AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 十五
第三位階中位
「へー、ユリちゃんが? ……僕をお金で……後でケアしとかないと」
「夕飯の時間なら空いてるみたいだぜ」
ユキの作ったオムライスを食べながら、ユリちゃんの事をそれとなく伝えておく。
「なら十八時だね、今日の夕食はコロッケサンドにしておくよ」
「おう、分かった」
「付け合わせのポテトサラダもちゃんと食べる事」
「馬鈴薯ばっかだな」
「国産の良いのが入ったらしいよ?」
あぁ、安くして貰ったのか。
「国産ってぇと、北のか?」
「うん、北の。お肉屋さんと提携してて、コロッケに合う牛挽肉だから安くするって。商売上手だよね」
ユキはニコニコと微笑みながらそう言った。
まぁ、ユキの作る物は何でも美味いし、どんな料理でも問題無いが。
早めの昼飯を食い終え、軽くユキの手伝いをしてからゲームにログインする。
まぁ、手伝いと言っても使った食器を食洗機に掛けたりガーデニングに水をやるくらいの事だが。
それでも随分と早い方だ。
ユリちゃんが来るまでは掲示板で情報収集をしていよう。
◇
ログインすると、階段の直ぐ近くにあった複数の石の一つにに腰掛ける。
小さなストーンヘンジの様に見えなくも無いが、一体……。
「……って、これ出口か」
良く見ると石は円を描く様に等間隔に設置されており、その中心には薄っすらと魔法陣らしき物が見える。
中盤の出口って事なんだろう。
まぁ、特に発動する様子も無い、椅子として使っても問題無い筈だ。
メニューを開き掲示板を見る。
今最も白熱しているのは各迷宮探しの様だ。
風の迷宮は、俺らが発見したからか入り口が分かりやすい様に祭壇の様な作りに変化しているらしい。
今は何人かのプレイヤーが一層を攻略中で、奇襲してくるスライムや攻撃が当たらないウィンドエレメントに苦戦しているとか。
ゴブリンと戦って気分が悪くなった。と言う発言も見掛ける。
やはり人型のゴブリンが相手だと、勝てても後味が悪い様だ。
その他の情報として、スキルポイントで取得する武技と言う物があった。
どうやらスキル欄から詳細を確認する事が出来る様で、その武技と言うのは各武術スキルの説明欄に取得の可否が書かれていたそうだ。
確認すると今俺が取得出来る武技は、袈裟斬り、二段突き、斬撃波の3つ。
どうやら発動後に技後硬直と言う一瞬体が動かせなくなる時間があるらしく、あまり魅力は感じない。
だがまぁ、威力が格段に上がるらしいので全て取得しておく。合計で7P。残りは28P。
早速とばかりに剣を抜いて武技を試してみたが、体が勝手に動かされる様であまりよろしく無い。
なんか光るし出だしも早いが、硬直がある以上少なくともソロ活動中には使えたもんじゃ無いな。
……或いはトドメの一撃か。
そんなこんなで調べ物をしていると、階段から誰かが降りてくる音がした。
一応いつでも剣を抜ける様に身構えておく。
やって来たのは二人、男女のパーティーだ。
片方は高身長で武道経験がありそうな歩き方の短髪イケメン男。リアルモジュールっぽい。もう片方は、男とは真逆の低身長でそのまんま一般人な歩き方の髪が長い美少女だ。
「おっと、先客って事はあんたが匿名のプレイヤーか?」
「……まぁ、そんな所だ」
男は剣に添えていた手を離すと、気軽な調子で問い掛けて来た。
此方も返礼で剣から手を離して質問に答える。
「俺の名前はあまがきゲッホゲホ……あー、アランだ」
「そうか、あまがきらん、か」
「……忘れてくれ」
「あぁ、ほんの冗談だよ」
何だ、面白い奴だな。
「それでこっちが——」
「くろきせなです! 宜しくお願いしますね!」
「……良く言い聞かせておくから忘れてくれ。セナだ」
「分かった」
凸凹コンビだな。
「俺はタク、もう一人連れにユリっていう女性プレイヤーがいる」
ユリちゃんが来るまで二人と情報共有していたのだが、どうもアランとはウマが合う。
色々と話し込んでいる内に、パーティーを組む事になった。
アランとセナの二人は俺らと同じで二人で虎を突破して来たらしく、かなりの手練れだ。
アランは純剣士、セナは槍で中距離戦をし、回復魔法も使える魔法戦士だ。
セナの方は色々と知りたがりの様で、見た目は中学生程だが見た目以上に幼い印象を受けた。
アランの方は逆に物知りで、人の手が入っていない様な深い森の歩き方や猛獣の対処方法について一家言ある様子だった。
「——っう訳よ」
「鼻先ねぇ、でもあいつ口から何か吐くぞ?」
「あれですよね! ボワーーってなる奴! 直前に音で分かりますよ!」
「えーと、タクさん?」
「お、ユリちゃん来たか」
暫く話し込んでいるとユリちゃんがログインして来たので、事の顛末を話して四人でパーティーを組む事になった。
◇
「らっ!」
「グルァ!?」
相対していた虎、その頭上からアランが飛び降りて来た。
体重を乗せた剣は胴体を深々と貫き、虎が暴れる前に剣を引き抜いて離脱する。
手際が良い。
「はっ!!」
「えぇぃ!!」
虎が他所を向く前に顔へ切り掛かり注意を引くと、即座に左右からユリちゃんとセナが虎の後ろ足を刺し貫いた。
機動力を奪った後は楽な物で、動けない虎を四方から滅多刺しにして倒した。
唯一の攻撃手段である風の砲撃は、俺が迅斬術の応用を取り込んだ最速の蹴り上げで顎をかちあげて対応する。
その時に多少隙が出来ても、他の三人が対処してくれる。
やっぱり一対一じゃ勝てねぇわ。
《レベルが上がりました》
「お、レベル上がった」
「おう、おめでとう」
「私も上がりました」
「おめでとうございます! 四人だと楽ですね!」
これで虎の襲撃は5回目だ。
レベルは二つ上がって10に。スキルポイントは34P。そろそろ新しいスキルを取得した方が良いだろうか?
虎のドロップ担当は俺だ。
ドロップは間違い無く幸運が関わっているだろうし、うさぎの足で運がプラスされている俺が解体するのは合理的だ。
虎のドロップ品は、風精石、毛皮、肉、骨、血、牙、爪、魔石。
四人で合計7体討伐し、毛皮は四枚、魔石は五つ、武器に使えそうな牙や爪は六つずつ手に入った。
一匹一匹が十分な大きさなので、毛皮一枚で一人分の防具を賄えるだろう。
勿論、虎を狩るのに無傷と言う訳には行かない。
少なくとも最初の一撃は誰かが受けなくてはならない。
来ると分かっているならともかく、奇襲では避けられないからだ。
唯一避けられたのはセナで、音がするので分かります! と両方の耳を引っ張って見せた。
いや、わからねぇよ。
そうやって狩りを続けながら進む事暫く。
追加でもう二体の虎を狩った所で、ようやく門に辿り着いた。
レベルは全員が10になり、ここで一度小休止を入れてからボスに挑む事に決まった。
小休止の間にスキルを取得しておこう。
新しく取得したスキルは、硬化、怪力、耐久走、疾駆、これで残りのポイントは4。
さて、ボス戦はどうなるかな?




