AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 二十三
第三位階上位
「よし、タク、着替え終わったぜ」
そんな声に振り返ると、全体的に緑色のアランがいた。
かなりの軽装、鎖帷子の様な物と足袋の様な物と、額には鉢金が巻かれ、口元は布で隠されている。
忍者か?
セナの方は未だに唸って何かをしている様だ、女性はこう言うの遅いと言うが……セナも女性だったん……ゴホンッ! ぅうん……何でも無い。
「これは良いな、軽くて動きやすい」
軽くジャンプしながらそう言うアラン。確かに見た目以上に軽そうだ。
……ってか、鎖帷子の金属っぽいのは何処から現れたんだ……?
……まぁ、ゲームだからな。そんな物か。
「おっと、武器忘れてた」
俺の装いを見てからそう言ったアランは、直ぐにメニューを開いて武器を装備した。
アランの武器は風の迷宮踏破時に入手した緑の大剣、『虎爪・狂風』。
セナは『虎爪・旋風』形状は鉤爪、ユリちゃんは『虎爪・突風』形状は薙刀。
俺もユリちゃんも狙った様に得意な武器が来たが、アランやセナはどうなんだろうか?
ざっと見た所、アランは重い物を振るうのが得意そうだ。
セナは直感頼りで動いている様で、その戦い方は獣っぽい。
それぞれに適性がある武器が手に入る仕様だったのか? 仮にそうだとして、どうやって適正を判定しているのか、と言う謎が——
「これで良しっと……そういえばタク」
「……ん? あぁ、何だ?」
考え事をしていたから、アランへの返事が一拍遅れた。
「ログインした時に土の迷宮が踏破されたって言うメッセージが来たんだが……」
其処まで言うと、アランは俺の全身を見回して来た。
まぁ、風の迷宮踏破時に手に入った武器とこの防具は何処と無く似ている。
おそらく作者が同じだからだろうが、普通の人間なら気にも留めない様な些細な細工が似通っている。
「……ご明察の通りってことで」
「やっぱりか、単独で突破したのか?」
成る程確かに他のプレイヤーの手は借りていない。
ただし、バグっているとしか思えない様なキャラクターの手は借りた。
アランに昨日の夜有った出来事を軽く説明しておこう。
「——って事が有ってだな」
「……そんなニワトリがいんのか……そういや——」
アランの話によると、東の農場で家畜の捕獲クエストが出ているとの事。
捕獲した家畜によって報酬が異なる為、一部のプレイヤー達は高速で逃げ出すニワトリを捕獲しようと躍起になっているらしい。
どう考えても無駄な努力だ。
「タクの話が本当なら捕獲は無理だろうよ」
「まぁ、そもそも根本的なスピードが足りてな——」
「——アラン、タク、見てください!」
アランと他愛も無い話しをしていると、それを遮る元気な声が響いた。
セナが防具を作り終えたのだろう。
声のする方へ視線を向けると、其処には——
「虎です! がおーっ!」
——猫がいた。
正確には猫耳少女だ。
下はショートパンツに尻尾、上はサラシの様な物にベストの様な物を重ね、頭の上には猫耳らしき物が乗っている。
全体的に露出が多く、靴から頭に掛けての装備は何処と無く獣の様で、モフッとしている。
コスプレか何かにしか見えない。
唯一虎っぽいのは、腕に装着された鉤爪。
ユキなら今の彼女をこう呼ぶだろう『セニャ』と。
「って、いや、そんなちっこい虎がいるかよ」
アランはそう言うと、『タクもそう思うだろ?』と話を振って来た。
それに深く頷いて同意する。
「どう見ても猫だろ。……今のお前はセナじゃ無くてセニャだな」
「なんと! セニャですか!? でも虎の毛皮で作ったので虎ですよ?」
そう言いつつもセニャはしばらくうんうん唸ってから、合点が言ったと言わんばかりに深く頷いた。
するとセニャは、其処だけは虎の鉤爪が付いた腕をクイッと曲げて招き猫の様なポーズをとった。
「猫ですっ! セニャですよ! ニャーッ!」
相変わらずハイテンションな奴だよな。
◇
東の森で水の迷宮を探す事しばらく。
出てくるモンスターはスライムばかりで、その間セニャはニャーニャーと猫の鳴き声をし続けたり、フシャー! と威嚇してみたりと、猫化が進行していた。
やっていてどんどん楽しくなったのか、終いには人の言語を喋らなくなった。そろそろ戻って来ないと本当に猫になるかもしれない。
そんなセニャは暴風の様に暴れ周り、ちょうど今、他より倍くらい大きなスライムを仕留めた。
よもや捨て身で突っ込むとは思わなかったが、スライムの粘液に塗れたまま立つセニャは無傷だった。
どうやら事前に回復魔法を詠唱していた様で、突っ込んで倒すと同時に回復させた様だ。
戦いのセンスはかなりの物だが、言ってしまえば天才型、これを磨いて鍛え上げられるのはよっぽど頭がおかしい奴だけだろう。具体的にはユキだ。
「見つかんねぇな、水の迷宮」
「ニャーニャー、ニャニャ?」
「他三つの迷宮の位置から見てこっちなのは間違い無いが……後探して無いのは……あれだけだな」
「ニャ! ニャニャーン」
「やっぱりあれか……」
あれ、つまり泉だ。
東の森には小さな泉があり、それ以外の周辺一帯を草の根分けて調べまわっても水の迷宮は無かった。
泉の中にあると考えて間違い無いだろう。
濡れるのは気分的にあまり良く無い、だがまぁ所詮はゲームだ、攻略する為なら多少の不快感なんてどうでも良い。
「しょうがない、行こう」
「ニャー!」
「おう……セナ、そろそろ正気に戻ってくれ……」
「ニャ? ニャニャニャ? ニャー!」
…………手遅れか?




