AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 十八
第三位階中位
先ず最初に動いたのは虎。
その巨体からは想像も出来ない身軽さで立ち上がると、即座に振り上げた前足を俺たちの目の前に振り下ろした。
咄嗟に回避行動をとったのは俺とアランとユリちゃん。
地面と前足の接触点から暴風が巻き起こり、バックステップで躱した俺達三人は想定以上に飛ばされてしまった。
セナは虎の前足が当たらないとふんで反撃に出る為に前へ出てたらしい。
暴風の直撃を受け、槍を構えたまま空中へと投げ出された。
宙に浮かび身動き取れないセナに即座に虎の前足が振るわれる。
ドンッ! と聞くに耐えない衝撃音が鳴り響き、セナは闘技場の壁まで飛ばされた。
壁に強く打ち付けられた後、地面に落ちる。
メニューを開いて簡易ステータスを確認すると、セナのHPバーは一撃で九割減少し、その横で複数のアイコンが点滅していた。
その内二つは見覚えがある、状態異常、出血と骨折だ。
放っておいたらHPが徐々に減少して死に戻りする。
「アラン!」
「了解!」
「ユリちゃんは回り込め!」
「はい!」
アランにセナを救助する様に、ユリちゃんには虎の後ろへ回る様に指示を出した。
俺は正面から行く。
誰かが虎の注意を引かないと勝負にすらならない。
虎は向かってくる俺に狙いを定めたらしく、大きく口を開いた。
風の砲弾だ。当たれば即死だろうよ。
回避先はどうするか。下は回避しきれるか分からない、上はセナの二の舞になる、結局の所右か左かだ。
何方に行っても同じかと思ったが、ふと、視界におかしな物が映った。
虎の左前足。
セナをぶん殴ったその足の甲に何かが生えている。それは良く見ると——槍の穂先。
「っ!」
そう認識するや、迅斬術を利用した地面を砕く勢いの踏み込みで右側へダイブした。
風の砲弾は凄まじい余波を放ちながら背後を通過し、俺は宙で一回転すると停止する事なく虎の方へ駆け出す。
セナの奴、あの状態からカウンターを合わせたらしい。大したもんだ。
虎は自らの攻撃力のせいで槍が貫通してしまった様で、良く見ると左前足を庇う様に僅かに重心が傾いている。
そのまま接近し、風の爪を纏って振り下ろされた右前足を更に右へ、紙一重の所で回避した。
反撃をするべく急ブレーキをかける。
回避の勢いを緩める目的と次の攻撃の前準備を兼ねて全身を畳む様に縮め、全身の筋肉を使って一気に反発。
虎の右前足に俺の出せる全力で剣を突き込んだ。
「ぜっ!!」
——GRUuAaaa‼︎‼︎
剣は根元まで深々と突き刺さった。
即座に離脱するべく剣を引き抜こうとしたが——
「——しまっ」
——半ばまで抜けた所で急に動かなくなった。
それはさぞ——
——隙だらけに見えた事だろう。
「がっ!?」
風の砲弾が直撃した。
それは何も無い虚空から現れた一撃。
強烈な衝撃を受け真横に吹き飛ばされ、次の瞬間——視界が真っ暗に染まった。
直撃を受けたのに、ある筈の痛みを感じない。
耳を澄ませると微かに何かが聞こえるが、それが何の音なのか分からない。
どうやら五感が殆ど封じられてしまったらしい。
メニューを開く事は出来たが得られる情報が極端に減っている。
取り敢えずステータスを確認するとHPバーは七割強削られ、受けている状態異常は出血、骨折、内臓破裂、気絶。
状態から言って気絶が原因だろう。……こんな状態異常もあるのか。
…………クソ……何も出来ないのかよ……。
◇
十数分後、視界がゆっくりと明るさを取り戻し体の感覚が戻って来た。
「うっ……ゴフッ……痛てぇな」
体の感覚が戻ると同時に身体中に痺れる様な痛みが走った。
視界は未だ靄が掛かった様に暗く、完全に戻るにはもう少し掛かりそうだ。
状況は? 一体どうなった?
俺が生きてるって事は勝ったのか?
体の感覚が戻るに連れて自分の周囲の状況が少しずつ分かり始める。
「水……いや、血か」
どうやら血溜まりの上に寝ていたらしい、出血の状態異常でかなり垂れ流しになっていた様だ。
何で死んでいないのか不思議でならないが、何故かHPバーが髪の毛一本分で停止している。
唐突に金属音が聞こえた。
「……剣?」
目前に落ちて来たのは虎の足に突き刺した筈の狼牙剣。
それを拾い、立ち上がると歩き出す。
? 俺は何処に向かってるんだ?
しばらくヨロヨロと歩いていると視界が元に戻って来た。
「……どう言う事だ?」
見えたのは血溜まりに沈む三人。
メニューの簡易ステータスから確認すると、どうやらこの三人もHPバーが髪の毛一本分残っている様だ。
俺はそれらを無視して歩みを進めている。
——異邦の者、武威を示せ。
誰だ?
唐突に聞こえて来た声。それに従う様に剣を構えた俺の体。
その構えは迅斬術理論上最速の刺突の構え。
俺には出来ないユキの剣だ。
だがしかし、俺の意思は関与せず、その剣技は放たれた。
響き渡ったのは銃撃の様な爆裂音、体がばらばらになる様な酷く激しい痛みが走り、剣は何かに少しだけ刺さった。
——見事なり。これを持って我が試練を突破した証明とする。
試練の突破? ……クエストクリアなのか……?
——いずれ、長き時の果てに、貴様は我らが王の袂へ辿り着く事だろう。
なんだ……? 意識が……遠……く…………。
——しかし異邦の英雄よ、努努忘れるでない。王へ託されし神霊の試練は矮小なる我が課す試練とは格が違う。
……試……練…………?
——励めよ、英雄候補。
《【伝説クエスト】『??の仮試練』をクリアしました》
【伝説クエスト】
『??の仮試練』
参加条件
・クエスト『選別の試練:風の迷宮を踏破せよ』踏破パーティー
達成条件
・?
失敗条件
・?
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント5P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度25%
・武器『虎爪・疾風』
エクストラ評価報酬
?????
未踏の領域
・スキルポイント15P
全体報酬
・評価点+
《レベルが上がりました》




