AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 二十六
第三位階上位
「う〜み〜は〜広い〜な〜」
「本当にな……」
ちょっとした陸地になっている場所がスタート地点だが、まぁ、今日は此処までだな。
「もうそろそろ昼だから今日は此処までにしようか」
「……わかりましたー」
「悪いな、タク」
さて、午後はどうしようか?
◇
ログアウトすると早速リビングに向かう。
今日の昼飯は何かね。
リビングの扉を開けると、漂って来たのは磯の香……。
「こんにちは、お邪魔しています」
「やぁ、タク、もう直ぐ出来るよ」
「……お、おう」
何故かユリちゃんがいた。
まぁ良いか、と椅子に腰掛ける。
今日の昼飯は海鮮丼らしく、マグロを中心にカツオやイカ、タコ、イクラが酢飯の上に乗せられている。
料理人2人は、何方も黒髪美人なので姉妹に見える、身長的にはユリちゃんの方が姉だろう。
いつもポニーテールのユキがなぜか今はツーテールにしており、子供っぽさが一段と増している。のも原因だろう。
そして犯人はユリちゃんだな。恍惚とした表情でユキの髪を弄っているし。
ユキもユキで、既に包丁を使う段階では無いからかされるがままになっている。
ユキは全く抵抗しないからマジで何れ誰かに喰われちまうんじゃ無いかと心配している。
抜けてるからなぁ……ユキは。
「完成、はい離れてね」
「あぁ」
まぁ、大丈夫か。
料理が食卓に並べられ、ユリちゃんが席に着いた。
俺の前にある丼は他の二つと比べるとふた回りも大きい、と言うよりユキとユリちゃんが少食だから普通よりも量が少ない訳だが。
「ユキさんは此処ですよ」
「はいはい、タク、横失礼するよ」
「むぅ」
自分の膝を叩いてユキを誘導しようとしたユリちゃんに適当に返事をし、俺の横に座ったユキ。
ユリちゃんや、何故その不満顔を俺に向けるのか。
「それじゃあお手を拝借、いただきます」
「「いただきます」」
ユキは三人以上で飯を食う時はいっつもこれをやる。
何でも家訓だとか何とか。鈴守は細かい家訓が多いんだよな。
「ユキ、醤油——」
「——はい」
「サンキュー」
「むぅ」
俺とユキのやり取りに不満顔なユリちゃん。
いや、何が不満なんだユリちゃんは……。
「ユキさん、お醤油を」
「うん、タク」
「おう、ユリちゃん」
「むむぅ」
俺から醤油を受け取りつつも、ユリちゃんは不満を顔に浮かべている。
……しょうがないだろ、俺が醤油持ってるんだから。
しっかし……何でこんなに美味いんだ? 魚は切るだけだし……酢飯の配合に秘密があるのか?
「タク」
「ん? 何だ?」
美味い飯を食いつつ味の考察をしていると、唐突にユキに話し掛けられた。
「ご飯、付いてるよ?」
「? ああ——」
「ほら、動かないで」
ユキが自分の頬をツンと指差しながら言って来たので箸を置いて手を伸ばそうとしたが、それよりも早くユキの手が伸びてきた。
ユキの細い指が俺の頬に付いた米粒を取り、パクリとそれを口に含んだ。
「うん、美味しい……やっぱり酢飯は北のお米が合うよね」
然りげ無く味の秘密を教えてくれたユキ、北のお米と言うと軟質米の事だろう。
恐る恐るユリちゃんの方を伺うと——
「!!?」
——ユリちゃんは固まっていた。
丼から箸で刺身と米を持ち上げ、驚愕の表情を浮かべて完全停止していた。
ユキは知ってて放置しているのか、或いは別の事を考えて不要な情報を排除しているのか。
ユキは飯を食いながらニュースなどの話を振ってくる。
俺はその情報、外国の首相がどうのや最新技術を使った義手がどうのと言った話に適当に相槌を打ち、飯を掻き込みながらユリちゃんを伺っていた。
すると、正気に戻ったユリちゃんが、いそいそと米粒を一つ掬い取り、頰にくっ付けるシーンを目撃してしまった。
「その最初の被験者として雨垣——」
「——ユキさーん」
「ん? む? ユリちゃん、頰にご飯付いてるよ?」
ユキの話しを遮り声を掛けたユリちゃん、その思惑通り、ユキは自分の頬を指差して米粒が付いている事を教えた。
「え、本当ですか!? ユキさん、取ってください!」
「んん? ああ」
少しオーバーな、もといわざとらしいリアクションを取りつつ身を乗り出したユリちゃんに、ユキは少し不思議そうな顔をした。
しかし、直ぐに合点が言ったとばかりにコクリと頷いた。
どうやらユリちゃんの心情に思考を割いた様だ。そもそもユリちゃんはその辺りキツく躾けられてるから、飯粒が頬に付く事は無い。
ユキはテーブルに身を乗り出し、指を伸ばすのでは無く顔をグッと近付けて行く。
「え、あ、あの——」
「はむ」
「——っ!!???」
そのまま直接米粒を口に含んだ。
人肌を口に含むと唾液が過剰に分泌されると言う謎の性質は健在らしく、ユリちゃんの頰に唇を付けたまま米粒を咀嚼していたユキが離れると唾液の線がツーっと繋がった。
ユキはそれを服の袖で拭うと、ニヤリと妖艶な笑みを浮かべ『ごちそうさま』と呟いた。
「……あんまり弄ってやるなよ?」
「はて、何の事かな?」
キュー、と昇天したユリちゃんを見ながら注意したが、ユキはすっとぼけた様にツーテールを揺らし、今度は普通にごちそうさまと呟くのだった。
◇
午後、セナの予定があるのでやる事が無く、ユキの手伝いで家事を終えた。
その後は様々な生物の倒し方と弱点について検索して過ごした。
ユキは復活したユリちゃんの膝の上で何か調べ物をしており、ユリちゃんはユキの髪を弄ったりお腹や胸元を触ったり抱き締めたり匂いを嗅いだりしている。
ユキなんかは、完全にされるがままで、その様は容姿と相まって人形その物だ。
そんなこんなで、ゲーム開始四日目は過ぎて行く。
夕飯は何かね?




