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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第六節 大海魔の攻略

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幕間 鈴守紗理奈の愛憎

第三位階下位

 



 可愛い、大好きな弟を抱き抱える。


 表情はあまり変わらないが、たまにニコリと笑うのがたまらなく可愛い。



「里奈、雪をお願いね」

「うん」



 お母さんとお父さんが仕事に行っている間、弟と一緒にいるのがお姉ちゃんの仕事。


 大事な……お姉ちゃんの仕事なのに……





「雪、里奈と綾をお願いね」

「それは愚問と言う物だよ、(さとり)こそ気を付けてね? 真凪夏(まなか)はなんだかんだ言って抜けてるから」

「ふふ、そうね……それじゃあ行ってくるわ」

「うん、行ってらっしゃい」



 暗い暗い、夜。

 物陰に隠れながらお母さんと雪の話しを盗み聞きした。


 いつからだろう、お願いされなくなったのは。


 大好きな弟、大好きな妹、二人を守るのはお姉ちゃんの仕事の筈なのに……



 ……お母さん……どうして? どうして私じゃいけないの?


 お姉ちゃんなのに……私がお姉ちゃんなのに……どうして……



 ドアの閉まる音が聞こえ、私は慌てて階段を登った。


 ふと、声が聞こえた様な気がしたけど、それがなんだったのかは分からない。





「掃除しようか」

「う、うん……」



 私が同じくらいの歳の時は、そんな事考えもしなかった。





「洗濯物たたもうか」

「うん……」



 同じくらいの歳の時、私はそんなに綺麗に出来なかった。





「夕食はオムライスにしよう」

「わーい! オッムラッイスー♪」

「……うん」

「危ないから綾はあっちね」



 同じくらいの時、私は包丁を持つことすら許されていなかった。





「お風呂入るよー」

「おにぇちゃんとおっ風呂ー♪」

「…………うん」



 子供だけで入っちゃ駄目って言われてた。





「歯磨きしたし、早く寝なよ?」

「……」

「うにゅ……ふぁ……おにぇちゃんも〜」

「……まぁ良いか」



 雪は夜、ぱそこん? をやってる、お母さん達に連絡を取ってるらしい。

 私は使い方も知らないのに……。





 如何してか分からない苛立ちに困惑し、口をついて変な事を言わない様に口数を減らす。

 そんな日々が続いていたある日の事。



「雪、起きて……」

「……ぅ……ぅん?」



 雪が珍しく寝坊した。

 朝食は私一人で作った。



「……綺麗じゃない」



 雪がたたんだ服が、何時もみたいに綺麗になっていなかった。

 それを綺麗にたたみ直した。



「……ちょっと汚れてる」



 雪が掃除した場所が、何時も通りと違って隅々まで綺麗になっていなかった。

 綺麗に掃除し直す。



「雪、駄目駄目」



 何故かわからないけど、雪の失敗を直す度に苛立ちが薄くなり、心が満たされていく気がした。





 それはきっと、優越感の様な物だったのだと思う。


 失敗を指摘した気になって、自分の方が優れている。と、そう思っていたのだろう。



 だからこそ、そんな醜い心であったからこそ、本当に大切な物が見えていなかったんだ。



 雪が苦しんでいる事……気付けなかったんだ……





「ユキ、今日駄目駄目。私が夕食作る。雪は布団敷いて来て」

「あぁ、うん、ごめんね……行ってくるよ……」

「……おにぇちゃん……?」



 二人を二階の寝室に行かせてから、夕食を作る。

 久し振りに一人で作るので多少時間は掛かったけど、上手く出来た。



「……美味しい」



 ……カレーライス、簡単で美味しい。



 料理が出来たのに、雪達はまだ戻って来ない。



「……遅い……やっぱり駄目駄目」



 仕方がないので、二人を呼びに行く。





 階段を登った。

 寝室は二階の一番奥の部屋、扉が開きっぱなしになっていて、其処から光が漏れている。


 そして……綾の泣く声が聞こえた。



「ひぐっ……おにぇちゃん……ぐすっ……死んじゃやだよぉ……」



