AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 十二
第三位階中位
「コケッコッ!」
「うわ!?」
ニワトリは物凄い勢いで接近すると、またもや唐突に消滅した。
足元を良く見ると魔法陣の様な物があり、これが出入り口なのだろう。
「わっ……洞窟、ですか……?」
「あぁ、ユリちゃん」
魔法陣が一瞬光ると背後にユリちゃんが現れた。やはり出入り口だったか。
ユリちゃんの話を聞くと、突然俺が消えた後に風の迷宮のメッセージが流れ、何処からともなくニワトリが現れたのだとか。
何かある事は間違いないと地面を良く見ると、草の陰に隠れて小さな石版があったらしい。
それには風の様な印象を受ける絵が描かれていて、触ってみたら此処に飛ばされたらしい。
「……進みますか?」
「そうだなぁ……ユリちゃんの時間次第かな」
何かと男性を立てる位置取りをするユリちゃん。
小柳家は最近までかなり時間や規律に厳しかったので、あまり遅くなると怒られるんじゃなかろうか?
俺の言葉に、ユリちゃんは虚空を見る様な奇妙な仕草をした後、返答した。
「後3時間くらいは大丈夫です」
「そうか……何見てるんだ?」
「時計スキルでメニューに追加された時計です」
「へぇ、便利だな」
俺も取得しよう。
今のスキルポイントは39P、時計スキルは5Pだったので直ぐに取得した。
スキルの欄を見ていると新たに地図と言うスキルが追加されていたのでそれも取得。
出てきた理由は迷宮に入ったからだろうか?
残りスキルポイントは29P。
「よし、行こうか」
「後ろは任せてください」
……ほんと、身内の女子はみんな頼もしいよな。
◇
風の迷宮内部は緑色の壁で所々に球体状の光源が埋め込まれている。
その為、視界は良好で暗がりの心配が無い。
幾らかの曲がり角や十字路があるが、地図スキルのおかげで迷う事は無さそうだ。
「よっと」
「一層はあまり強く無いみたいですね」
「そうだなぁ……」
全部一撃で仕留められる様なのばっかりだからな。
一層で出てくるモンスターは、メッセージにあったモンスターの内三体。
レッサーウィンドエレメント、レッサーグリーンスライム、レッサーグリーンゴブリン。
レッサーウィンドエレメントは風の塊の様なモンスターで、緑色の風が渦巻いていて輪郭と言う物が無い。
中心部に小指の爪程の大きさの本体があり、それを切るなり突くなりすれば倒せるが、動きが素早く風の勢いが少々早いので、それらも計算に入れて打ち込まないと避けられてしまう。
主な攻撃手段は風の刃を飛ばしてくる魔法で、威力は程々。部位にもよるだろうが、腕で受けたらHPバーが2〜3%くらい削られる。
一度に五匹くらい出てきて風の刃を連射してくるので相応にダメージも受けるし、ダンジョンアタックではかなり厄介な相手だ。
ドロップ品は、風石、レッサーウィンドエレメントの魔石。
レッサーグリーンスライムはスライムの色違いだ。
中心部には緑っぽい色の核があり、スライムよりも僅かに粘度が高い様だ。
核の移動スピードも早く、初撃を避けられたのは少し驚いた。
攻撃方法は極稀に風の魔法を使ってくる他、飛び付きのスピードが苗木のモンスターにやや劣る程度には早い。
だがまぁ、核を晒しているので、死体の液体がドバッと掛かる程度の話で、気持ち悪いだけだ。
ドロップ品は、風石、レッサーグリーンスライムの液体、レッサーグリーンスライムの核。
レッサーグリーンゴブリンは、皮膚が緑色をした子供くらいの大きさの人型モンスター。
武器に木の棍棒を持ち腰蓑をつけたエイリアンの様な見た目の怪物で、概ね三匹くらいで出てくる。
地味に連携してくるのだが、対人戦闘となると返ってやり易い。
このゴブリン達の振るう棍棒は仄かに風を纏っているらしく、見た目より僅かにリーチが長く、武器で打ち合わせると表面で少し滑る。
技術は無いがパワーはあるらしく鍔迫り合いになるとかなり疲れるので、回避に重点を置き隙をついて急所、首を切りとばした。
ドロップ品は、風石、微風の棍、レッサーグリーンゴブリンの肉、レッサーグリーンゴブリンの骨、レッサーグリーンゴブリンの血、レッサーグリーンゴブリンの表皮、レッサーグリーンゴブリンの頭蓋骨、レッサーグリーンゴブリンの魔石。
「この風石ってのは何なんだろうな」
全ての敵から偶にドロップする緑色の小さな石。それを摘みながら、特に答えを求めるでも無く呟く。
「わからないなら気にしても仕方ない……ユキさんならそう言うでしょうね」
「……それもそうだな」
まぁユキの場合は、知らないなら知れないのだと確信しての物言いだが。
「タクさん、あれ、次の層への階段ではありませんか?」
「ん? おお、そうだな」
見えてきたのは先の見えない階段。
その前にいた四匹のゴブリンと一匹のゴブリンメイジをサクッと倒し、次の階層へと進んだ。
◇
長い階段を降りた先の二層は、所々に草が生えており壁には大小様々な穴が開いている風の吹く階層だった。
通路は結構な広さで、光源は天井に開いた穴や壁の穴から刺す日光の様な暖かい光、吹く風も仄かに暖かい。
出現するモンスターは先の三体に加えて、レッサーグリーンゴブリンメイジ、レッサーグリーンキャットが追加された。
厄介なのは壁に開いた穴で、常に怪物の呻き声みたいな音が出ているから戦闘に集中出来ない。
時折その穴の中からレッサーウィンドエレメントが風の刃を飛ばして来たり、何の脈絡も無く突風が吹いて来たりする。
そんな中で行われる戦闘は、主に敵の奇襲から始まる。
ゴブリンメイジは5匹のゴブリンを盾に大きな風の刃を放ってくる。
レッサーグリーンキャットは緑色の猫で、天井の大穴や足元の穴からヒット&アウェイを繰り返して来てイライラとさせられたが、しばらくやられていると慣れた。
そんなこんなで二層を進んでいると、ちょっとした大広間が見えて来た。
「モンスターハウスって奴か」
「あまり強そうには見えませんが……」
大広間には沢山のモンスターがいて、その先に大きな鉄の扉がある。
広間にいるのは大量のゴブリン、スライム、ウィンドエレメント。
「足を止めずに切り進めば勝てるな」
「では左右から行きますか?」
「そうしよう」
そうと決まれば突っ込むのみ。
残り少ない下級ポーションで体力を回復し、何方が何方へ行くかを決めた。
「それじゃあ……死ぬなよ?」
「ふふ、タクさんこそ。御武運を」
一応、敵の数から考えてもこれが今まで一番の激戦になるだろう。
だと言うのに猛々しく笑って見せるユリちゃん。
その気持ちは分からないでも無いが……花の乙女がする顔では無いぞ。
無意味に肩を竦めて見せてから剣を抜き、広間の中へと駆け込んだ。




