AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い 四
第三位階中位
《レベルが上がりました》
「はぁ、はぁ……強かった……はぁ……」
どう言う感覚機能を持って此方を認識しているのか知らないが、とにかく此方へ向かってくるミミズ。
それへ投石を繰り返していると、途中から毒液を噴出しなくなった。
其処から木剣を持って近接攻撃を始めたのだが、毒のせいか体が思う様に動かない。
その上、ミミズは最初に思った通り弾力がある。鈍器でしか無い木剣では相性が悪い。
それだけでなく、一度地面を這って進むミミズの節に木剣を突き立てたのだが、幾らか体液が溢れて来たものの直ぐにその傷口が塞がってしまった。
ミミズの攻撃手段は、体をしならせて体当たりしてくる基本攻撃。
吸盤みたいな小さな口からスライムのそれよりも強い酸液を吐き出す攻撃。
後は、例の毒霧を噴出する攻撃だ。
世界最大のミミズと同じ長さ7メートル近い体を鞭の様にしならせる攻撃は、予備動作も分かりやすいので攻撃範囲から離脱するのは難しくない。
もしぶつかったら割と痛そうだ、顔にぶつかったら目も当てられ無い。毒霧を抜き切っていない場合は直撃した瞬間に毒霧がでるんだろう。
酸液の方は頻度こそ少ないものの威力は高い、直撃はしなかったが木剣に液体が掛かって白い煙を上げていたのは衝撃的だった。
そんなこんなでひたすらに木剣を叩きつけ続けていたら、暫く後、特殊な攻撃はしなくなり、ようやく倒れて動かなくなった。
レベルが上がった旨のメッセージが来たから、倒せはしたのだろう。
ピクリとも動かない死体は外面に傷が見当たらず、死んでいるとは思えない。
「っと、回復回復」
ステータスを確認すると状態異常の毒が無くなっていて、緑のバーが半分を割っていた。
くらった攻撃は最初の毒霧だけ、それでこのダメージ量だ、毒はやばい。
初級ポーションを取り出し、目の前に現れた小瓶をキャッチする。
「うわっ……これは……」
小瓶の中には緑色のドロっとした液体が入っていた。
恐る恐る蓋を開けると、青臭い匂いが漂って来る。
……これ……飲んだらダメージ受けたりしないだろうな……?
少し戸惑ったが、腹を括ってポーションを一気飲みした。
「……っ!? ゲッホ、ゴホッ……まっず!?」
苦い、その上後を引く。とても飲めない、と言う訳でも無いが進んで飲みたくは無い。
ステータスを確認するとHPが完全回復していた。
割合回復なのか固定値回復なのかは分からない、調べた方が良いだろう。
レベルの方は3に上がっていた。
今のスキルポイントは12P、取得するスキルは後々考えて行こう。
「にがっ……さて、お待ちかねの解体ってな」
アイテム欄から解体を選択し、ナイフを突き立てた。
「おっ?」
ナイフは思っていたより簡単にミミズに突き刺さり、ミミズは光の粒子になって消えて行く。
……ナイフで戦えば良かったのか。
ストレージに追加されたアイテムは、レッサーアースワームの柔皮、レッサーアースワームの肉、レッサーアースワームの毒液袋。
三つ入手出来たのは運が良い方なのか?
ともあれ、そろそろ時間がやばい。ログアウトしなければ。
「クローズゲートっと」
意識がブツリと途切れた。
瞼を開くと、アナザーの世界同様、夕暮れ時だった。時刻は、ギリギリ間に合っている。
「急ぐか」
ヘッドギアを外してベットに置き、急ぎ足でリビングに向かった。
怒ると怖いからな。
◇
「さて、と、やる事はもう無いよな。始めるか」
いつも通り、親父とお袋と俺で夕飯を囲って、いつも通りの巫山戯た冗談を一蹴する。
親父とお袋は兼ねてからの予定通り、明日の朝早くから8日間もの長期で温泉巡りに行く。
日頃の疲れもあるだろうし、ゆっくりと休暇を楽しんで来て欲しい。
俺はその間レトルト食品を食いながらゲームを堪能するから。
しっかりと徹夜出来る様に準備を済ませ、ゲームを起動する。
気が付くと、真っ暗な草原に立っていた。
さて、夜はどんな敵が出るやら。
取り敢えず草原はまずいので、森の中を進む。しばらく歩き続けると暗闇の中から何かが飛んで来た。
咄嗟にそれを回避しつつ斬り付ける。
「キィ!」
「なんだ?」
まだ生きている様だが、襲い掛かって来たからには敵だろう。
剣を振り下ろし、トドメを刺す。
「ギッ」
真っ暗なせいで何が何やら分からないが、取り敢えず死んだか。
メニューを開き解体を選択してナイフを突き立てる。
手に入れたアイテムはレッサーワイルドバットの皮膜。
襲い掛かって来たのは蝙蝠だったらしい。
夜になると出てくるのか。
更に森の中を進むと、度々蝙蝠やスライム、そして蛇に襲われた。
蝙蝠やスライムは殆どが単独で然程の脅威では無いが、蝙蝠は群れると超音波の様な攻撃をしてくる様だ。
はなから見えてない視界がぐらついた時は驚いたが、蝙蝠が敵にダメージを与える手段は近接攻撃しか無い様で態々近付いてきてくれたから処理出来た。
厄介なのは蛇で、真っ暗なのも相まって上から降って来た蛇に気付かず首に巻き付かれてしまった。
どうやら毒を持っている蛇らしく腕に噛み付かれて毒状態になったが、何とか締め付けから脱出して反撃した。
ナイフで胴体を叩っ斬り、頭を真っ二つに割いてようやく倒せた。
ステータスを確認すると、状態は毒《小》、HPも見る見るうちに減少し死ぬかと思ったが、クソまずい下級ポーションを飲むと毒が《微》に変わり如何にか生き延びた。
そこから更に数時間進んで行くと、唐突に見えない壁に衝突した。
「何だこれ……」
反対から見たらパントマイムに見えるだろうか?
壁に両手を付けて押したり殴ったりして見たが、特に反応は無い。
要するにフィールド限界、またはフラグが足りないのだろう。
「無駄足か?」
いや、それがあると分かっただけでも十分な戦果だ。
「はぁ、引き返すか……あ?」
遺跡の方へ向かおうとしたところで、見えない壁の反対側にある草むらがガサリと音を立てた。
その音は暗い森の中で何度も鳴り響き、見えない壁の先に現れたのは……。
「……狼かよ…………」
敵としては中々定番と言えるかね。
その狼達はグルルと威嚇の声をあげ、見えない壁を隔てて俺を取り囲む様に並び始める。
壁があるのにご苦労な事で。そう思いつつ、背を向けて歩き始めた。
狼達の遠吠えが響き渡り、草を踏む音が聞こえた。
チラリと視線を向けると
此方へ走り出した狼達は壁にぶち当た——
「んなっ!?」
——る事なく、壁をすり抜けて来た。
通れんのかよっ!?
慌てて木剣を抜き放ち、一匹目を迎撃する。




