AS 双剣使いタクの闘い 【Episode.1】 β島の闘い
※しばらくの間、ASをお楽しみください。
第三位階中位
「……つまり、この宝石みたいなのをここに挿入して被る……のか……?」
特に映像を投影する様な部品は付いていない、どう言う原理だよ、これ。
そんな疑問を抱きつつ、目の前に置かれたヘッドギアを突いた。
まぁ、分からない事を気にしても仕方ない、取り敢えずやってみよう。
◇
「ふむふむ……アナザーワールドオンライン、ね。ゲームの宣伝かな? ……それにしては……」
ユキが動画に隠された暗号を解いた日、直ぐに検索して見つけたそれは、ただ動画が貼ってあるだけのサイトだった。
同い年くらいの女子がいろんな猛獣や異形の怪物と戦い強くなって行く物語。
その動画は、動画投稿サイトなら何処にでもあり、多くの人が何度も見る程には人気の映像だ。
幾つかの動画の合間に奇妙な模様が貼られているのが気になったが、一番下までスクロールした所で、それを見付けた。
「お?」
『・βテストをプレイする』
幾つかの模様が集まり、所謂魔法陣の様になっている物の中心部にあったそれをクリックする。
一番最初に、『決して口外してはならない、口外したのが分かった場合発売中止もあり得ます。』と言う謎の注意書きが出て、次に出て来たのは幾つかの写真だった。
遺跡の様な場所、に大量の石像が写っている写真。
広大な農場と長閑な牧場、に幾つかの石像が写っている写真。
巨大な神殿の様な建物、とその前にある巨大な金属製と思われる像が写っている写真。
はたまた、豊かな森、青空が綺麗な海岸、何処までも続く様な草原と、その先にある大きな山。
そして、所々に写る武器を持った石像と異形。
明らかに縮尺のおかしいミミズがいたり、額から角が生えた兎がいたり、所謂スライムと言うモンスターがいたり。
良く作り込まれている、このCGを作った奴は天才かもしれない。
βテストとはつまり、このゲームをプレイ出来ると言う事に他ならない。
やらない理由はなかった。
何でも、専用のハードを送ると言う事で住所や名前なんかの個人情報を入力する欄が出て来た。
面倒事はゴメンなので色々と適当に書き、住所は預かりサービスを利用した。
それから数日後。
届いた段ボール箱を受け取り、自室で開いてみたら、出て来たのは青いヘッドギアと透明な宝石の様な物だった。
画像が無く、てっきりポータブル式のゲーム機が届くのかと思って、色は青を指定したのだが……驚いた。
何かの間違いかとも思ったが、ヘッドギアが入っていた箱には『Another World Online』の文字があり、間違いでは無い事を証明している。
どうやら……無線か何かでゲームをプレイ出来るらしい。流行りのVRゴーグルの類似品かとも思ったが……特に映像を投影するディスプレイがある訳では無い。
取り敢えずやって見るのが良いだろう。
βテスト開始は丁度GWと重なる、そしてうちの学校は今年のGW、9日休みの大型連休になっている。
休み明けは直ぐテストだが……ゲームに集中出来ると言う事だ。
◇
ゲーム開始時刻の12時まであと少し。
ユキでは無いが屈伸運動をしながら、忘れている事が無いか考える。
昼飯も食ったしテスト対策の纏めも終わった、頼まれてた水やりもやったし……やる事は全部やったから連続で6時間以上は出来るな。
さて、そろそろ始めるとするか。
時刻が12時になる数秒前なのを確認し、ヘッドギアを装着、広いベッドへ横になる。
えーと……何だっけ? 確か……。
「……そうだ、オープンゲート」
そう口にした瞬間、意識がブツリと途切れた。
◇
気が付くと、何も無い真っ白な世界に浮いていた。
何処を見ても白。
体を見下ろそうにも体がない。
白い空間が狭いのか広いのかも分からない。
途端に不安が込み上げて来た。
自分が失われてしまったかの様な不安が——
《調節が完了しました、これよりキャラクターエディットに移ります》
拭えない漠然とした不安に襲われていると、唐突に真っ白な空間の中で無機質な音声が響き、目の前にメッセージが現れた。
疑問が浮かぶ前に、突然目の前に俺の体らしき物が現れる。
細部まで細かく精巧に作られているそれ、顔を見るに、おそらく自分で間違い無いだろう。
一体どうすればこんな事が出来ると言うのか……まぁ、考えた所で意味は無いのだろう。
全身見ると。青っぽいトランクスを履いていてしっかりと鍛えられている体が良く見える。
こう言う形で見ると鏡を見るのとはまた違って新鮮だ。
《変更する項目を選択してください》
その音声が聞こえると同時に、ホログラムの様な物が現れた。
どうやら、色々と変更出来るらしい。
身長や体格、髪型や髪色、目の色、その他細かい所を少し弄れるらしい。
まぁ、変える理由も無いのでそのままで良いだろう。
《スキルポイントを50P配布、スキルを選択してください》
現れた大量の項目、山程あるスキルとやらの中で、何が良いのかは全く分からないので、取り敢えず目に付いた剣術と体術、治癒力向上、腕力上昇、防護上昇、敏捷上昇を取得した。
《初期アイテムを分配します》
スキルの取得をし終わると、一々素早いメッセージが流れアバターに初期装備らしき物が装着された。
全体的に茶色っぽいそれは、所謂革のなんたら〜みたいな感じで、正にゲームの始まり、または冒険の始まりみたいな装備だった。
背には木剣らしき物が括り付けられ、腰には小さなナイフが添えられている。
《初期設定を完了、送信します》
そんな声が聞こえたと思ったらゆっくりと視界が黒く染まっていき——
——ブツリと意識が途切れた。
※本編の進行速度(12日=160話分)から試算して、おおよそ30話かかる計算です。
短縮して半分くらいに縮められたら良いかと思いつつ、別の小説として書けば良かったかと憂いております。
しばらく、タクの綴る物語にお付き合いください。




