AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 五
第三位階中位
「らっ!! くそっ!」
正面から襲い掛かって来た狼を、木剣を叩きつけて撃ち落とした。
だが、敵は複数。
とてもじゃないが得物一本では迎撃が間に合わない。
左右から襲い掛かって来た二匹、咄嗟にナイフを抜き一方へ突き立てる。
「ギャンッ」
「ぜぇぇっ!」
もう一方が腕に噛みつき鋭い痛みが走るなか、噛み付いた狼をそのままに次の二匹を迎撃する。
振り下ろした木剣は鈍器としてダメージは与えられるものの、決定打にはならない。
対するナイフは、相変わらず異様な切れ味だが長さが足りない。
襲いくる狼達、二本の武器で必死に迎撃するも腕や足を噛み付かれ、引き倒そうとしてくるせいで狙いが定まらない。
そうこうしている内にHPはどんどん削られて行き、ポーションを取り出す暇は無い。
血が抜けているせいか元々真っ暗な視界が更に暗くなり、動きが悪くなって行くのが分かった。
被弾回数が増えていき、そして遂に——
「せっ! っ!?」
「ギャンッ」
——音を立てて木剣がへし折れた。
ミミズ戦の時に酸液を被ったのが行けなかったのか、ここに来て限界を迎えたらしい。
武器がナイフだけになった後は最早それまで、抵抗虚しく地面に引き倒され、首に噛み付かれた。
「ぐっ!! うおぉぉぉおおっ!!」
せめて一太刀加えてやるっ!
そんな意思と共に、腕に噛み付く狼をそのままに引きずって、喉元に食らいつく狼の額にナイフを突き立てた。
次の瞬間——
《レベルが上がりました》
——視界がブラックアウトした。
◇
《【鍛錬クエスト】『初敗北』をクリアしました》
【鍛錬クエスト】
『初敗北』
参加条件
・死亡する
達成条件
・死亡する
失敗条件
・無し
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント3P
・道具『初級ポーション』×5
・道具『下級ポーション』×3
・道具『初級塗布剤』×3
・道具『下級塗布剤』
エクストラ評価報酬
圧倒強敵
孤軍奮闘
窮鼠活劇
道連れの一太刀
・スキルポイント12P
・武器『狼牙剣』
《死亡しました》
《貨幣:魔力53Pのドロップは初回により免除されました》
《素材:『レッサーアースワームの柔皮』のドロップは初回により免除されました》
《道具:『下級マナポーション』のドロップは初回により免除されました》
《武器:『折れた木剣』のドロップは初回により免除されました》
《防具:『革の服・上』のドロップは初回により免除されました》
《復活の代償:〔01:18:39〕の身体能力低下は初回により免除されました》
真っ暗な視界、体の感覚が無い中そんなメッセージが流れた。
お金を失うのは勿論の事、手に入れた素材、道具、剰え装備している武器や防具までドロップしてその上戦闘力の低下まである。
まぁ全て失うよりはマシだろうが……お金と時間をかけた装備がドロップしたら号泣物だな。
《肉体の再構成が完了、送信します》
そんなメッセージと共に体の感覚が戻り、視界が回復した。
目に映ったのは石造りの建物とロボットの様な動く石像。
所々に街灯の様な物があり、夜の遺跡を照らしている。
その様は幻想的で……ワクワクしてくる物だった。
そんな遺跡の中にはちらほら人が歩いていて、その服装は俺と同じ。βテスター達だ。
それ以外に人がいない事から、この街は石像だけが暮らしているんだろう。
背後から聞こえる水音に振り返って見ると、其処には殊更幻想的にライトアップされた噴水があった。
此処が復活地点か。
周囲は手入れされた木々や花壇があり、所々にベンチと屋台らしき物がある。
今回は初回という事で免除されたが、デスペナの身体能力低下中は此処でのんびり出来る様になっているのだろう。
……眠くなるまでの間はこの街を調べるとするか。
そう決めると、夜の街へ歩みを進めた。
何か面白い物が見つかると良いんだが。期待は大きい。
◇
「……ふぁ」
初めての殺し合いで脳を酷使したからか、眠気は案外直ぐにやって来た。
今の所分かった事は、街の中にはいくつかの大きな建物と小さな商店があり、用途不明の建物も多いという事。
また、この遺跡で最も大きな建物は神殿の様な作りの建造物で、その目の前には巨大な兵器らしきものがある。使用法は不明。
掲示板には既にいくつものスレが立てられ、街の中の情報も、信憑性はともかく多く寄せられていた。
いくつかクエストの様な物も見つかっているらしい。
また、大きな建物の一つに図書館があったが、本は読めないらしくただの環境オブジェクトなのだとか。
ざっと見て回ったり調べたりして概ねの情報はゲットした、此処までで良いだろう。
メニューを開きクローズゲートを選択。ログアウト後は直ぐに寝た。




