第13話 パーティー 転
第五位階下位
大悪魔 LV148
「初めまして、国王陛下」
「陛下! お下がりください!!」
黒い服に黒いマント、シルクハットを被り笑う仮面を着けた道化師の様な悪魔は、手に持つステッキをくるりと回し優雅且つ大仰に一礼した。
悪魔の前に立ちはだかったのは、近衛騎士と思しき強そうな連中。しかし——
ゼクター・ノーマン LV42 状態:警戒
アルベルト・ダグザール LV37 状態:警戒
——最も強いのと二番目がこれではお話しにならない。
そもそも、元の種族からして格が違うのだ。
「邪魔ですよ」
「がっ!」
「な、ぐっ!?」
思った通りの結果だ。
悪魔は、立ちはだかった騎士達に一言呟くと、魔力そのものを放つ事で一瞬の内に薙ぎ払ってしまった。
この段になってようやく周りが状況に追い付いたらしく、貴族達からは絹を裂く様な悲鳴が。プレイヤー側からはイベントだー! という怒号が響き渡った。
しかし、それも一瞬の事であった。
「くふふ、素晴らしい……しかし、少々騒がしいですね」
悪魔はそう呟くと、強烈な威圧を放った。
これには、貴族達は勿論の事魂を保護されているプレイヤー達も押し黙り、辺りが静寂に包まれる。
取り敢えず、黒尽くめのマークを続ける様にタク達に指示を出し、死に掛けの騎士さん達に中級ポーションと覚えたての回復魔法を悪魔にバレない様、念動と念力を使ってこっそりと掛ける。
これで救助は完了。
次いで、ティアにも念話で声を掛ける。
『ティア、聞こえるかな?』
『うむ、聞こえるぞ! 如何すれば良い?』
如何やらティアも悪魔の威圧は問題無い様子。
塔の天辺で戦った悪魔騎士と今回の大悪魔は、能力で言ったら此方の方が上だろうが、地脈の力を吸った後の悪魔と大悪魔では地のスペックだけ見るなら前者の方が上だろう。
しかし、動きから分かるが戦闘技術では大悪魔の方が格上、おそらく魔法技能も上だろう。
つまり、パワータイプのティアには分が悪い。
悪魔 LV37 状態:潜伏
下級悪魔 LV28 状態:潜伏
幸いな事に、獲物はいる。
『僕があれをやるから、ティアはマレビトに紛れ込んだ悪魔をやってね』
『分かった……気を付けるんだぞ?』
一応、全員をフレンドチャットで繋いで、合図と同時に襲い掛かる手筈を整える。
『おにぇちゃん、全員、配置オッケーでーす!』
『こっちもだ。見るからに怪しいな、何で周りは気付かないんだか……ユキも気を付けろよ?』
『僕達も、何時でも行けるよ!』
『俺もだ、っと。奴さん、如何やら演説でもするつもりらしいな』
全員が黒尽くめの死角に着いたのを確認した。
タクの疑問は尤もだが、隠密や隠蔽、注意を逸らす様な魔法が使われているらしい。
僕が気付いたのはレベル差だとして、タク達が気付いたのは僕が指示をしたからだろう。
其処まで強力な魔法では無さそうだ。
ともあれ、件の大悪魔は、アランの言う通り、何やら演説をする様だ。
良く気配を探って見ると、王城を囲う様に結界が張られている。
誰一人逃がすつもりは無い。と、つまりはそう言う事だろう。
正に袋の鼠、飛んで火に入る夏の虫。
「ルベリオン王国貴族一同、並びに、異界より招かれし客人御一行の皆々様」
悪魔は大仰な動作で、神経を逆撫でする様な声音で、されど心を折る様な威圧を放ちながら一礼した。
「今宵、アルバ大陸で最も歴史深き国、ルベリオン王国は終焉の時を迎え、王都ルベリオンは地図上から永遠に消滅する事でしょう」
成る程、悪魔達の目的が分かった。
連中はプレイヤー達のホームエリアであるルベリオン王国を消す、つまり、死に戻り場所を占領して永遠にマレビトを狩る、無限キル状態にする事だろう。
マレビトを殺せばより早く強くなれる。
言うなれば『マレビト虐殺計画』と言った所か。
「この大陸に遍く全ての魂は偉大なる我らが王、ディアリード様に捧げられ、永劫の苦しみの果てに御方の血肉となる事でしょう!! あぁ……! 何と羨ましき事かっ!!」
陶酔し、興奮した様に狂気を振りまく大悪魔。
うむ、気持ち的には今朝のティアや、偶に出るアヤと似た様な思考なのだろう。
僕を食べたいと言う事は、つまり、僕を取り込みたい、或いは、僕に取り込まれたいと言う……少々特殊な性癖が——
『うへぇ、何あれ? 気持ち悪い事言ってるよぉ』
『むぅ、理解し難い感情だな。怖気が走る』
……同族嫌悪?
『野郎、良い感じにいかれてやがるなぁ。あぁ言うのは死んでも治んねぇよ』
『ユキ、気を付けろよ? 狂った輩は何してくるか分かったもんじゃ無いからな』
うん、知ってる。
ともあれ、そろそろ屠そうか。
「くふふ、……しかしその前に、我が王に捧げる供物として相応しいかどうかを見極めなければなりません。差し当たって……」
悪魔は半身で振り返り——メーアを見て嗤った。
笑う仮面を着けていながら尚、嗤ったと分かる悍ましい気配だ。
余程人を苦しめるのに慣れている様子。
「ひっ」
幼い姫、メーアは恐怖故か後退り、バランスを崩して尻餅を着いた。
その様を見て、悪魔は更に邪悪な笑みを深め……。
「あぁ! ーーーーー!! 貴方は心地よい悲鳴を奏でる事でしょう!」
うむ……悪魔は全部こんな感じなのだろうか?
一部声が良く聞き取れなかったのだが、もしかすると悪魔の言語だったりするのかな?
「っ! やめてく——っ!?」
怯えるメーアを庇おうと声を上げたイスタル陛下はしかし、その言葉を全て言い切る前に、悪魔の拘束魔法を掛けられ、動く事も声を出す事も封じられてしまった。
悪魔は更に何らかの魔法を行使して、魔力で出来た腕の様な物を現出させた。
爪は鋭く尖り、黒い剛毛に覆われている豪腕。悪魔の腕。
その腕は、五指を揃え貫手の構えだ。ただの人間程度なら簡単に貫ける事だろう。
悪魔はその魔手を振り上げ——
「い、嫌っ! 誰か……! 助——」
鋭い刃はメーアの胸元へ——
「さぁ! 素晴らしき悲鳴を——」
突き刺——




