AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 七
第三位階中位
この街はあまり広くない。
薬屋には直ぐに辿り着いた。
店内はたくさんの植物が育てられており、奥のカウンターには店員らしき石像がいた。
商品棚に並ぶ薬は各種類中級までで、薬以外にも毒薬、薬草、毒草が陳列されていた。
値札を見ると、初級ポーションが50、下級ポーションが250、中級ポーションが1000となっており、今の手持ちは60と少々。
初級ポーション一つしか買えねぇよ……。
マナポーションも確認すると、初級が200、下級が800中級が3000だった。
魔法スキル持ちは大変そうだな。
他のもざっと見ておこう。
初級塗布剤が100、下級塗布剤が400、中級塗布剤が1200。
どうやら中級塗布剤は中級ポーションよりも回復量が少ないらしいが、なくなるまで繰り返し使えるので少し高い値段となっている様だ。
初級解毒ポーションが30、下級解毒ポーションが200、初級解麻痺ポーションが30、下級解麻痺ポーションが200。
麻痺にはならなかったから分からんが、解毒ポーションは北の草原を抜ける為に必要だろう。
活性丸とやらが1500、怪力丸が2000、硬変丸が2000。
活性丸はリジェネ、怪力と硬変は制限時間付きの能力強化薬らしい、怪力丸は使えそうだな。
他は、下級薬草、中級薬草、下級毒草、中級毒草と言った生成前の素材に、陶器の小瓶、硝子の小瓶、硝子の薬瓶などの薬を入れる器が売っている。
兎にも角にも金が無い、クエストの方を確認しよう。
「……これか? ……これだ」
小さな依頼板とやらを探すと、見つかったのは妙に未来チックなホログラムの依頼板。
薬草を採取してくるクエストや、動物の内臓や虫を集めるクエストが並んでいるが、今の目的はそれでは無い。
「あぁ、このクエスト……だな」
見付けたクエストがこれ。
【クエスト】
『素材収集:薬』
参加条件
・クエストを受注する
達成条件
・指定の素材を納品する
失敗条件
・クエストを破棄する
・備考
指定の素材を集める。
液体、薬草類、魔力含有物、他。
クエストと言うか、そのまんま注文だな。
これをクリアすると『採取』と言うスキルが取得可能になるらしい。
採取スキルがあれば、森の中にある素材が見分けやすくなるんだとか。
ポーションを大量生成する為には薬草を集める必要があるから取得しておきたい所だ。
武器屋の方も同じで、『採掘』スキルが取得出来る様になる。
両方とも取得しておきたい。
薬屋で依頼を受けた後、少し歩いて武器屋に入った。
事前情報の通り幾つかの木製武器があり、更にその上に青銅製の武器が、更に上には鉄製の武器が並んでいた。
値段は、木製武器が2,000前後、青銅製が10,000以上、鉄製は一番安い物で100,000を超えてくる。
こっちで受けられるクエストは鉱石が必要らしいのだが、周辺一帯でそれっぽい物は見当たらない。
一応石でもクエストクリアは出来るそうだが、渡される武器は石の剣や石の槍とか言う重くて使えない代物らしい。
鉱石の情報は今の所寄せられていないが素材収集の依頼がある以上何処かにあるんだろうな。
クエストを受け、早速街の外に向かった。
今日行く所は南にあると言う浜辺、目的は其処に出る蟹の甲殻だ。
武器や防具に使えそうだしな。
◇
豊かな森、暖かな木漏れ日の中を進んでいると、プレイヤーが戦っている所に出くわした。
プレイヤーは男、完全に初級装備だ。
対するモンスター側は、通常よりもほんの僅かに大きなウサギが二匹。
男は剣を持つのは初めてなのか、まるで鍬で耕すかの様に剣を振り下ろしている。
時折横や斜めにも振るわれるが、無駄に力んでいるせいで体がぐわんぐわん揺れている。
ウサギの方は、その攻撃をひょこひょこ避けてや反撃の体当たりをかましている。
標的が小さいのもあるが簡単に避けられる様な攻撃なのも間違い無い、何より男が二匹を同時に倒そうとしているのが原因だろう。
二兎を追う者何とやら。
男は当たらない事に苛立ったらしく癇癪を起こした様に剣を振り回し始め、遂には光の粒子になって消滅した。死に戻りだ。
他のプレイヤーが死ぬ所は初めて見たが、モンスターが解体された時と同じ様に消えるんだな。
二匹の兎は男を屠ると、俺に気付いていたらしく二匹共走り寄って来た。仕方がないから新しい武器、狼牙剣とナイフで頭を貫き仕留め、そのまま解体した。
狼牙剣、初めて使ったが中々使える。
形状は両刃の直剣。片方は鋼鉄らしき刃、もう片方はヤスリの様な見た目をしており、よく見るとそれは大量の狼の牙だった。
実際には本物の牙では無いかもしれないが、狼牙剣だから牙で良いだろう。
ドロップした素材は、レッサーワイルドラビットの魔石、レッサーワイルドラビットの肉、レッサーワイルドラビットの毛皮、の三つ。
それぞれの売価は、魔石が90、肉が50、毛皮が30。
急所を狙えば直ぐに倒せる、それでこの稼ぎならまぁ良い方なんだろう。
◇
森の中を進んで行くと、何度かウサギの襲撃を受けた。
掲示板の情報によると、南にウサギ、東にスライム、西に歩く植物、そして北に大きなミミズが出るらしい。
勿論それ以外の生物もいるが、エンカウント率は低めで全体的に強敵、今のレベルで狩るのは実質不可能と考えられている。
各森は難易度に差がある様で、一番簡単なのがウサギ、次点でスライム、続いて歩く植物、最後がミミズらしい。
ミミズと植物は特に強いらしく、専らの攻略先は南か東の様だ。
そんな訳で、南の森を進んでいるとウサギだけでなくプレイヤーの姿もちらほらと見掛ける事となる。
その戦いを見ていれば、今のプレイヤー達のレベルも良く分かる。
ある男プレイヤー達は、パーティーの上限、6人で組み、一匹のウサギを囲んで狩りをしていた。
側から見れば酷い物だ。
一撃目、二撃目と避けられ、股下を潜られたり足を蹴られたりしながら走り回るウサギを追い回し、終いにゃフレンドリーファイアを起こしてポーションを無駄に使っている。
まぁ、仲の良いメンバーの様で、怒鳴り散らしたり罵り合ったりなんて事は無い様だが……人数があるなら足の速いウサギより足の遅いスライムを狙った方が良いだろうな。
プレイヤー達が全員下手と言う訳では無い。
とあるプレイヤー集団は、大剣を背負う男に率いられ10人の二パーティーで狩りをしていた。
大剣を背負った男は中々に武器の扱いが上手く、仲間にも戦い方を教えている。
上手いこと効率良く狩りを進めている様だ。
その大剣使いに声を掛けられ、『パーティーに入らないか? あんたみたいに強そうな奴がいると心強いんだが』と誘われた。
断ったが大剣使いはさして気を悪くした様子は見せず、フレンド登録だけしておいた。
名前はコウキ、覚えておこう。
そんなこんながあって、森を抜けた。
一度も女性プレイヤーに合わなかったのは、多分ウサギが主な敵だからなんだろうな。




