第11話 パーティー 起
※初めてレビューを頂きました。
ありがとうございます。
活動報告の方で御礼と弁明の程を少々ほんのりと。
第五位階下位
ティアの準備は直ぐに終わった。
ティアのドレスは真っ黒で、ショートラインと言われる膝丈の物であった。
見た目と相まって子供っぽさを強調する様なドレスだが、黒色なので何処と無く大人っぽく、可愛らしさと美しさが上手く同居している。
素材が良いのでメイクはしていないが、首元にはティアの瞳の色と同じ色の宝石があしらわれたネックレスが光っている。
中々良い感じでは無いか。
「ティア、綺麗だよ」
「っ……うむ、ユキも……綺麗だ」
僕の方はと言うと、雪精姫の精霊装、青と白のドレスに、黒い宝石らしき物がついた支配指輪、緑の宝石らしき物がついた妖精のお守り。
スカートの中には血刃と氷雪の宝珠を浮かせ、裾と太腿の辺りには、これでもかと言うくらいにお手製ナイフを隠し持っている。
魔鋼のナイフ 品質A レア度4 耐久力C
備考:魔鋼で作られたナイフ。様々な魔法が施されている。
最大充填済みの魔石を仕込んであり、剣身は半ばまで魔法文字が描かれている。
魔法文字が描かれている部分の刃は潰されているが、先端は鋭く尖っており、専ら投擲して使う。
込められている魔法は、突き刺さったり強い衝撃を受けると発動し、最大充填済みの魔石の魔力を全て使って爆発するのである。
本来の用途は、獲物に突き刺して爆発させる事で鋭い先端部分が獲物の深い場所まで到達する。と言う物だが、爆発の威力だけでも十分なダメージになる筈だ。
鉄で作ると魔力の伝達スピードがやや遅く魔法の発動に少々ラグが出る他、高位の魔法や複数の魔法を行使しようとすると壊れてしまう。
ともあれ、これで非武装に見える武装の完成である。
「行こうか」
「うむ、エスコートしよう」
「…………ん?」
…………んん? 何か立場的に——
◇
会場となっている広場に着いた。
其処は見渡す程に広い空き地で、大量のテーブルが置いてあった。
机の上には様々な飲み物やケーキらしき物、カットされた果実、木製や陶器の食器が並べられている。
そろそろ開場とあってか、王城務めの侍従達が慌ただしく行き来しており、少しずつ暖かい料理が出始めている。
会場の貴族側は、既に数十名の貴族らしき豪華な服を着込んだ人達がおり、会場の準備をしている侍従達を物珍しそうに見ていた。
マレビト側の会場と貴族側の会場を見比べると、貴族側はマレビト側より一段高くなっており、椅子がある、テーブルも少し豪華、食器は全て銀で出来ている様で、並べられている料理も一段上。
貴族と同じ物が用意出来ないからの格差なのか、それとも……この国はマレビトを下に見ているのか。
どちらにせよ、物理的にマレビトより上に立つ事になる彼ら彼女らは無意識的に自分達がマレビトよりも上の存在だと認識する事だろう。
既に集まっている貴族達は、比較的若い者が多く、男女比は女性の方が多い。
幾らかいる男性は、ひょろっとしているもやしっ子か、それとは逆で酷く太っている者が多い。
おそらくだが、先の負との大戦で武官や家督を継げない男手が殺されてしまったのが理由ではなかろうか?
