第6話 等しく容赦無し
第五位階下位
「失礼します」
ノックをし、返事が来たのちに扉を開けた。
ティアは挨拶をして入ったが、僕はしていない。
と言うのも、中にいる先客に気付いていたからだ。
まぁ、適当で良いかなぁ。と。
「よぉ、ユキ、遅かったな」
「ニャんだ、ユキかニャ?」
最初に声を掛けてきたのはザイエ、次いでただの猫のふりをしていたレイーニャ。
爺様はパチリとウィンクだけして来た。
此処は執務室だろうか?
正面には書類や本が幾らか乗っている机があり、その前に向かい合う様にして長椅子があり、その間にある背の低いテーブルには湯気の立っていない紅茶が4つ置かれていた。
……レイーニャ、この部屋に人間は3人しか居ないんだよ?
長椅子には爺様が座り、その対面には、落ち着いた雰囲気なロマンスグレーのナイスミドルがいらっしゃる。
さっきの渋い声もこの人だろう。
その人は、ティアを見てニコリと笑うと、続いて僕を見た。
「君がユキ君だね? 話は聞いているよ」
「いえ、私はスノーと申します」
「ふむ……賢者殿」
「『世界は流るる川の如し、ありのままを受け止めよ』とは、我が師、グリエルの言葉です」
「大した事情がある訳では無いがね、ただそう言う物だと認識してくれれば良いよ」
「相分かった、その様にしましょうマレビト様」
中々に物分かりの良い人で良かった。本当にナイスミドルだね。
◇
王様に挨拶を済ませた。
ナイスミドルの名前は、イスタル・ルベリオン。
正真正銘ティアのお父さんである。
先の不死者の襲撃、昨日の負の化身の討滅、はたまた、地下水路での魔物の間引き等、その功績たるや目覚ましい物がある。
と、色々と持ち上げられ、いくつかの褒美を賜る事になった。
先ず爵位。
専属従士爵と言う何やら特別な爵位で、マレビト用に作られた特別な爵位とはまた違った物らしい。
マレビト用に作られた爵位は戦士爵と言う物で、基本的には何の権限も無く、命令を受ける必要も無い、と言う称号の様な物らしい。
言わば、強いマレビトとパイプを作る為のちょっとした優遇のある爵位、だ。
従士爵は、侍でも騎士でも無く、貴族に仕える平民出の従者に与えられる事がある爵位で、格としては騎士爵と同列、しかし、貴族の間では軽んじられる傾向にあるらしい。
若い騎士からは特に嫌われているとの事。
専属従士爵とは、高貴な人物に仕える従者の中でも特に特別な人物に与えられる爵位で、基本的にそれに命令出来るのはそれの主人のみ。
時と場合によっては、主人の命令を拒否して行動出来る。と言う変な爵位である。
そして、特に特別な人物とは、主人第一であり高い戦闘力を持ち、尚且つ周囲にも目を向けられる完璧超人。らしい。
『要するに、すげー有能で叛逆の心配が全く無い奴は何でもして良いから発展に寄与してくれ。って事だ』とはザイエの弁である。
正式な権利は、平常時は伯爵と同列、戦争や魔物襲撃等の緊急時、つまり時と場合。の時には、意見を述べる権利すら許されている。
纏めると、正式に高位の爵位を与える事が出来ない人物に与える従者の皮を被った化け物の為の爵位。だ。
それらの証明として、王族の賓客である事を意味する指輪を『みだりに使ってはならぬ』と言うお言葉と共に頂いた。
あって損の無い良いものを貰えたのである。ラッキーと思っておこう。
続いて領地。
と言うよりも、貴族街にある大きな館の権利を貰った。
幾代か前の王弟、形だけの爵位として公爵を与えられていた人物が使っていた館らしい。
その人物は何か大きな問題を起こして捕まったが証拠不十分として釈放、その後に行方をくらませたらしい。
その為、誰も住みたがらず半ば廃墟となっている上、近場に住んでいた貴族達も一人、また一人とその地区から離れて行ってしまったので、そこの辺りは人が住んでおらず、何かと治安に悪いらしい。
要するに厄介払いである。
お話ししておまけで周辺の土地と建物も貰っておいた。
取り壊して牧場や農場にしよう。
次に、王城の地下にある書庫に入る権利。
爺様が管理している図書房より小さいらしい。
最後に、宝物庫から魔法道具等のお宝を頂けるらしい。
幾らでも好きに選んで良いらしいので、好きにしてしまおう。
「ユキ怖いのニャ!」
「えっげつ無いなー」
「流石はユキ、やっぱり天才だなぁ」
「うむ! 父様には悪いが、ユキが嬉しそうで私も嬉しいぞ!」
「……は、はは……」
さて、今後の予定が出来た。王城の物色である。
「さぁ、ティア、行こうか……それでは陛下、また今夜、祝祭の会場にてお会いしましょう」
そう、形だけの声をかけ、華麗にカーテシーを決め、ティアの手を引いて立ち去った。
我が事ながら、随分と無礼な輩である。
◇
ティアの案内で宝物庫の前に着いた。
鍵が付いた大きな門の前にいた兵士に、王の証明印が着いた勅命書と指輪を見せると、直ぐに門を開いてくれた。
道中、宝物の目録を見て良さそうな物をピックアップしようとしたのだが……能力が正確に分かっていない物が多く、実際に確認してみないと分からない様であった。
宝物庫に入ると、あまり使われていないのか埃っぽくカビ臭い匂いが立ち込めていた。
悪臭耐性もあるので気にせず物色を始める。
◇
「——まぁ、こんなところかな」
取り敢えず、宝物庫の中から有用そうな物を頂いておいた。
王国の宝物庫と言うから希少な物が沢山あるのかと思ったが、ちょっとした魔法道具が沢山あるだけで、特に希少な物は少なかった。
中には封印された呪いの道具なんかもあったので、呪具は全て僕が回収し、密かに漏れて淀んでいた不浄は『聖なる光』でパーッと祓っておいた。
殆どの魔法道具は、今現在特に必要としている訳でも無いので、王様の面子も考えて、後々必要になったら貰う事にした。
これで、宝物庫の中は微妙な魔法道具が沢山あるだけになってしまったが……まぁ、大丈夫だろう。
見付けた希少な道具の一部がこれだ。
小精霊使いの書 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
悪魔封印の棺 品質C レア度5 耐久力D
備考:聖木で作られた小さな棺。悪魔を封印する為の調整がされている。強力な悪魔が封印されている。
悪魔封印の鎖 品質D レア度5 耐久力E
備考:聖属性金属で作られた鎖。悪魔を封印する為の調整がされている。強力な悪魔が封印されている。
悪魔の宝珠 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
邪気封印符 品質E レア度4 耐久力F
備考:聖域で浄められた符を用いて作られた封印符。悪魔を封印する為の調整がされている。封印が解けかかっている。
小精霊使いの書は小さな魔導書、魔典の様だ。
中に精霊が封印されているらしく、僕の持っている魔典の下位互換だ。
もう一つのアイテムは、白い小さな棺の四方にボロボロのお札が貼ってあり、その上から白いボロボロの鎖が何重にも巻かれていて、その両端を留める様に、真っ黒の宝珠が付いている。と言う、明らかに訳ありの代物であった。
何とも言えないやばそうなアイテムである。
インベントリに封印しておこう。
さて、宝物庫の方はこれで終わり。次は館を見に行こう。




