主にテルマだが。
「せっ!」
「ひゃ!? あ、ありがとうございます」
「疲れたなら下がった方が良い。戦いはまだ続くからな」
「は、はいっ! ……《かっこいい……!》」
トッププレイヤーの多くは、こうして他のプレイヤーを補助して回っている。
……まぁ、言い方は悪いが、後半になるにつれてトッププレイヤーも余裕が無くなってくるだろう、後半の為にも肉の盾は多い方が良い。
◇
二度目の戦いは程なくして終結した。
二度目は一度と異なり死に戻りが何人かいた様だが、精々数人程度だ。
コウキの指揮があればこその結果だな。
「よぉ、色男、やるじゃねぇか」
「んだよアラン」
再度の仕切り直しで定位置に戻ると、唐突にアランが肩を組んで来た。
顎で指し示す方を見ると、何人かの女子プレイヤー達がさっと視線を逸らした。
何だ? ……見られてた……? …………まさか、思考が読まれたのか?
身内の女子連中は時々此方の考えている事を読んで先回りしてくる事がある。
肉壁とか考えてたのがバレているとしたら色々とやばい、次はもうちょっと優しく当たらないとな……。
「ん?」
頭の中で重要な行動方針を立案しつつ周囲を伺っていると、似た様な視線がアランにも集まっている事に気付いた。
アランも思考読まれてんじゃねぇか。
「おい、アラン、睨まれてるぞ」
「は? うわ、まじか……ちょっと力加減ミスったとは思ったんだが……」
そうとバレない様にアランを睨む連中の場所を教えると、アランは視線だけ動かして状況を把握した。
「何したんだよ」
「いやな——」
どうやら、助ける際に強く手を引っ張ったり強く抱き抱えて回避したりと強引に行動したらしい。
一応フォローで優しげに声を掛けたそうだが、無駄だったらしいな。
力加減なんて一番重要な事なのに……戦いでハイになってたのかもしれないな。
変な誤解を解いて、二人で次はどう行動するかヒソヒソと話し合っているとコウキがやって来た。
テルマは何故か周囲を威嚇している。猫かよ。
「タク、アラン、次の敵の襲撃なんだが——」
次の敵の襲撃は今までの物より更に過酷になるだろう事が伺える。そんな話し出しから始まり、ちょっとした作戦なんかを話し合う。
「そうだな、その作戦で行こう」
「これなら前衛も最初から戦いに参加出来るな」
「よし、じゃあその様に指示を——」
話がちょうど終わる頃、テルマが吠えた。
「何見てんのよっ!」
振り返って見ると、どうやらコウキも俺達と同じ様な視線に晒されていたらしい。
テルマがフシャーッと威嚇しているのはコウキの為か。
「待て、テルマ……死者を出したのは指揮官の責任だ、咎められても文句は言えないだろう?」
「は? ……はぁ……もう、良いわよ……」
「お兄ちゃんは……はぁ」
コウキは特におかしな事は言っていないが、テルマとミヨは何に呆れているんだろうか?
「……《テルマ殿も難儀な男を好いたものでござるな》」
「……《にゃー……うち的にはミヨちゃんの心労が心配だにゃー……禿げるかもにゃ》」
「ん? すまん、呼んだか?」
「いえいえ、呼んでないでござるよ」
「にゃ、話題にすら出てないにゃ」
「そうか」
何やら佐助とネネコがボソボソ言っていたが聞き取れなかった。
コウキの話しをしているのかと思ったが、どうやら違うらしいな。
「何なんだ、一体……」
「それを俺に聞かれてもな……」
「それよか次の戦いでの立ち回りを考えようぜ、次は睨まれない様にしないとな」
「おう」
「そうだな」
こうして三人での話し合いは、なるべく優しげに対応する。という事で纏まったのだった。
「ふふ、セナちゃん、よーく見ておきなさい。あれがバカよ」
「ふぇ!? タクとアランはバカなのですかっ!?」
「そうですね、取り敢えず豆腐の角に頭をぶつけて死ねば良いんじゃないかと思います」
「え!? 豆腐ってそんなに硬かったのですかっ!? ……じゃあ前に食べたあれは一体……?」
おいこら、無垢な子供に嘘を教え込むなっ。




