AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 九
第三位階中位
取り敢えず、足が回復したので蟹を解体して立ち去ろう。
——砂浜は危険だ。
ナイフを差し込む場所には少々悩んだが、口の中にサクッと差し込み解体した。
入手したアイテムは三つ。
レッサービックシザーの甲殻、レッサービックシザーの脚、レッサービックシザーの魔石。
今の時点では価値も使い道も分からないが、あの鋏が出なかったのは残念でならない。
「さて……退散するかね」
流石に連戦は無理だ。
◇
遺跡に着く頃には、既に夕方になっていた。
空を見上げればオレンジ色の夕焼けが広がり、遥か遠くからは深い青色をした夜が迫りつつある。
浜から帰る道すがら——
——ニワトリに会った。
視線が交錯し、次の瞬間にはコケーッと一声鳴いて走り去っていった。
そのスピードは凄まじく、とても追い付ける物では無い。
やっぱりただのニワトリでは無かった訳だ。
それ以外には特に目立った事は無く、出てくるウサギやスライムを狩ったり下級ポーションの材料になるらしい大きな葉の薬草を摘んだりと割と平和だった。
クエスト報告は夕飯の後にしよう。
メニューを出し、クローズゲートを選択した。
◇
リアルに戻り、ユキが作った夕飯を食べる。
今夜は何故かステーキだった。
付け合わせは人参に馬鈴薯、莢隠元。
スープはミネストローネ。平皿に盛られた米は艶々に光っている。
「……これはまた豪勢だな、何かあったのか?」
対面に座るユキに問いかける。
ユキはそもそも、夜にこう言った肉は殆ど食べない。
「うん、タクと僕の分だからあんまり多くは要らないって言ったら凄く安くしてくれて……折角だから良い物を貰って来たんだよ」
「あぁ……そうか……」
ここいら周辺の住民達はみんなして鈴守家に甘い。
ユキがお腹を鳴らしながら商店街を歩いたら、その日の内に大量の食材が鈴守家に届く程だ。
実際にその様な事件があった訳では無いが、そうなるだろうと思わせる程にはユキへの愛と信仰の様な感情を感じる。
そして、鈴守家は相当に愛されている。
今回の事も何時も通り、ただの悪ふざけだ。
大方、エプロンをつけたユキが俺とユキの分の食材を買いに来たって事で結婚を連想したんだろう。
…………そう理由をつける事でユキに捧げ物をしていると考えるのは穿ち過ぎだろうか?
ただまぁ、どのみち言いたい事は——
——寝言は寝て言え。
これに尽きる。
夕飯を終えると、ユキは家事をやり始めた。
俺はさっさと自分の事だけ済ませると、ゲームに戻る。
◇
ログインして真っ先に向かったのは薬屋。
下級薬草と噴水から汲んで来た水、ウサギの魔石を納品すると、下級ポーションが出来た。
物は試しと下級薬草とスライム液、ウサギの魔石を納品すると、同じく下級ポーションが出来た。
それぞれ、
下級ポーション
備考:下級のポーション。体力《小》回復。
下級ポーション
備考:下級のポーション。体力《中》回復。
となり、スライムの体液を使用した方が効果が高い事が分かった。
続いて、防具屋に行ってクエストを受けた。
蟹の甲殻と魔石を納品すると幾つかの選択肢が現れた。選べるのは、腕鎧、脚鎧、靴、頭鎧。
腕を選択すると出来たのが『蟹甲鎧・腕』。
……直ぐに出来るんだな。
レッサーアースワームの柔皮とウサギの魔石を納品し、出て来た複数の選択肢の中から靴を選択。
『劣蚯蚓鎧・靴』を入手。
ウサギの毛皮とウサギの魔石を納品すると出て来た選択肢は、腕、脚、靴、帽子。
ふと思い至って納品をキャンセルし、あるだけの毛皮と複数の魔石を納品すると、選択肢の中に新たに胴鎧と鎧が追加された。鎧を選択し出来たのが『兎の毛皮鎧』。
靴から帽子まで、フル兎の兎鎧であった。
更にもう一品。
ある程度確信を持って、一つしかドロップしなかったウサギの足と魔石を納品すると、選択肢はアクセサリー『幸運の兎足』。
それぞれの装備をストレージで確認する。
蟹甲鎧・腕
備考:レッサービックシザーの甲殻で作られた鎧の籠手。適正魔力で強化されている。
付与効果
《酸耐性》
《水耐性》
《斬耐性》
劣蚯蚓鎧・靴
備考:レッサーアースワームの柔皮で作られた鎧の靴。
付与効果
《毒耐性》
《酸耐性》
《打耐性》
《治癒力向上》
兎の毛皮鎧
備考:レッサーラビットの毛皮で作られた鎧。適正魔力で強化されている。
付与効果
《疾駆》
《危機察知》
《気配察知》
幸運の兎足
備考:レッサーラビットの足で作られた幸運のお守り。適正魔力で強化されている。
付与効果
《幸運》
早速換装で装備を切り替えた。
ごちゃごちゃしていて見た目はあまり良く無いが、防御力を考えると初期装備よりはずっと良いだろう。
ついでに、狼牙剣の情報を見忘れていたからそっちも確認した。
狼牙剣
備考:鋼鉄で作られた片刃剣。背にウルフの牙で精製された棘がつけられている。
付与効果
《思考明瞭》
《自動修復》
《硬化》
《清浄化》
自動修復と清浄化。
木剣が折れた事からも分かるが、やはり武器や防具なんかには耐久力があるのだろう。
となると、使う度に整備した方が良さそうだ。
「……さて、狩りに行くかね」
目的地は西の森。
今夜中には森を抜けた先に行きたいところだ。




