AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 十三
第三位階中位
「これで最後っと」
「ギッ!?」
最後のゴブリンメイジの頭をかち割った。
ユリちゃんは、残党がいないかの確認も兼ねて、弱点に槍を突き立てながら解体をして回っている。
HPバーを確認すると残り三割を切っていた。
敵の数が数だけに、一撃一撃は弱いものの被弾は避けられず、かなりのダメージを受けてしまった。
闘いの最中にレベルが一つ上がり、スキルポイントは32になった。ユリちゃんは二つ上がり、レベル六になったらしい。
全ての獲物を解体し、改めて扉の前に立つ。
大きさは俺の三倍程、かなり大きな門だ。
「では進みましょう」
「そうだな」
とは言え開け方が分からない。
とりあえず押してみるか。
そう思って門に手を掛けた瞬間、ゴゴゴッと重い音を立て、門は独りでに開いた。
「……自動ドアかよ」
「……自力で押し開ける必要が無くて良かったと思いましょう」
門の先は階段になっていた。
「行こう」
「はい」
正直に言ってこの先、ポーションも残り少ないが、何より二人だけで突破出来るとは思えない。
だけれども、撤退の二文字は無い。
暗く長い階段に足を踏み入れた。
◇
「また広間…………はぁ?」
「これはまた……驚きましたね」
階段を抜けた先、そこには森があった。
正確な範囲は分からないが、洞窟では無く森だ。
「はー、正にゲームって感じのステージだな」
「私はこう言うの好きですよ?」
まぁ確かに、地下に広がる森と言うのは空想的で幻想的だ。
一応女子のユリちゃんなら好きだろう。勿論俺も嫌いとは言って無い。
森の密度はそこそこに濃く、敵の奇襲が更に頻発する事は目に見えている。
油断無く武器を構え、ゆっくりと歩みを進めた。
真っ直ぐ進む事少々、一度も敵と遭遇する事なく直ぐに遠くに緑色の門が見えて来た。
拍子抜けしつつも其処へ向かう。
大方、激戦の後の安全地帯だったのだろう。
そう、気を緩めた瞬間だった。
「っ!? がっ!?」
「タクさん!?」
突然森の隙間を縫って飛来して来た何か、それを咄嗟に切り払うも、剣は文字通り空を切った。
飛んで来た物、それは——
「——ユリちゃんっ! 避けろっ!」
「え? きゃ!」
伏せて躱そうとしたユリちゃんの肩を見えない何かが掠めて行った。
「ゴホッ。クソがっ! 見えねぇぞ」
——風の砲弾だ。
直撃を受けた俺は弾き飛ばされ、木に衝突して止まった。
痛いと言うよりも気持ち悪い。体の中身が掻き回されたみたいだ。
HPバーは今の一撃だけで三割削れている。
状態異常は無い。セルフで気持ち悪い訳だ。
ユリちゃんは伏せようとした瞬間にやられた為、木偶人形の様に宙でぐるぐると回転し、最終的に仰向けになって倒れた。
幸いな事にユリちゃんは肩当てをしていたので肩の骨が折れると言った被害は無い様だが、酷く振り回されて目を回している。
それでも槍を手放していないのだから大した物だ。
茂みを切り裂いてユリちゃんにトドメを刺そうと近付いて来たそれへ、ナイフを投げつけて牽制した。
投げたナイフはそれの鋭い爪に迎撃され、ユリちゃんの頰を掠めて地面に刺さる。
未だ視界がぐるぐると回っているが、勝つ為には行くしか無い。
「レッサーウィンドタイガーね……いきなり強くなり過ぎだろうがよ」
悪態をつき暗い緑の虎へと切り掛かる。
ユリちゃん、マジで早く起きてくれ。
◇
ユリちゃんが転がっている側で戦うと余波で死にかねないので、注意を引いた後は直ぐに戦場を変えた。
場所は門の前。
少しだけ他より森が拓かれているそこで無いと、森を上手く使ってくる虎には勝てない。
「グルォッ!!」
「っ! ぶねぇっ!」
風の砲弾は口から吐き出されるらしく、顔に注意していれば対処出来る。
ただし発動後の速度がかなり早いので回避するには発動を予測するしか無い。
風の砲弾は僅かに溜めが必要で連射出来ない様だ。
爪の一撃はたやすく木を薙ぎ倒し、そのパワーが相手ではとてもじゃないが剣で受け止める事は出来ない。
虎の大きさは概ね頭から尾先まで、少なくとも三メートルはある。
体高は腰の高さ。
このくらいの大物だと体重は200キロを超える。300はあるんじゃ無いか?
その体重を利用した体当たりまでしてくるんだから始末に負えない。
どうすれば勝てる?
「えぇい、クソッ」
——弱点とか考えてる場合じゃねぇ! 適応しろ!
ユキなら目玉に指を突き込んで脳味噌をかき回すぐらいの事はしそうだが、俺はユキ程処理能力がある訳じゃねぇ。
自分の事は分かってる、相手の事を観察して先を読むんだ。
虎の予備動作を見抜き、飛び掛かってくるのに合わせてすれ違い様に斬り付ける。
「ぐっ!」
爪は確実に避けた、しかし肩口を切り裂かれた。
良く見ると、攻撃の瞬間に鋭い爪へ被せる様に緑色をした風の爪が現れていた。
流石にウサギの毛皮で防げる様な攻撃では無い。
「っ!?」
痛みに構わず振り向くと、目前に礫が迫って来ていた。
それを慌てて迎撃した次の瞬間——
「グルァ!!」
「ゴフッ!?」
——下から掬い上げるかの様な一撃に吹き飛ばされた。
そのまま空へと投げ出される。
視界の端に映るHPバーは残り二割強。
下に見えるのは、此方へ大きく顎門を開く風の虎。
——やられた、避けられない。
虎の口内が淡く発光し、そして——




