AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 二十一
第三位階中位
さっきの亀はなんだったのかと言いたい。
昇降機は止まる事なく地の底に進み、ニワトリは俺の頭の上に座っている。
ウサギの毛皮で出来た帽子はクッションにちょうど良いんだろうな。
しばらく考えてみたのだが、先程のモンスターはキャッスルトータスの幻影では無いのだろう。
流れた大量のメッセージの中にあった、フォートレストータスがさっきの奴だ。
要するに……。
「……あの化け物みたいな奴より強いのがいるのか……」
「コケッ」
「……」
如何してかデジャブを感じるが、この際それは良いだろう。
それよりもこのニワトリが一体何者か。ニワトリは勝てるのか。が大事だ。
まぁ、死なば諸共……そう言えば、NPCは死ぬとどうなるんだ?
プレイヤーと同じで死に戻りするのだろうか?
そう考えた矢先、視界がバッと開けた。
「……うへぇ……まじか」
見えたのは巨大な亀のモンスター。
大きさは上でみたものの十倍以上あるだろう。
「こんなの倒せんのかよ」
「コケ?」
「首を傾げている場合か……」
ニワトリは俺の頭の上から動く様子を見せず、ただ少しだけ揺れて見せた。
……まさか余裕アピールなのか?
昇降機はゆっくりと地面に近付き、接地。
剣を抜き放ち、直ぐに飛び退れる様に腰を落とした。
「……」
「……」
「……」
…………。
——……何故……!
「うお!?」
緊張感と共に亀を睨み付けていると、唐突に甲高い少女の様な声が聞こえて来た。
——何故汝がこの地におるのじゃっ!!
そんな怒りの篭った声と同時に亀が大きな口を開き、そこから細い光の線が走った。
光の線は俺の頭上を通った様で、俺の目にはその軌跡がありありと浮かんでいる。
頭の上にあった重みが無くなり一瞬ニワトリが死んだかと思ったのだが、どうやらそんな事は無い様で、亀の攻撃は続いた。
——妾がっ! 一度だけでっ! 美味しい思いがっ! 出来ると聞いてっ! 態々やって来たのにっ! 何故に汝が此処におるのじゃーっ!!
叫び声が途切れる度に光の線が空中へ放たれ、空ではニワトリが華麗に羽ばたきその全てを回避している。
——楽しむなっ!! そうやって知らない振りをしてっ! また妾のすいぃつを横取りしに来たんじゃっ!!
弾幕の様に乱れ打ちされる光線はしかし、掠める事すらなく通り過ぎる。
もはや蚊帳の外過ぎて何が何やら分から無い。
◇
——はぁ……はぁ……おの、れ……何故当たらんのじゃ……。
亀のモンスターの奮戦は虚しく、ニワトリは全ての攻撃を回避しきった。
叫ぶ声はひたすらにニワトリを糾弾する物で、ひたすらにスイーツがとられた事を嘆いていた。
一方ニワトリは、光線の連射を楽しんでいたらしい。
今は、疲れ切って地面に四肢を投げ出した亀の甲羅の上に座っている。
ちょっと聞いていて可哀想になったのだが……スイーツと聞いてストレージの中にケーキがある事を思い出した。
ユリちゃんが食べているのを見てやはりと注文したが、来るまでに胸が一杯になってしまってストレージに放り込んでおいた奴だ。
どうせ今後も食わないだろうし、亀にあげてみよう。
「なぁ、あんた」
——ん? ……なんじゃ汝は。
「これ、やるか——」
——にゅお!!? 良いのか!? 良いのかっ!?
「あ、ああ」
此方へ向けて大きく口を開ける亀。
その様は、亀の大きさに反して餌を求める雛鳥の様だ。
早う、早うせい! と急かす亀の口の中にケーキを放り込む。
——ふにゅああぁぁぁ〜〜っ!! うぅんまいっのじゃーっ!!
「おおうっ」
凄い喜び様だ。
亀が夢の世界から戻って来るのにはしばらくの時間が掛かった。
——ふむん……お主、名はなんと?
「俺はみや……タクだ」
名前を聞かれ、咄嗟に本名を言ってしまいそうになったが如何にか踏み止まった。
アランのミスも馬鹿に出来ないな。
——うむ、覚えておくのじゃ。……汝もタクを見習って、せめて妾の背から降りるのじゃ!
「コケッ」
——ぐぬぬっ、空華め……! トリ頭とは言え妾の話を無視するとは何たる屈辱! その上妾の攻撃を畜生の姿で対処するなど…………わ、妾を侮辱してっ!
ニワトリの事になると途端にわなわなと震え始めた亀。
この二人の間に何があったのか……いや、お菓子泥棒しか無い訳だが。
とりあえず宥めた方が良いだろう。
「まぁまぁ、落ち着け」
——ふぅ、ふぅ……そうじゃな、空華の様なドアホに付き合っていては無為な時間を積み重ねるだけじゃ。
「そ、そうだな」
——はぁ…………タクよ、少し話を聴け。
急に改まって声を掛けて来た亀。一体どうしたんだ?
——非常に、ひっじょーっに惜しいが、お主の顔に免じて報酬のケーキは諦めるのじゃ。
「お、おう?」
——むぅ、なんじゃ、嬉しくなさそうじゃの。妾がケーキを諦めてまで試練突破の許可をくれてやろうと言うのに。
「試練突破? クエストクリアって事か……あー、ありがとう?」
——うむ、大いに感謝するが良い。そして毎日ケーキを一つ捧げるのじゃ。
「え?」
全然譲歩して無いだろ、それ。
——空華が……このトリ頭がお主を此処に導いたのも運命と言うものなのじゃろう。この運命を手繰り寄せた事を妾の試練突破の証明とする。
運命と言われれば運命なのだろうな。
——決してケーキに釣られた訳では無い事をよーく覚えておくのじゃ!
や、釣られてただろ。とは言わない方が良いか。
——最後に一つ妾から忠告しておこう。妾の母君が受け持つ神霊の試練は、さる金色のーー様から託されし、ーーーーへ参加するに足る者を選定する為の試練。
なんだ……? 言葉は聞こえるのにノイズが掛かった様に情報が理解出来ない……。
——妾の様にケーキ欲しさに突破を許可する程惰弱な内容では無い。
はは、やっぱり釣られてたんじゃ、ないか……。
——ふむ…………この世に天才などおらぬ、魂は誰しもに平等じゃ。お主の友人は無限数の輪廻の果てに磨かれた魂を持っておる、お主もなかなかの様であるがそれと比べてはならん。
友人……? 磨かれた魂……? ……あぁ、ユキの事か……。
——腐るなよ、英雄。
腐るかよ……ユキは何時も遠くにいるんだ……追い掛けなきゃ……見えなくなっちまう。
——ほっほっほっ、愚問であったようじゃの、老婆心が出たわ。
あぁ……眠いな……。
——ふふ。ではな、宮代拓哉。……早う妾の元へ辿り着くのじゃよ?
《【伝説クエスト】『??の仮試練』をクリアしました》
【伝説クエスト】
『??の仮試練』
参加条件
・クエスト『選別の試練:土の迷宮を踏破せよ』踏破者
達成条件
・?
失敗条件
・?
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント5P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度100%
・防具『亀甲鎧・地鳴』
エクストラ評価報酬
餌付け
無血の勝利
・スキルポイント8P
全体報酬
・評価点+