今いる男性は、文官や家督を継げる者、或いは、大陸の存亡を賭けた戦いに参加しなくても良い程の権力を持っている臆病者だろう。
さっと見回すと、概ね年齢毎、性別毎にいる場所が分かれている。
しかし、お嬢様方は幾つであっても変わらない様で、どのコミュニティもより豪華な装飾を身に付けている者を中心に、煽ててご機嫌取りをしている様だ。
まぁ、僕には関わりの無い世界……で、あって欲しいよね。
「ご機嫌麗しゅう、エスティアお姉様」
「久しいなエリーゼ」
ニマニマと、それはもう嬉しそうにやって来たのは金髪のお姉さん。
後ろに何人かのとりまきを引き連れている、コミュニティの長だ。
身長等からざっと計算すると年齢は15か16に思えるが、ティアをお姉様と呼ぶからには歳下だろう。
ニマニマと言ったが、別に悪い意味は含まれていない。凄く愛おしげにティアと……僕を見ている。
「エスティアお姉様。そちらの可愛らしいお方を私に紹介して頂けないかしら?」
「うむ、彼はユ……えーと、スノーだ」
「スノーちゃんですのね…………彼?」
「お初にお目に掛かります、スノーと申します、宜しくお願い致します」
大方王族への挨拶と言った程度の物なのだろう……と穿った見方も出来るが、どうもそう言う訳では無さそうだ。
貴族の中でも高位の身分と思われる連中は、チラリとティアを確認するも、特に興味は無さそうに見える……この子が話し掛けて来たのは、単純にティアの事が好きだからだろう。
やはり、ティアは何らかの理由で隔離、冷遇されていると考えて相違無さそうだ。
取り敢えずエリーゼには、にっこりと笑顔を向けて挨拶をしておく。
「これは御丁寧に、私、ルステリア公爵家が現当主、エリーゼ・ルステリアですわ。宜しくね、スノーちゃん」
現当主? …………先代が死んだのか。
ここらに集まっている若者達も、中には当主となっている人がいるのかもしれない。
その人達は若くして当主となりながらも、若さ相応に拙い知識で領地なんかを治めているのだろう。それ程迄に王国は疲弊しているのか。
エリーゼは、挨拶を終えるとそこそこに雑談し、名残惜しそうに去って行った。
ルステリア公爵家は当主がエリーゼになってからそう時間は経っていない筈。横の関係を広げるのに忙しいのだろう。
僕とも顔を繋いだ事になる訳だ。中々優秀な輩である。
次にやって来たのは金髪のイケメン。
ティアに挨拶をすると、ティアに許可を取ってから僕に向き直った。
「こんばんは、御嬢さん。僕はクリュス・シュタール、君がスノーさんだね? 話は妹から聞いているよ」
クリュス・シュタール。聞いたことのある名前だ。
……シュタールと言えば、アスィミさん。となると、クリュスさんはシュタール子爵家の現当主か。
「ええ、そうですよ、クリュス様」
「様なんて、止してくれ。君は心ならずだったとしても国の大恩人だ。改めてシュタール家当主、ティールの街を治める者として礼をさせて貰うよ。ありがとう、吸血鬼から民を救ってくれて」
随分と律儀な奴である。
まだ僕が爵位を持っている事は知られていない筈だが、平民にも頭を下げるとは……好青年と言えるか。
「その礼、謹んで御受け取り致します」
「ありがとう、スノーさん……何かお礼がしたいのだけど……」
「では、スラム街の奥にある孤児院の援助を厚くしてください」
「……それが貴女への礼になるなら、必ず取りはからいましょう」
うむ、実にラッキー。これでアルメリアさんの好感度が幾らか上がった事だろう。
……シュタール家への好感度が上がるかもしれないが、それはそれで問題無い。
国の危機へ手助けして貰える可能性が少しでも上がったならそれだけで十分だ。
その後も、若者を中心に挨拶は続き、中には前回のアンデットとの戦いを見ていた騎士の御息女や御子息に握手を求められる事もあり、概ね会場の六割程で挨拶ラッシュが終わった。
挨拶に来る者は大体が心からの笑顔を浮かべており、ティアの人徳が透けて見える様であった。
どうやら会場設営等、諸々の準備が終わったらしい。
そろそろパーティーが始まる。
相も変わらず空模様は暗い、何も起きないと良いんだけどね。




