第17話 来たる海魔と戦力把握
第五位階下位
配下の内拠点に放流しなかった中の弱めの子達を北の森に放つ。
……今回の戦いでは役に立たなさそうなのが主な理由だ。
少しでも経験値を稼ぎ進化出来れば儲け物、切り札となれる実力があれば即参戦。と言う事も期待しているが……まぁ、上手くは行かないだろう。
今僕の手元にいるのは、
ムーンウルフのウルル。
各属性特化のうさーず。
アランに返して貰ったメタモルスライムのリッド。
チャームラビットこと、桃うさのメロット。
多数のギミックを搭載するマシンゴーレムのイェガ。
吸血鬼亜種のサンディア。
リトル結晶大王蟹な感じのクリカ。
魔法使いなケロちゃん、レイエル。
炎を吐く地獄の猟犬、ガルムのネロ。
純真銀製の巨像さん達。
銀色の竜、ドラミールことミルちゃん。
驚異のレベル200オーバー、白雪とその配下。
今回は使えないけど、経験値の為に出ているレミナ。
彼らの内、特に切り札と言えそうな力を持っているのは、ウルル、うさーず、リッド、レイエル、ネロ、白雪の六体。
ウルルは、特殊なスキルとして『月喰み』と言う力がある。
能力は、夜になると力が増し、月の満ち欠けが満月に近い程より強くなる。と言うスキルで、簡単に言うと月の光から力を得るスキルだ。
今は雲がほぼ完全に月明かりを遮断しているので、あまり役には立たないかもしれない。
うさーずは例によって人型化する能力。スキル『精霊化』。
シルエットに関して言えば僕そっくりだが、そもそも魔力というのは意思に大きな影響を受ける物。
うさーずは僕に成りたいか僕に近付きたいかのどちらかなのだろう。
リッドは単純に言って擬態能力だ、その汎用性は驚異に値する。
核無しに進化してからは分離しても長時間別々で自立行動が可能になったので、例えば巨大な大砲などに擬態し、敵の体内に撃ち込んだ所で擬態を解いて内部から侵食する。と言う方法もある。
レイエルは、種族としてはレイーニャと同系統の物で、ちゃんと魔法を教導すればレイーニャみたいに儀式魔法を行使出来る様になるのだ。
現時点では切り札とは言い切れないが、才能次第では教えれば今すぐに上位魔法を行使出来るかもしれない。
ネロは、スキル『黒炎』と言う物がある。
これは言わば消えない炎と言う奴で、炎に内包される魔力と周囲にある魔力を使って燃え続ける、魔法系のスキルだ。
ネロの意思で消火は可能だが、自在に操る事は出来ないらしい。
最後に白雪、あの冷凍光線はおそらく、氷結と言う概念を込めた氷属性特化の仙術の類だろう。仮に氷結属性魔力とでも呼ぼう。
僕もしっかりと氷と向き合えば出来るかもしれないが、精々氷結属性魔力を少し捻出出来る程度だろう。
悪魔を凍り付かせるにはかなり抵抗に遭い、相当な量の魔力を行使した物だが、氷結属性魔力なら抵抗の隙すら無いだろう。
白雪はチョロユキに見えてその実かなりヤバイ奴なのだ。
配下の戦力はこんな所、続いて外壁の防衛力の再確認だ。
先ず、備え付けの大型バリスタの数は200基、修復にかなりの廃材を消費してしまったが、十分な威力になると期待している。
続いて、王都中から東外壁まで運ばれて来た、索引式バリスタの数が150。
負との大戦時に多くの人員と共に兵器も失われてしまったらしく、用意された物は全体的に古い。威力は十分に出るだろうが、備え付けの物には劣るだろう。
勿論修復した。
次がカタパルト。
数は、方々から集められた物も込みで150程。
弾もとい石は、南の鉱山街から運ばれて来た物や、地下水路を作る際に出た石を利用した物があるらしい。
割れて使えない物は修復した。
後は魔法式の大砲だが、これは正確に言うと、魔法を発射するための兵器だ。
備え付けの物は、東西南北の長い防壁に各5台ずつ、索引式の物はたった2台で、多くは大戦で失われてしまい、今の技術では再現出来ない代物だと言う。
仕込まれている魔法は『爆裂弾』の拡張版、言うなれば『爆裂砲』かな?
