第12話 パーティー 承
第五位階下位
マレビトの入場が始まった。
と、言っても、数が数なので、楽士隊が演奏を始めた以外に特に変化は無い。
プレイヤー達は、ぞろぞろと押し込まれる様に入場して来るのだが……全員が入場し切るのに一体どれ程の時間が掛かるのやら。
プレイヤー達を見回すと、全体的に装備の質が上がっているのが分かる。
アンデットとの戦いの時は、集まったプレイヤーの7割から8割くらいが初期装備であったが、今は殆どのプレイヤーが初期より上位の装備を着込んでいる。
蟹の甲殻を利用したと思われる青っぽい鎧や、犬の毛皮を利用したと思われる黒っぽい鎧、市販の金属鎧や革鎧等……言ってはなんだが全体的にゴミゴミしい。
上から下までで統一感が無いのがその理由である。
その中で、一際目立つのが鮮烈な青の全身鎧の男と、白の鱗鎧の男。タクとセイトである。
武器は全体的に同じ規格の物ばかりだが、やはり身内が目立っている。
身内以外に目立っているのは、
魔鋼製と思われる全身鎧を着込んで大剣を背負っている男。おそらく大剣士だろう。
初期装備で無手の生意気そうなちみっ子が拳姫だろうか、周囲が避けているらしく、ちみっ子なのに目立っている。
後は、弓を持っている緑っぽい色の軽装鎧が沈黙の………………リナ?
あの他者を寄せ付けないクールビューティー。間違いない、リナだ。
リナもアナザーをやってたのか。
そんな事を考えていると、リナと目があった。
表情が動かないので分かり辛いが、驚愕に瞼をピクッと動かしたリナは、如何してか非常に慌てているらしい。
取り敢えずウインクしておいた。
後でフレンド登録しよう。
さて、他は……む?
ふと、何か奇妙な気配を感じた気がして周囲の魔力を伺うも、人が多いせいか、もとい装備がバラついて属性魔力が乱れてる為良く分からない。
ただし、明らかにプレイヤーでは無い黒尽くめの者が何人か紛れ込んでいる様だ。
やはり、プレイヤーと現地人を見極める術は無いのだろう。
「ユキ、そろそろだぞ」
「む? 分かった」
色々と観察している間に、プレイヤーの入場が終わっていた様だ。
楽士隊の奏でる音楽が変わり、会場の最も高い場所に現れたのは、昼とは違って豪華な衣装に身を包んだ王様。
それに続いて現れたのが金髪にメガネのイケメン。それから、ティアよりも身長が低く豪華なドレスを着込んだ少女。
王子と姫だろう。
宰相と思わしき人物が前置きを述べてから、王様が語り始める。
どうやら、声を広域まで届かせる魔道具を使っているらしい。
「此度の戦、大義であった。その功へ報いるため、此処にささやかな宴の場を用意した、心行くまで楽しんで——」
それから、幾らかの話を終え、王子らしき人も軽く話をしてから、祝宴の始まりと相成った。
王族が挨拶をしている間、後ろにいた姫ちゃんは周囲をキョロキョロと見回して、ティアを見付けるとニンマリと笑い、それからは終始ニコニコとしていた。
「ほら、ユキ」
「ん? ありがとう」
ティアからアルルジュースの様な物を受け取りつつ、もしもの時の為に対処を講じておく。
「ところでティア、兄弟は何人いるの?」
「私を含めると6人だ」
ほう? 残りの3名は何処に行かれたのやら。
「姉が2人、兄が2人、妹が1人。一番上の姉は他国に嫁いで行って、もう1人の姉は近衛の騎士と駆け落ち。もう1人の兄は冒険者になると言って出て行った」
「ふむ、中々特殊な兄弟だね」
姉は駆け落ち、兄は冒険者へ、ティアは英雄願望、何ともユニークな連中だ。
ティアと軽く雑談し、タク達にメールで連絡をしつつ王へ挨拶をする貴族達の様子を見ていたら、姫ちゃんが此方へ向かって来ているのに気付いた。
挨拶を受けながらなので歩みは遅いが、確実に此方へ向かっている。
くきゅるるぅぅ〜〜。
「……」
「ユキ、食べ物なら沢山あるぞ?」
「うん……」
そう言えば、アナザーで朝食も昼食も食べていなかったね……。
もそもそと空腹度回復をしていると、姫ちゃんが近くまでやって来た。
豪華なドレスと言い、頭の上にちょんと乗ったティアラと言い、正にお姫様と言った風情である。
「ふぅ、やっと着いたわ。お姉さ……ま…………」
身長は僕らより少し低い。だがまぁ、ティアの件もあるので、見た目相応の年齢か如何かは分からない。
「あぁ、メレネーア、久しいな。……? メレネーア?」
どうやらメレネーアと言う名前らしい。うむ、メーアと呼ぼう。
そのメーアは、僕を見た瞬間に硬直し動かなくなった。
どうしたのやら、と思いながら首を傾げると、その動きがティアとシンクロした。
ティアも首を傾げた以上、メーアが動きが急に止まるという奇病である可能性が無くなった。
メーアは、そんな僕らを見るとビクッと肩を震わせ、頰を朱に染めて後退った。
「メレネーア、どうしたのだ?」
「にゃ、にゃんでもにゃいわ!」
にゃんでもにゃいのね。
メーアは、僕から視線を逸らし、ティアと話をし始めた。
視線を逸らした割にはチラチラと見てくるので、見兼ねたティアが僕を紹介する。
「彼は私のユ……スノーだ。仲良くしてくれよ?」
「そ、そう、スノーね……私はメレネーア・ルベリオン、よ、よろしく」
「ご紹介に預かりました、スノーと申します。宜しくお願いしますね、メーア様」
「め、めめめ、メーア!? そ、そそ、その……よ、よろしく」
ニコッと笑顔をブレンドするのも忘れない。
と言うか、スノーモードの時は何時もニコニコしているが。
メーアは、その呼び方に慌てていたが、不快では無い様だ。寧ろ嬉しそうなのでこのままで行こう。
その後、メーアと幾らか雑談したが、どうやらメーアは背伸びしたいお年頃の様子。
撫でようとすると嬉しそうにするが、撫でる前に手を掴まれてしまった。
更に暫く話を続けたが、メーアもまだやる事が途中らしく、名残惜しそうに去って行った。
その後は特に誰もやって来ないので、割と多くのプレイヤーからの視線を受けつつも、優雅にお食事をしながら周囲を警戒していると、ポツリと水滴が頰を叩いた。
雨か…………む?
料理が駄目になってしまうな。と思いながら、そっと視線を上へ向けると、遥か高い空から何か黒い影がゆっくりと降りてくるのが見えた。
その黒い影は、最も高い所。
即ち、王族の前へ優雅に舞い降り、ニヤリと嗤い——
「——さぁ、愉快な悲劇の幕開けとしましょう」
——その声は、如何してか良く響き渡った。