 その声を聞いた瞬間、部屋に駆け込んだ。


 其処で見た光景は、あまりに衝撃的で……



「ぇ……え……え……ど、どう……」



 雪が倒れていた。


 呼吸は荒く、顔色は真っ青。

 その側には綾がいて、雪にしがみ付いて泣いている。


 雪が倒れるなんて初めての事で、何をすれば良いのかわからなくて、兎に角布団を敷いて雪を寝かせる事しか出来なかった。



「おにぇちゃん……ぐすっ……おにぇちゃん……」



 綾はずっと雪に縋り付いて泣いている。


 私は何をすれば良いのかわからなくて、目を離して良いのかもわからなくて、綾が泣き疲れて眠るまでずっと見ている事しか出来なかった。


 時折雪が魘される様に何かを言っている。

 何が欲しいのか、何をすれば良いのか、言ってくれる事を期待して声を聞くも、聞き取れたのは自分達の苗字だけ。



 雪はどんどん顔色が悪くなって行って、少しずつ呼吸が浅くなって行く。



「…………はぁ……………………はぁ……」

「……ぅ……おぇ、げほっげほっ」



 このまま雪が死んでしまうのかと思うと、何もしない自分に、何も出来ない自分に、猛烈な嫌悪感を感じ、吐き気が込み上げ嗚咽を零す。


 大好きな雪が苦しんでいる事にも気付かず、気付いた後も何も出来ずに見ているだけ。

 これの何処がお姉ちゃんだと言うのか。


 雪が苦しみながらやってくれた事を出来ていないと嘲って、剰え、自分の方が優れていると優越感に浸る。


 お母さんに雪と綾の事を頼まれないのも当然だ、こんな最低な奴に頼める訳が無い。



 気付いた時には、泣きながら雪を抱き締めて謝り続けていた。



「………ごめっん、なさい……ひぐっ……ごめっなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」



 駄目駄目な姉でごめんなさい。



 貴方を妬む姉でごめんなさい。



 貴方を守れない姉でごめんなさい。





「ごめ……っ!」



 どのくらいの時間謝っていたのか、唐突に、頭を優しく撫でられた。


 顔を上げると其処には……真っ青な顔で、ニコリと微笑む雪がいた。



「ゆ……き……?」



 雪はそっと私の事を抱き締めて、額にキスをした。



「……里奈は、良い子……里奈は賢い子……」

「ゆ……」



 それは、お母さんが良くやってくれた事。

 私達をこうやって……あやしてくれた。



「……だから、落ち着いて……大丈夫……里奈は……出来る……子……」



 ふっと雪が寄りかかって来て、小さく寝息を立て始めた。

 そっと布団に寝かし付ける。


 顔色は心なしか少し良くなって来ているような気がした。



「……氷、タオル、スポーツドリンク、薬は……リビングの戸棚の中」



 焦って絡まり真っ白になっていた思考は、いつの間にかスッキリと冴え渡り、前に綾が風邪を引いた時の事を思い出していた。


 雪の手伝いをして、氷を用意したり汗を拭いたり……お粥も作った。


 後は……雪はやらなかったけど、拓君のお母さんに助けて貰うのも良いかもしれない。子供では気付けない事も大人なら分かる筈。


 今は時間が遅いから、明日の朝になったら直ぐに行こう。





 その後は、邪魔になる綾を別の布団に寝かせ、朝になるまでずっと雪を看病し続けた。


 朝になると、雪は顔色も良く、すっかり治っていた。



「里奈、ありがとう」



 そう言って雪はニコリと微笑んだ。


 その言葉が嬉しくて、悲しくて、大切で、涙がポロリと溢れ落ちた。


 すると、そんな私を見た雪は、私の手を引きその胸元に抱き寄せた。



「里奈は良い子」



 額にチュッとキスをされ、優しく抱き締められて……



「里奈、愛してるよ」

『里奈、愛してるわ』



 お母さん、雪、私も愛してる。






 ふと、雪の長い髪がさらりと流れるのが目に入った。


 その髪は反射のせいか一瞬だけ……銀色に輝いて見えた。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
― 新着の感想 ―
[良い点] 色々不思議だなぁ。
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