着弾地点で爆発を起こす火属性の魔法だ。
これらの兵器に加え、弓矢、投石紐、魔法符がある。
兵糧については……王都は元々その心配が無い様に出来ていた様だ。
街の中に野菜を育てたり家畜を育てる場所があったのだが、現在は貴族の無駄に広い屋敷や庭の為に農場が潰されてしまっている。
今回に関して言えば兵糧に関しては特に心配はしていない。
どちらにせよ短期決戦、滅びるか滅ぼすかの二つに一つでしか無い。
最後にプレイヤーの確認。
現在東外壁にいるプレイヤーはおよそ三千、外壁は、それだけの人数が活動するのに十分な広さがあるので、特に戦闘における支障は無い。
攻撃手段はバリスタやカタパルト。
経験値の分配についてだが、三千人をレギオンに組み込もうとしたら、現時点の最大人数が僕を含めて2056体までである事が判明した。
よって、『整理』『分類』のスキルを使ったレギオンの多重編成で各プレイヤーに平等に経験値が行き渡る様にした。
勿論、配下のレギオンとは別にしてだ。
経験値の分配は戦闘貢献に関係している様なので、頑張った人には多く、頑張らなかった人には少なく、分配される。キリキリ働いて欲しい。
三千人の内訳は、概ね3分の1が生産職の非戦闘員だ。
タクメールによると、生産系のスキルは僅かに精密動作にプラス補正があるらしいので、各兵器を扱うに際して十分な実力を示してくれる事だろう。
半分程は魔法を使える様だ。
アナザーのプレイヤーは、募集開始の時刻が放課後に重なっていたのが理由か学生が多く、やはり魔法と言うのは気になるらしい。
プレイヤーの多くが魔法スキルを取得しているのだ。戦闘方法が近接戦士のプレイヤーでも魔法スキルを取得している者は多い。
今回はその魔法を活かして頑張って貰おう。
残りの純戦士プレイヤーは、大海魔の大きさを考慮すると白兵戦は不可能。兵器を運用して貰う。
……一応は浜に残ったプレイヤー達の内訳も把握しておこう。
人数は凡そ四千半ば。
多くが魔法も取得している魔法戦士で、特にこれ、と目立つプレイヤーはいない様だ。
殆どは攻略にそこまで熱を入れていない、イベント故にお祭り感覚で戦う様な物だが、彼等が海岸にいるのは偏に熱意あるプレイヤー集団が残っているからだろう。
大海魔、ギガント・スクィッドが何故に王都を目指して進んでいるのかは知らないが、海岸にいれば良くて圧死、最悪は溺死だ。
上陸の津波に呑まれれば今のプレイヤーのレベルではひとたまりもない。
大海魔の方に特別な意図が無い限り、海岸のプレイヤー達は一瞬で消滅するだろう。
特別な意図と言えば……例えば、大海魔の目的が自身の手でマレビトを倒す事でより強くなる為。だとしたら、海岸のプレイヤー達は数百人毎に丁寧に圧死させられる事だろう。
そもそも、海を主戦場とする大海魔がわざわざ地上に上がって王都を襲いにくるのだから、王都には大海魔にとって並々ならぬ何かがあると言う事に他ならない。
悪魔達は一体何を仕出かしたのやら……。
◇
バケツをひっくり返した様な猛烈な雨が降り頻る中、雲は厚く立ち込め、星々の光とその恩寵を遮っている。
幾度と無く降る雷は人々には決して手の届かぬ神鳴り、災厄へ対する根源的恐怖を呼び起こし、暗闇と相まって先の見えない不安を駆り立てている。
篝火や灯りの魔道具に照らされる兵士達の顔色は悪く、プレイヤー達でさえ半ばお祭り気分の浮かれが抜けている様に見える。
「あっ……」
それは誰の上げた声だったか……或いは、海岸にいるプレイヤー達の聞こえる筈の無い悲鳴を幻聴したのかもしれない。
「……まじかよ」
呆然とした様な声が、豪雨に塞がれる音の壁の中で、嫌に耳に残った。
——海が膨れ上がった。
波風の立つ広大な海が唐突に。
膨大な水の奔流は海岸を一息に攫い、起伏の激しい草原を超え、僕達の立つ外壁へとその飛沫をぶつけた。
その威容たるは外壁を超える程。
青白い巨躯をのそりと持ち上げ、ゆっくりと、此方へ向かってくる。
——海魔は現れり。
「さて——」
——始めようか




